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3.逃亡の先で

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 轟音ごうおんが響く。


「…………?」

 いつになっても衝撃が来ない。

 疑問に思って恐る恐る目を開けると,ふわりと純白のローブが視界で揺れた。

「……勝手に行動するなと言ってるでしょう?」

 苛立ちと緊張と,優しさが混じった声が響く。

「……リリーナっ」

 リリーナが,杖を構えで防御魔法を展開していた。

 ベリーが見る限り,最上級の防御魔法にヒビが入っている。

 魔王の魔力攻撃を,リリーナは寸前で受け止めていた。


「戦っても負けます。だから逃げますよ!」

 リリーナはそう言って,ベリーを抱き上げる。

 防御魔法が破れる前に走り出し,瓦礫がれきの下に隠れた。


「…………あ……」

 瓦礫の下からそっと周囲を眺めて,ベリーは息を呑む。

 立派だった王宮は見るも無惨な瓦礫がれき変貌へんぼうし,明るく温かい活気溢れる城下町は魔物に踏み荒らされ焦土と化していた。

 激しく燃える炎と黒煙に紛れて,倒れた兵士達の山と,うごめく魔物の影が揺れる。

「……酷い」

 小さく呟かれた言葉に,リリーナは悔しそうに目を伏せた。

「……ごめんなさい。間に合わなかった」

「……リリーナは悪くないの。魔王が悪いの」

 空中に悠々と浮かぶ魔王を指さして,ベリーは小さく叫ぶ。

 リリーナは少しだけ微笑んで,「大きな声を出したら見つかるから」とたしなめた。



 夜がどれほど長かったのか,ベリーにはわからない。


 瓦礫がれきの隙間から差し込む朝の光がようやく二人を照らした時,グラッセリア()()()その土地は,信じられない程静かだった。

 魔王軍の咆哮ほうこうも,魔物の足音も,無慈悲な破壊音も消えていた。


 ベリーは朝日に照らされて顔を上げる。

 リリーナは慎重に瓦礫がれきの隙間から外を確認し,深く息を吐いた。


「……もう気配がない……魔王軍……撤退したようです」

 その声は安堵と疲労で震えていた。


 ゆっくりと瓦礫がれきを押しのけて這い出ると,朝日が明るく照らしていた。

 昨夜の惨劇さんげきが嘘でない事を,静寂の景色が証明している。


「……ひどい……」

 ベリーは蜂蜜はちみつ色の瞳に涙を溜めて呟いた。

 中庭には見知った兵士達の防具や,召使いの装飾が転がっている。

 王宮の残骸ざんがいは黒い焦げ跡を残して崩れかけていた。


 リリーナはその光景を見つめ,いつも穏やかな瞳を少しだけ曇らせて言った。

「……ベリー,魔王は貴女を見て何と言っていた?」


 その言葉に,ベリーは震えた。昨夜のあの視線が胸によみがえる。

 それは恐怖。

 あの魔王は,明確に自分を狙っていた。

 きっとまた狙いに来る。


 自分を守ってくれたリリーナを,このまま再び危険にさらしたくはない。


 ベリーは静かに決意する。

 好奇心旺盛で,血気盛んで恐れ知らずな王女は顔を上げた。


「……私,魔王を倒したい」


 その声はかすれていながら,力強かった。


 リリーナは驚き,そして優しく微笑む。

 ベリーの瞳に宿る光は,確かに見知った物だった。


「でも……わたし,戦うのは得意じゃないし……料理もできないから……」

 ベリーがそう小さく続ける。

 リリーナが首を傾げて見せると,ベリーは小さな声で続ける。

「……リリーナも一緒に来てほしい。私,安心できるから……」


 数秒の沈黙が流れる。

 リリーナは胸に手を当て,小さく笑って敬礼した。

「勿論お供します。ベリーが一人なんて,不安ですから!」


 風が朝の香りを運び,荒れ果てた焦土に一筋の光が差し込んだ。


最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:次々展開が進んでいきます。次はほのぼのストーリーになりそうな予感……(?)

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