表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/4

第二章「王城騒然、勇者様ご到着」

魔物討伐(※ただし俺は見ていただけ)から一夜明け――


 俺は、王城にいた。


 どうやら、あの魔物が王都近郊まで迫っていたということで、騎士団がパトロールをしていたらしい。そして、たまたま現場にいた俺は、レティシアとともに“無事に帰還した”ということで、騎士団の本部――そして、王城へと連れてこられた。


 「すまんな、いろいろ騒がせて。だが、君たちの判断は正しい。俺のような重要人物は、王に会うべきだろう」


 護衛の騎士がピクリと眉を動かす。


 「重要……人物?」


 「うむ。転生勇者だ。何なら、光の加護を受けたといってもいい」


 根拠は一切ない。けれど、俺の直感が告げていた。


 ――これは、運命だ。


 この世界に呼ばれたのには理由がある。前世で得た知識、無数の読書とゲームの記憶、それに35歳という、青年とは違う“渋み”。すべてがこの世界で輝くための布石だった。


 廊下の先、重厚な扉が開かれる。


 王の間――か。


 俺は落ち着き払って足を進めた。すると――


 「おのれ、何を考えているのだ貴様は!!」


 怒号が響いた。


 ――レティシアだった。


 彼女は王の間の中央に立ち、完全に俺を指差していた。


 「魔物の前で動かず立ち尽くしていたこと、奇跡的に無傷だったこと、そのすべてを“自分の力”だと本気で思い込んでいるのです!」


 「違うのか?」


 俺は素で聞いた。


 騎士たちはざわつき、レティシアは頭を抱えた。


 だが、そのとき――


 「……ふむ。面白い男だ」


 玉座に座る、ひげを蓄えた王が口を開いた。


 「無謀に見えて、その実動じず……民を守るという気概を持つ。真澄殿、そなた、本当に“勇者”なのか?」


 俺は胸を張って答えた。


 「ええ、そう思っております」


 「ほう……“思っている”とな。自信家か、それとも――」


 王は笑った。


 「余は好きぞ、そういう者。国には少しばかりの希望が必要だからな」


 その瞬間、王城の空気が変わった。


 レティシアの目が見開かれ、騎士たちがひそひそと囁きはじめる。


 「まさか……」


 「本当に勇者なのか……?」


 ――なぜか、信じ始めている。


 俺の中では、完全に「勇者である」ことが確定している。だが、周囲がそれに追いついてくるのは、予想以上に早かった。


 「うそでしょ……」


 レティシアが小さく呟いたその顔は、困惑と――ほんの少し、心配の色を帯びていた。


 彼女は、まだ気づいていない。俺が、きっとこの国を救うことになるということを。


 そして。


 俺も、まだ気づいていなかった。


 この世界で出会った一人の騎士姫が、自分の運命そのものを変える存在になることを――


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ