蔓からむ花の歌
LINEのあるOpenChatで『花言葉企画』があり、製作したお話です。
「ついに冬咲きアサガオができた」
この『夏の花』の代名詞とも言える植物を冬に見たい、などと望んだ彼に見せつけてやらねば。
だけど二年も掛かったのは悔しい。
「さあ、サンタに代わってプレゼントを届けてやろうじゃないの」
そう思っていたのに。
彼は、既に亡くなっていた。
私に願ってすぐ、病の克服のため有名な病院へ移って、そのまま、だったなんて。
私になにも言わず、この植物を作らせたのは、なぜ?
「……ご連絡できず、申し訳ありません」
それらは彼の母親が電話口で教えてくれた。
『いいえ。あのこ、普段から植物学者のあなたのコトばかり話していたわ。それこそ自分の手柄みたいに。友情で結ばれてるなんて言っていたけれど、きっと恋をしていたのね。あなたへの連絡をしないよう、最後まで言っていたの』
今となってはそんなの、解らない。
私はプレゼントをお母さんに渡そうかと思い相談すると、彼女は興味を持って『アサガオ』の話を聞いてくれ、激しく納得したようだった。
『それはどうかあなたの元に』
「いや、でも彼へのプレゼントなので……」
『あのこ、明はきっと結さんとの繋がりとしてその花を選んだのよ』
私には意味が解らない。
どうして明がこの花を冬に望んだのかも知らないのだ。
『去年の冬まで保つかわからないと言われていたから、冬に好きな花を望んだのかも』
明を植物頒布を確認する作業に付き合わせた時。
日傘の下で汗だくの彼は、水をがぶ飲みして言った。
『あの時のアサガオごめ~ん! カラカラの鉢に水をもらえたら、嬉しいよなあ。待たせて悪かったなあ』
小学生がみんな植えるアサガオ。
それを観察したりもするが、ただ咲いてすぐしぼむ花を愛する子供はいない。
だけど、転校してきた私と出会った頃の記憶を持ち出し、楽しげに話すから記憶に残っていた。
『ゆいは黒髪、黒い目、めっちゃ日本人だよなあ』
『あきらも日本人でしょ、違わないよ?』
私には少し赤い瞳も、真っ白い肌も綺麗だと思えたけど、他人からは距離を置かれていた。
彼は色素の薄い身体。
だからあの『白に赤い筋のアサガオ』がお気に入りだったんだ。
当時は何をするにしても準備が必要な彼に、ずいぶん面倒臭い生活だと失礼にも思っていて、なんなら直接話した。
でも彼は笑っていた。
「白いアサガオが、好きでしたね」
『そうね。夏に毎年咲いているわ』
実際見た記憶もあるが、彼の家に行ったのなんてもう十年くらい前で、こうなっては行く理由もない。
真っ白い風景の中、明が赤い瞳で見つめているのを幻視して……お母さんの言葉に引き戻された。
『息子には会えないけれど、また来てくれる?』
気がつくとボロボロと泣いていた。
彼がもう居ないのだと解って、涙がこぼれた。
涙は鉢の土にしみて、それがさらに悲しくて、泣いた。
こうしてアサガオは手元に残った。
花言葉は『淡い恋』だけど、蔓花としての言葉は『あなたに絡みつく』だ。
まったく、最後にやられたような気がしている。
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