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番外編.あの思い出はきっと

本日はベリー本人のお誕生日ということで

ベリーの誕生日会を急遽更新しました。

______________________________________

誤字,脱字報告受け付けております。見つけた際は遠慮なく報告して頂けると幸いです。

感想,レビュー等大歓迎です。

ブックマークも是非お願い致します。


 

 その日は,城中が豪華に飾り付けられていた。

 城の中だけではない。国全体が明るく活気に包まれ,祝い事の空気を作り出していた。

 お菓子の国グラッセリアでは,こういう行事がある時,当然のように行われるイベントがある。

 それは,庶民しょみんの子供達が集まって,家々を巡り,菓子をもらうというものだ。

 十月の末に行われる行事とよく似ており,子供達の楽しみの一つになっている。

 大人達もそれを楽しみに,この日の為に沢山のお菓子を作って用意しているのだ。

 そんなお祭りの雰囲気に包まれた城下町を,その日の主役は窓越しに見下ろしていた。

 その日は,王女ベリーの誕生日だった。


「……つまんないの」

 静かな自室で,ベリーはそう呟く。

 召使い達は皆,部屋の飾りつけを終えて別の準備に行ってしまった。

「……私も,やってみたいなぁ」

 ベリーの言葉は,窓を通ることなく落ちていく。

 庶民の子供達にとっては楽しい行事だが,当のベリーにとっては,少々退屈に思える日だった。

「……リリーナの所に行こう」

 おもむろに立ち上がって,ベリーは部屋を出る。

 すれ違う時に行き先を尋ねてきた召使い達に「教会に行ってくるね」と伝えた。

 リリーナがいる教会は,城の広大な広場の先の森の奥にある。

 一応城内という認識らしく,ベリーはよくここに一人で訪れていた。

「……リリーナ,いる?」

 音を立てないように教会の裏の扉を開いて,そっと声をかけてみる。

 ほんの少しの間があってから,奥から純白のローブをまとった若い女が現れた。

「……ベリー,どうしました?」

 王女の誕生日でも,ここの風景が揺らぐことはない。それに妙な安堵あんどを覚えつつ,ベリーは中に入っていつもの定位置に座った。

「お城じゃつまらないの。私もお祭りに参加してみたいよ……」

 溜め込んでいた愚痴ぐちを吐き出すと,リリーナは何度か瞬いた後,頬に手を当てる。

「参加したいなら,連れて行ってあげましょうか?」

「……え?」

 ベリーは蜂蜜はちみつ色の瞳を丸くし,困惑したようにリリーナを見た。

 視線を受けたリリーナは少し逡巡しゅんじゅんした後,小さく微笑む。

「私は城下町に行く予定があるので,連れて行っても構いません。……皆さんには内緒ですよ?」

 リリーナが悪戯いたずらっぽくそう言うと,ベリーは花開くような好奇心に満ちた笑顔を浮かべた。


「わぁ……! 子供が沢山!」

「そりゃそうですよ。今日はそういう行事なんですから」

 教会をおおう森を抜けた先は,まごうことなき城下町が広がっている。

 いつも見下ろしていた光景が目の前にあることに,ベリーは興奮を抑えられないようだった。

 リリーナに渡されたシンプルなワンピースをまとっているものの,少し目立ってしまっている。

「あ,リリーナ様だ!」

「リリーナ様,お菓子ちょうだい!」

 苦笑しつつベリーを眺めていたリリーナの姿を見て,数人の子供達が駆け寄ってきた。

 リリーナは思い出したように何処どこからか数種類のお菓子を取り出し,穏やかな笑みを浮かべて子供達に渡す。

「……リリーナ様,その子だぁれ?」

 咄嗟とっさにリリーナのローブに隠れたベリーを見つけて,同じくらいの幼女が声をかけた。

「あ,私は……」

「この子は教会の子で,リリーっていうの」

 本名を名乗ろうとしたベリーの言葉をさえぎって,リリーナが慌てたようにそう答える。

 この国に『ベリー』という名を持つのは一人しかいない。

「そうなんだ! リリーちゃん,お菓子あげる!」

「あ,私も!」

 子供達は特に疑問に思うこともなく,ベリーに自分が持っていたお菓子を渡した。

 ベリーは何度か瞬いて,首を傾げる。

「……良いの? 皆がもらったものでしょ?」

 その言葉に,子供達のリーダー格の少年が小さく笑った。

「はじめましての奴にはお菓子をあげる決まりなんだ。なんでかっていうと,今日お誕生日の王女様はとってもお菓子が好きらしい。だから,大きくなって王女様に会えるようになったら,皆で一個ずつ,お気に入りのお菓子をあげるんだ。その時に仲間が多くて,お菓子が多い方が,王女様も嬉しいだろ?」

 胸を張って自慢気にそう述べる少年に,周囲の子供達も頷く。

 それを微笑ましげに眺めていたリリーナは,ベリーの方に視線を投げた。

 ベリーは数秒の間固まった後,はにかむように笑みを浮かべる。

「……王女様,絶対嬉しいと思うよ」



「……そんなことも,あったっけ?」

「一年前ですよ」

 ベリー達は,神狼国ヴェステリエを離れて魔王領に向かっていた。

 穏やかな日光が包む草原で少しの休憩をしていた一行は,在りし日のグラッセリアの話で盛り上がる。

「そんな良い話なのに,当の本人は記憶にないんだ……」

「ゆめもお菓子欲しいー!」

「あげるよゆっちゃん」

 呆れたように呟いたキャサリンは,ゆめの言葉に反応してどこからか山のようなお菓子を取り出した。

「……あ,べりーにもあげる」

 それを満面の笑みで受け取ったゆめは,ふと瞳を向け,お菓子を一つベリーに差し出す。

「え? 良いの!?」

 花開くような笑みでベリーが受け取ると,ゆめは小さく笑った。

「だってそのお話で男の子が言ってたんでしょ? 大きくなったら,お菓子をあげるって。べりーが大きくなったら,ゆめもお菓子あげたい。で,べりーはもう大きいから,今あげる!」

 にぱっと笑うゆめの背後で吐血するキャサリンには視線を向けず,ベリーは何度か瞬く。

 それから少しだけ表情が崩れた。

「……ありがとう。でも,私はまだ小さいから,本当に大きくなったら,ゆっちゃんからもらうね。その時は,グラッセリアで」

 焼け野原と言うよりも,何も無い焦土しょうどと化したグラッセリアを思い出す。

 庶民は一時的に近くの森に避難していたが,失った街並みはそう簡単には戻らない。

 それでも,きっとお菓子の国に笑顔が戻る時は来る。

 その時こそ,本当に大きくなって,あの子供達にお菓子をもらう。

 ベリーは,少し大人びた表情でそう決意した。


「あ,でもこれはもらうね」

「えー!? なんでー!?」

 はしゃぐベリー達を見て,リリーナは微笑ましそうに笑う。

「……あれ,“ちょうど”一年前なんですけどね」

 そんな呟きは,誰かに届くこともなく,風邪にまぎれて流れていった。


最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:お誕生日会です!

   十一話のあそこに差し込むイメージで……

   ベリー及びベリー本人様,お誕生日おめでとうございます!

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― 新着の感想 ―
あっ、ベリー本人ですぅ! きっかり6時24分に生まれたましたー!!! ハッピーバースデートゥミー!!! 誕プレありがとっ♡みこち〜 途中でベリーがひらがなのところ 私のイチオシですわぁー!!
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