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19.人と獣人と

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「……誰?」

 異様な雰囲気をまとう小柄な人物に,ベリーが首を傾げる。

 それが聞こえたのか,その人物は表情の全く変わらない顔を下げて軽く会釈えしゃくした。

「リオン。ここに住んでいる子供。貴女達は?」

 淡々とそう述べ,真っ直ぐにベリー達を見つめる。

 その瞳は何処までも純粋で,静かに凪いでいた。


「私ベリー! ベリー・グラッセ・ミエルベルだよ!」

「ベリー,覚えた」

「ゆめ・えすとるわーる! ゆっちゃんって呼んで!」

「ゆっちゃん? 可愛いね」

 二人が笑顔で名乗ると,リオンはこくこくと頷いて相槌あいづちを打つ。

 背丈はベリーとそう変わらないので,その仕草が合わさると同じくらいの年齢に見えた。

「……そっちの真面目そうな人はリリーナで,黒いゆっちゃんファンクラブ会員第一号がキャサリン!」

「ゆっちゃんファンクラブ……? ベリーも入ってるの?」

「もちろん! リオンさんも入る?」

「リオンで良いよ」

 リリーナが口を挟まなければツッコミ不在の状況が出来上がる。

 ベリーの天性の才か,リオンとは初対面でも気が合っているように見えた。

 その様子を呆然と見つめていたキャサリンは,ゆめの名を聞いてハッと我に返る。

「……あの子もしかして,ウェルフィマの軍勢倒しちゃった感じ?」

「……信じられませんが,あの鎌の使い方からして,相当な手練てだれでしょう」

 同じく固まっていたリリーナが放心状態でそう返すと,キャサリンは曖昧に頷いた。

「あのウェルフィマの部下って事は,相当に強いと思うんだけど……。まぁまれにそういう才能が凄まじい人っているからね」

 自分の魔法の才を例に上げ,そう結論づける。


「……そういえば,りおんは何してたの?」

 後ろ二人の会話が聞こえたのか,ゆめが可愛らしく首を傾げた。

 リオンは少し逡巡したあと,鎌を軽く回して担ぎ直す。

「ちょっと用事があって離れてる間に,ここに人が何人かきたの。生き残ってた人の話を聞く限り,セイレーストで一番強い人が今いないって知った途端,蛇になっておそってきたらしいね」

 何ということもないような声でそう述べ,徐ろに空を指差した。

「遠くからでも,蛇を燃やそうとしたこの国の人がつけた火が,沢山見えた。戻ってきたら,蛇に蹂躙じゅうりんされたあとだった」

 本の内容を読み上げるような坦々とした口調で,リオンは続ける。

「生き残った人達を助けようとしたけど,皆蛇に倒された。だから取り敢えず蛇を斬ることにしたの」

 その結果が,周囲に散らばっている大蛇達だった。

 ベリーは口をぽかんと開けたまま固まっている。

 少しの間を開けたあと,小さく呟くように問うた。

「……リオンは,悲しくないの?」

 その問いはリオンにとって予想外だったのか,瞳が軽く瞬かれる。

「悲しくはない,かな。家族も友達もいないし。大切なのは師匠と,師匠が愛するこの国だけ」

 そこで,リオンはふと言葉を切った。

「……師匠はここを離れる時,何に変えてもこの国を守ってほしいって言ってた。その約束を守れなかったことは,帰ってきた師匠に申し訳ないかな」

 初めて,その表情が悲しげなものに変わる。

 淡々とした口調の中に隠しきれない後悔を感じて,ベリー一行は複雑な表情になった。


「ところで,ベリー達は何をしに来たの?」

 重くなった雰囲気を払うように,リオンがポンと手を打ってそう口にする。

 不器用なリオンの気遣いに,ベリーは初対面でありながら少し嬉しくなり,小さく頷いて答えた。

「私達,さっきあの草原の方で蛇になったウェルフィマって女の人と戦ったの。で,その時ここを滅ぼしてきたって言ってたから,不安になっちゃって……」

「……ん? ちょっと待って」

 ベリーが丁寧に話すと,リオンが不意にさえぎる。

 疑問符を浮かべて口を閉じたベリーの前で,リオンは一瞬何かを考え込むように目を伏せた。

「……まさか,その人倒したの!?」

 落ち着いて淡々としていた雰囲気が一変し,焦土に響き渡るような声でリオンが驚愕きょうがくしたように叫ぶ。

「ん? そうだよ?」

 まぁ逃げられちゃったけど……と付け足しつつ,ベリーがきょとんとした表情で答えた。

 大きく目を見開いていたリオンが,小刻みに震えだす。


「……ど,どしたの?」

 ベリーが不安気な表情でそう問うと,リオンが顔を上げた。

 その瞳は,好奇と感嘆かんたんを宿して輝いている。

「……凄い! あの人,絶対勝てないと思ったのに! ベリーが倒したの!? 凄い!!」

 興奮したようにそう早口で述べ,ベリーの手を握って上下に振った。

 鎌を扱えるだけの腕力は伊達ではなく,ベリーは腕がもげそうな痛みを感じつつ苦笑する。

「……でも,私だけじゃなくって,皆がいてくれたから勝てたの。仲間が誰か一人でもいなかったら勝てなかった」

 ベリーがそう言うと,リリーナ達も小さく頷いた。


 それをみて,リオンは興奮気味な表情にわずかな困惑を浮かべる。

「仲間……師匠も,欲しいって言ってた」

 リオンの呟きを聞いたリリーナが,ふと思い出したように首を傾げた。

「そういえば,先程から気になっていたのですが……リオンさんの師匠とはどのような方なので?」

 そう尋ねると,リオンもそういえばと言うように口を開く。

「師匠はね,この国が一番好きで,この国で一番強いの。今は『主のところに帰る』って言ってここを離れてるんだけど。魔法みたいなよくわからない技を使ってて,この鎌をくれた」

 リオンは少し誇らしそうに表情をほころばせ,鎌を示した。

「……魔法じゃないの?」

 キャサリンが気になったところを述べると,リオンも曖昧に頷く。

「正直よくわからない。だって師匠,人間じゃないから」

「……え?」

 リリーナとキャサリンがピシッと固まった。

 一つの可能性に思い当たったからである。


「……もしやその方って……」

 壊れた人形のようないびつな動きで首を傾げ,リリーナが震える声で問うた。

 それに対し,リオンは勿論とばかりに頷く。


「この国が一番好きで,この国で一番強いなんて,多分世界的に有名だと思う。師匠は,この国の女神セイレーンだよ」



最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:アニメの王道をベリー達が突っ走ります。 

   注意:これはアニ裏ではありません。

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