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10.これからの道は

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 二つに結われた豪奢ごうしゃな茶髪は,窓から差し込む微かな光に照らされて,黄金のように輝く。

 綺麗に手入れされていた毛並みが反映されているようで,質感は髪の毛とは少し遠い。

 無垢な黒橡くろつるばみの瞳は,映る景色が変わって明るく,瞳の中には煌めきが見えた。

 興味深げにきょろきょろと周囲を見回す『ゆめ』を,その場にいた三人は唖然あぜんと眺める。

「……ゆっちゃん,大きくなったねぇ」

「そういうレベルではないかと」

 ベリーが現実逃避気味に呟くと,衝撃が落ち着いていないリリーナからツッコミが飛んだ。

 その会話で現実に戻ってきたのか,一度も瞬きをしていなかったキャサリンがおもむろに立ち上がる。

「……ゆっちゃん……人化出来たの……? 信じられない……信じられないくらい可愛い……ぐはっ」

「きゃさりん!?」

 突然吐血して倒れたキャサリンに目を丸くして,『ゆめ』は困ったように視線を彷徨さまよわせた。

「だいじょーぶ。多分ゆっちゃんは悪くない」

 ベリーが『ゆめ』の頭を撫でると,『ゆめ』はふわりと花開くような笑顔を浮かべる。

 その仕草は,犬の姿だった時とよく似ていた。

「……ゆっちゃん可愛い゙っ」

 起き上がってきたものの,再び倒れたキャサリンに一瞬視線を向けた後,ベリーは『ゆめ』と視線を合わせる。

「……ゆっちゃん,人化凄いね! でも,今まで出来てたの?」

「んー,わかんない! やってみたら出来たのー」

「そっか〜」

 追求を諦めたベリーは二人でほわほわと和む。

 元から単なる好奇心で訪ねただけなので,詳細な返答は期待していなかった。

 その様子を見て,リリーナも問うのを諦めたのか,ソファに座り直す。

「……それで,本当に人化したわけですが……ついてくるんですか?」

 徐ろにそう問うと,キャサリンが再び起き上がって,無言で『ゆめ』の方へ向かった。

「……私は,どっちでも良いの。ゆっちゃんが行きたいなら行くし,行かなくて良いなら行かない」

 そう言ってから,キャサリンは『ゆめ』と視線を合わせる。

「……でも,ゆっちゃんは行きたいみたい。ついて行っても良い?」

『ゆめ』の瞳の中に,確かな輝きを見たキャサリンが仕方なさそうに尋ねると,リリーナは少し考え込むように頬に手を当てた。

 それから数秒,ベリーと顔を見合わせた後,小さく微笑む。

「構いませんよ。私達も,旅の味方が増えるのは嬉しいです」

「やったぁ! ゆっちゃん,一緒に行こ?」

「うん! ゆめ,べりー達と冒険する!」

 手を取り合ってくるくると回る二人を拝んだ後,キャサリンは小さく息をついてリリーナの方を見た。

「そうとなれば,私達も此処を離れる準備をするし,少し待ってくれる?」

「勿論です。私達は別に先を急いでいませんので」

 リリーナが微笑んで了承すると,キャサリンは感謝を述べてから,視線を扉の方に投げる。

「なら,準備が出来るまで,うちに泊まっていって。明日には行けると思うから」

「ん!? ゆっちゃん,一緒に寝よ!」

 二人の会話が聞こえたらしいベリーが興奮気味に『ゆめ』にそう言うと,『ゆめ』も嬉しそうに笑った。


 それから数時間も経たない時間。

 穏やかに地上を照らしていた太陽が去り,静かな夜が森を満たす。

 明るく,何処どこか控えめな星が瞬き出した空を,キャサリンは自室の窓から見つめていた。

「……きゃさりん,どうしたの?」

 二人を客室に案内した『ゆめ』が隣に立って,コテンと首を傾げる。

 その仕草に小さく微笑んでから,キャサリンは視線を空に戻した。

 黒曜石のような瞳に,少し薄暗い,遠い星が映る。

「……ゆっちゃん,大きくなったんだね」

 唐突にそう言われ,『ゆめ』は何度か瞬いた後,小さく頷いた。

「ゆっちゃんはさ,私が幼い時に,この森で拾ってきたんだよ」

 キャサリンが続けながら,『ゆめ』の頭を優しく撫でる。

「その時のゆっちゃん,凄く弱ってて……私のことも凄く警戒してた」

 懐かしむような,複雑な感情が浮かんだ瞳を僅かに伏せ,続けた。

「私,一目惚れだったの。ゆっちゃんを見た時,まるで自分の妹を見つけたみたいな,幸せな気持ちになった。……だから,連れて帰って,大切に育てようって思ったの」

 そこで言葉を切り,黒曜石の瞳を『ゆめ』の瞳に合わせる。

「……前にいなくなった時,私は本当に怖かった。ゆっちゃんが危ない目にあうのも怖かったけど,本当に怖かったのは……ゆっちゃんが私を捨てたんじゃないかって」

 その言葉に,『ゆめ』は黒橡くろつるばみの瞳を見開いた。

「違うよ? ゆめは……」

「うん。わかってる」

『ゆめ』の言葉を遮って,キャサリンは静かにそう告げる。

 それから,視線を空に戻した。つられて空に向けた『ゆめ』の瞳に,満点の星空が映る。

「……これから,どんな道が待っているかわからない。でも,絶対にいなくならないって約束してほしいの」

「……うん! ゆめは,きゃさりんから離れない! 絶対!」

 軽やかなメロディのような声が,静かな森に響く。

 キャサリンは何度か瞬いた後,弾けるように笑った。

最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:微妙に長くなりました……。予定より一日だけ更新が遅れてしまったので,そのお詫びです。

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