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 悲鳴とも絶叫ともつかない声が響き渡り,大蛇の姿が薄れていく。

 三人の魔法は壁を当然のように蹴散けちらし,すさまじい衝撃波を残して消滅した。


「……やばくない?」

「同感すぎて何とも言えない……」

 ベリーがこぼした呟きを,キャサリンが拾う。

 リリーナに至っては声も出ないようで,表情が固まっていた。

「……色々と聞きたいことがあるんですが,まぁ良いです。後で」

 取り敢えずというようにそう告げて,リリーナは前方を見据える。

 大きくえぐれる__というよりは穿うがたれた地面からは煙が上がっており,まだ魔力の残滓ざんしが揺れていた。

「……此処ここまでして,まだ生きてることある?」

 上空から見ていたキャサリンが,呆れたようにそう言う。

 大きなクレーター状になった地面の中心部に,人影があった。

 ウェルフィマは生きてはいるものの,全身傷だらけで立ち上がることも出来ない。

 ただ意志の強い金の瞳だけが,四人を睨んでいた。

「……さない」

 荒い呼吸に混じって,呪詛じゅそのような声が響く。

「……許さない。貴女達,覚悟しなさいよ」

 空気が震え,その場にいる全員を圧するような言葉だった。

「……次会った時は,必ず仕留めて,あの子達の餌にしてやる……!」

 そう言い切った瞬間,ウェルフィマの姿が掻き消える。

 それと同時に分厚い雲が去り,昼前の爽やかな陽気が草原を包んだ。


「……勝った,のかな?」

「逃げたってことは,勝ったってことじゃない?」

 呆然と呟いたベリーに,キャサリンが答える。

 その返しに何度か瞬いてから,ベリーは満面の笑みを浮かべた。

「勝ったって! ゆっちゃん凄い! 四天王に勝ったよ!」

「やったぁ! ゆめ頑張った!」

 興奮したようにそう言い合って,二人は草原の上をくるくると回る。


 キャサリンはそれを拝みつつ,ふと思い出したようにリリーナを見た。

「……そういえば,あの人なんだけど」

 リリーナが首を傾げると,キャサリンはその場に座って続ける。

「……あの人多分,《大蛇国シュランゲルン》の獣人だと思う」

「《大蛇国シュランゲルン》……?」

 隣に座ったリリーナが問うと,人化を解いて膝の上に収まったゆめを撫でつつ,キャサリンは説明した。

「前にも話した,人間と敵対することを選んだ“蛇の子孫の獣人”の国。冷静に考えてみたら,蛇になれるんじゃなくて,人間になっていただけの獣人じゃないかと思って」

 キャサリンが確信を持ってそう言い切ると,リリーナは内容を咀嚼そしゃくするように何度か頷く。

「……確かに,それはありえますね。ただ,何故魔王軍についたんでしょうか?」

 リリーナが疑問を口にすると,キャサリンは眉をひそめた。

「そこはどうも合点がいかなくて。大蛇国シュランゲルンはかつて,領土を魔王軍に奪われて戦争を仕掛けたこともあったはず。勿論もちろん惨敗ざんぱいしたから,恨んでるくらいだと思うんだけど」

 おぼろげな知識なので断定はできない と続け,キャサリンは軽く溜息をつく。

「……取り敢えず今は,勝てたことに安堵あんどしましょうか」

「あ,お祝いのお菓子作る!?」

「ベリーのお菓子は爆発するから駄目」

 ぱっと顔を輝かせて立ち上がったベリーを制すると,ゆめが何度も頷いた。

「……とはいえ,少し休憩入れましょうか。流石に魔力も体力も使いすぎたので」

 仕方なさそうにリリーナがそう笑って,ティーセットを取り出す。

 キャサリンも賛同して,ゆめの為に持ってきていたお菓子を並べた。


「……さて,行きますか」

 日光が穏やかになって来た頃,ようやく休憩を終えた一行が立ち上がる。

 ゆめは人化や補助魔法で魔力を多く消費して疲れたのか,キャサリンの腕の中で眠たそうにしていた。

「……あ,そういえば忘れてたんだけど。ウェルフィマが最初に『あの人間の国を滅ぼしてきた』って言ってたじゃない?」

 不意に思い出したように,キャサリンがリリーナに問う。

「……確かに言っていましたね。見に行ってみますか」

「うん。滅ぼしたって言っても,生存者はいるかもしれないし」

 そんな会話で,この先にある人間の国に向かうことになった。

「……この先にあるのは……青の都セイレーストですね」

 地図を広げたリリーナが視線を巡らせ,そう結論を出す。

 首を傾げるベリーに苦笑しつつ,リリーナは記憶を探った。

「セイレーストは湖に囲まれた,青を象徴するような国です。何処どこにでも水が流れていますし,瓦葺かわらぶきの家の屋根はほとんどが青いんですよ。あとオーロラや雪といった,少し変わった自然現象が見られます」

「……雪?」

 ベリーは頷きながら聞いていたが,ふと耳慣れない単語を聞いて疑問をこぼす。

「……え? グラッセリアは雪が降らないの?」

「降らないんですよね。私も実物を見たことはないですが,空から降ってくる,白くて小さい冷たいものです」

 リリーナの簡潔な説明に,ベリーは少し考え込んだあと,期待に目を輝かせた。


「……あ,何か落ちてる」

 セイレーストに向かって歩き始めた一行は,ベリーの声で足を止める。

 穿うがたれた地面とのさかいで,棒状の何かが光った。

「……あの人の笛だね」

 繊細せんさいな模様が入った縦笛を拾い上げ,ベリーは何度か瞬く。

「……どうする?」

「……うーん,持ってようかな。綺麗だし……また会ったら返してあげないと!」

 ベリーは少し逡巡しゅんじゅんしたあと,小さく笑って笛をしまった。


最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:気付いたらウェルフィマがちゃんと悪役っぽくなっていました。

   いや,本作における悪役陣営なんですが。

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