14.魔法戦
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数秒経って,光が収まった。
目を瞑っていたベリーとゆめは,防御魔法の外を見て驚愕する。
地面が抉り取られて失くなっていた。
少しして,ベリーはそこに立っていた筈の人影が見えなくなっていると気付く。
魔法が使われる前と変わらず,キャサリンは上空に浮いており,リリーナはベリー達を背に杖を構えていた。
だが,ウェルフィマがいた所が綺麗に消失している。
「……何事?」
唖然と呟いたベリーに,リリーナが振り返って微笑んだ。
「私があの魔法を目眩ましとして使用している間に,キャサリンさんが雷魔法を連投しました。相手に傷があるかはわかりませんが,地面は耐えられなかったみたいですね」
良い笑顔でそう言い切ったリリーナに,ゆめとベリーは若干涙目になって何度も頷く。
「……りりーな,怖い」
「キャサリンも怖いよ」
容赦の無さに引いている二人の会話が聞こえない位置に戻ったリリーナは,再び杖を構え直してキャサリンと視線を合わせた。
少しの間があってから,抉り取られていた地面の周囲が隆起する。
うねる大蛇のように変形していく地面が,やがて魔力に耐えられず破砕した。
「……やるじゃない。どういう魔力量をしているわけ?」
呆れたような笑みを浮かべて,ウェルフィマは崩れた地面の上に降り立つ。
「……え? 今どこから出てきた?」
「見えなかった……」
ベリー達には,ウェルフィマが突然現れたようにしか見えない。
それは実際に戦闘している二人も同じなようで,僅かに困惑を浮かべていた。
その様子に気を良くしたのか,ウェルフィマは得意気な笑みを浮かべて魔力を掌に集中させる。
リリーナが警戒するように防御魔法を張った。
「【恵みの雨】」
ウェルフィマが厳かに告げると,魔力が空に打ち出され,雨__というよりは霙のように降り注ぐ。
「痛っ!? 何これ,純粋に痛い!」
上からの攻撃を想定していなかったことと,上空に浮かんでいたことが災いして,頭に直撃したキャサリンが呻いた。
「……物理ですかね」
「一応物理ではないはずよ」
リリーナに答えるウェルフィマも若干声に呆れが混じっている。
円蓋型の防御魔法に当たると光の粉になる魔力を物珍しそうに見つめていたベリーは,ふと視線をゆめに向けた。
「……これ,なんか粉砂糖みたいじゃない?」
首を傾げるゆめに,ベリーは腰につけている袋から取り出した粉砂糖の瓶を見せる。
「お砂糖の仲間で,お菓子を綺麗に飾り付けする時に使うの」
「キラキラしてる! 可愛い!」
黒橡の瞳を輝かせて,ゆめは何度も頷いた。
「……それで,私思ったの」
粉砂糖をしまってから,ベリーは思わせ振りな態度でそう告げる。
可愛らしく首を傾けるゆめに,ベリーはまるで本を読み上げるかのような態度で続けた。
「魔力っていうのはね,魔力で制御するものなの。つまり,魔力の石は魔力で動かせるし,魔力の水を動かせるのも魔力なんだって」
リリーナにかつて教わった内容を暗唱すると,ゆめがよくわかっていないという目で続きを待つ。
「つまり,こう考えたの。あの……うぇるふぃま? って人が,いっぱい魔力を使ってるでしょ? それで今,魔力がいっぱい粉砂糖みたいに落ちてる。……これ,落ちてるものだから勝手に使っても怒られないよね」
内容を咀嚼するように何度か瞬いていたゆめが,数秒経ってぱっと顔を輝かせた。
「確かに! べりー天才!?」
ふふん,と得意気に胸を張るベリーに拍手を送っていたゆめは,ふと気になったように呟く。
「……でも,どうやって使うの?」
ベリーは,彫像のようにピシッと固まった。
ガラガラと崩れていくのを気合で押さえて,ベリーは思考を巡らせる。
「……あ。ゆっちゃん,何するのが好き?」
唐突な問いに,ゆめは少し考えた後,明るい笑みを浮かべて答えた。
「……ゆめは,歌うのが好き!」
「なるほどね〜……。じゃあ,今,歌える?」
ポン,と手を打って,ベリーが思いついたように尋ねる。
「……? 歌える……けど」
困惑したようなゆめの瞳がベリーから外れた。
その視線の先では,ベリー達には何がどうなっているのか想像も出来ないような,激しい魔法戦が繰り広げられている。
「なら,歌おう。きっとリリーナ達を助けられるから!」
そう言って,ベリーはゆめの手を引いて立ち上がった。
防御魔法の中でも,声は外に届く。
「え? 何で……?」
不思議そうな表情を浮かべるゆめの問いに答える前に,ベリーはその手に魔力を込めた。
ロリポップのような形状に変化した魔力を受け取ったゆめに,ベリーは戦場には不釣り合いに見える,太陽のような明るい笑みを浮かべる。
「大丈夫。私を信じて,歌って」
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:ほのぼのを繰り広げるお二人,ようやく戦闘参加……の兆し。
追記:タイトルを忘れていることに気づきました。(2/21 6:30 直しました)




