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白クマ勇者、魔王退治に出かける

作者: 九重ネズ

こちらは「冬童話2025」参加作品です。初めての童話に挑戦しました。楽しんで頂けたら幸いです。(*^▽^*)/

 むか〜しむかし。モフモフ王国に、最大の危機が訪れました。

 なんと、民たちを悪夢にいざなう魔王が、西の森にある大きな城の中に現れたのです。


『これは危ないぞ』と思った王様は、早速勇者を探します。

 そして、国中を探しまわること数日。ついに王様は、勇者を見つけたのです!


「国王へいか。白クマ勇者が、やって参りました!」

「おお!これはこれは、白クマ勇者!よくぞ参った」

「はいっ。これから、魔王退治に出かけてきます!」

「うむうむ。では、これから共に旅をする仲間を紹介しよう」


 王様は白クマ勇者の元に、三人の仲間を紹介しました。


 一人目は、ピンクのたれみみウサギ聖女です。


「こ、こんにちは。白クマ勇者様。い、一緒にがんばりましょう!」

「うん。よろしくね、聖女様」


 二人目は、オレンジのカワウソ魔法使いです。


「ぼく、食いしん坊だから、魔法のごはんポケットにたくさん魚の干物を入れたんだ〜。白クマ勇者も食べるかい?」

「お魚は大好きだよ。あとで皆で食べよう」


 三人目は、とっても大きなパンダ剣士です。


「剣も使うけど、本当に得意なのはカンフーなんだ。あとで教えてあげようか?」

「カンフー?それって魔王様を倒せるの?それならいいよ」


 こうして白クマ勇者は、三人の仲間たちを連れて、魔王がいる西の森の城に向かいました。

 けれど、西の森は危険がいっぱいでした。


 まず、勇者たちの目の前に現れたのは、大きな岩です。

 この岩は、白クマ勇者の剣でも、カワウソ魔法使いの魔法でも、もちろんパンダ剣士の剣を使っても割れません。


「困ったなぁ。これじゃあ、先に進めないよ」

「あ、あのっ!勇者様、ここはわたしが行きます!」


 ここで、大きな声をあげたのは、ウサギ聖女です。

 身体を震わせつつも名乗りをあげたその勇気に、白クマ勇者は感動します。

 そして結局、大きな岩をウサギ聖女に任せる事にしました。


 ウサギ聖女は最初、大きな岩を見て、怖くて泣きそうになりました。

 けれど、このままでは魔王を倒せません。


「せ、せいっ!」


 ウサギ聖女は、勇気を出して大きな掛け声をし、地面から高くジャンプしました。

 そして、勢いよく両足が地面に着いたとたん、突然地面が大きくゆれました。


「うわわっ!地震だぁ!」

「あっ!見てみて、白クマ勇者。岩が割れたよ!」

「えっ?本当に?」


 カワウソ魔法使いの言った通り、白クマ勇者が岩の方を見ると、なんと、岩が見事に半分に割れていました。

 けれど、岩と同じように、近くの地面もキレイに割れています。

 白クマ勇者は、口を大きく開けておどろきました。


「…ウサギ聖女様。す、すごいねぇ」

「え、えへへ。こういう事も、得意なので。これで先に進めます!いっしょに行きましょう」


 こうして、白クマ勇者とその仲間たちは、魔王がいる城へと進み続けました。

 しかし、そんな勇者たちに、次なる危機がせまっていました。


「うわぁ、大きな川だぁ。橋もないし、これじゃあ先に行けないよ」


 そう。次に勇者たちを待ち受けていたのは、大きな川です。

 川はとても流れが速く、もし泳げたとしても、体ごと流されてしまいます。

 白クマ勇者は頭を抱えて、この川を渡る方法を考えます。

 するとここで、カワウソ魔法使いが手をあげました。


「白クマ勇者。ここは、ぼくにまかせて!橋は作れないけど、橋の代わりは作れるよ」

「おお!それはすごいぞ、カワウソ魔法使いくん。お願いしてもいい?」

「もちろんだよ、白クマ勇者!でも、お腹すいちゃったら、ごめんね?」


 カワウソ魔法使いは、むねを張って、川の方に歩いていきます。

 そして、持っている杖を空高くあげると、こう大きな声を出しました。


「いでよ〜!五千匹の魚の干物よ〜!そして、一つの大きな魚の干物になれ〜!」


 カワウソ魔法使いが杖を大きくふり回すと、魔法のごはんポケットがポンっと現れて、そこから大量の魚の干物が出てきました。

 そして、魚の干物たちはだんだん一つに集まり、ついには一匹の大きな大きな魚の干物になって、橋のように川にかかりました。


「白クマ勇者、魚の干物の橋ができたよ。さあさあ皆、早く川を渡って。ぼくがこの魚の干物を食べちゃう前に!」

「わぁ!とってもすてきな橋だね!匂いも美味しそう。ぼくもお腹がすいてきたから、皆でここを渡ってから、この魚の干物を食べよう。カワウソ魔法使いくん、ひとりじめはダメだからね」

「…はーい」


 こうして、白クマ勇者たちは、大きな魚の干物の橋を歩いて渡り、魚の干物は皆で美味しくいただきました。


 けれど、白クマ勇者たちに次なる危機が待ちかまえていました。

 なんとビックリ、魔王の手下がたくさんやってきたのです。


「やーいやーい、白クマ勇者。魔王様に会いたければ、オレたちを全員やっつけてみな?」

「やっつけてみな〜?キャハハハ!」

「出たな、魔王の手下め!ウサギ聖女様、カワウソ魔法使いくん、パンダ剣士くん、いっしょに戦おう!」


 白クマ勇者は、仲間に声をかけて、魔王の手下をやっつけます。

 しかし、白クマ勇者とパンダ剣士が剣を振るっても、カワウソ魔法使いが魚の干物を武器にして戦っても、手下は全く減りません。


「くっそ〜!全くキリがない!ウサギ聖女様の回復魔法のおかげで、たくさん戦えるけど、しんどいなぁ」

「ふー、たしかにそうだね、白クマ勇者くん。でも、この手下を皆やっつける方法は、ボクのカンフーしかない。皆下がって。ボクが戦うよ」

「えっ?パンダ剣士くん、本当に?」

「うん。ちゃんと見ててね」


 白クマ勇者はパンダ剣士の言った通り、ウサギ聖女とカワウソ魔法使いと共に、後ろに下がります。

 一方でパンダ剣士は、その場で大きく深呼吸したあと、「ムン!」と言いながら体に強い力を入れます。

 すると、何ということでしょう。パンダ剣士の上半身の服がビリビリッと破れ、とてもマッチョな体になりました。


「よおし!これで戦えるぞ〜!魔王の手下たちよ、剣士でありカンフーマスターのボクと勝負するがいい!」

「ま、マッチョになった!ヒエェ!ぜったい強いぞ、あのパンダ!」

「強いぞ、強いぞ、ヒエエエェ!」


 そして、マッチョになったパンダ剣士は、カンフー技をいくつもくり出し、魔王の手下たち全員をあっという間にやっつけました。


「ふぅ。シェイシェイ、魔王の手下たちよ。カンフーのすごさ、思い知ったか。さて、白クマ勇者くん。魔王のお城はすぐそこだよ。行こうか」

「う、うん。カンフーって、すごいんだねぇ。でも、なんで剣士になったの?」

「ある意味、修行のようなものだよ。カンフー剣術はまだ覚えられてないんだ。だから、剣と仲良しになりたくて、剣士になったんだよ」

「へー。カンフーってたくさん技があるんだねぇ」


 白クマ勇者は、とても感心してパンダ剣士に拍手を送りました。


 さて、大きな岩を割り、大きな川を渡って、魔王の手下たちをやっつけた白クマ勇者とその仲間。

 様々な危機を乗り越えて、ついに魔王の城の中に入る事ができました。

 しかし、城の中で白クマ勇者たちを待っていたのは、黒い二本の角を持つ、白いネコの魔王でした。


「フハハハハ!よくぞここまで来たな、白クマ勇者よ。ほめてつかわす」

「なっ!なんで、魔王が白いネコなの!?国王へいかは、()()()()が魔王だって聞いたよ!?」

「ああ、あのよわっちぃワレの兄上か。あれは魔王にふさわしくないから、ワレの暗黒魔法で眠らせておいた」

「ええっ!?暗黒、魔法!?どんな魔法なの!?」

「ハッハハハハ!では、おまえたちに見せてやろう。暗黒魔法、スヤスヤあったかオフトン!」


 白ネコ魔王は両手を上にあげて、大きな声でさけびます。

 すると、白クマ勇者たちそれぞれの頭の上に、白くてあったかそうなお布団が現れ、彼らをのみこんでしまいました。


「くっ、なんだこのお布団!あったかいっ!けれど、魔王を退治するにはこのお布団から出ないとっ!ウサギ聖女様、カワウソ魔法使いくん、パンダ剣士くん、だいじょうぶ?」

「「「スヤァ」」」

「うわああああ!!皆、幸せな顔して眠ってるうううう!!」


 白クマ勇者はくやしそうに目をつぶって、城の床に額を打ち、白ネコ魔王は「フハハハ!」とうれしそうに笑っています。

 このままでは、白クマ勇者までもお布団の魔の手に支配されるかもしれません。


 しかし、白クマ勇者はある事に気付きました。

 白クマ勇者は国王へいかに呼ばれるまで、ずっと北の寒い場所で暮らしていたため、寒いのは平気で暑いのは苦手でした。

 そして家で眠る時も、薄い毛布で寝ていたため、そのあったかさよりも温度が高いと、暑く感じてしまうのです。


「あっっっつい!!暑い!このお布団、今すごく暑い!」

「なにっ!?白クマ勇者が、お布団をぬいだ、だと!?」


 自分の魔法で作ったお布団から出た白クマ勇者に、白ネコ魔王はおどろいて目を大きく開きます。

 一方で、布団を床になげた白クマ勇者は、自分の剣を取り出して、前につき出しました。


「民たちを悪夢にいざなう魔王よ。願いを三つだけ叶えてくれるこの勇者剣で、退治してやる!まず、勇者剣よ。この場に暑い太陽を作り、仲間たちを目覚めさせて!」


 そして、目を閉じて白クマ勇者が一つ目の願いを伝えると、剣の先から白い光を放つとても暑い太陽が現れました。


「あつい!あついです、白クマ勇者様!布団から出ます!」

「あついよぉ〜。魚の干物みたいになっちゃうぅ。布団から出るね〜」

「フンッ!この暑さ、サウナぐらい温度あるけど、布団で汗をかきたくないから、出る!」

「な…ななっ!なんで、白クマ勇者の仲間たちが布団から出てくるんだ!反則だぞ!?」


 次々とお布団から出てくる白クマ勇者の仲間たちを見て、白ネコ魔王は声を張りあげます。

 しかし、そんな白ネコ魔王の言葉を聞いた白クマ勇者は、暑い太陽が消えたタイミングでこう言い放ちました。


「お布団で民たちをずっと眠らせる、魔王の魔法こそ反則だよ!だから、その反則魔法を使って、民たちの気持ちを思い知らせてやる!勇者剣よ、魔王の上にスヤスヤあったかオフトンを出して!」

「ええっ!?その暗黒魔法は、ワレしか使えない魔法だぞ?白クマ勇者には使えない…って、本当にスヤスヤあったかオフトンがワレの上にいいいいい!!ぎゃあああああ!!」


 なんと、白クマ勇者が願ったスヤスヤあったかオフトンは、見事に白ネコ魔王の上から降ってきました。

 しかも、あったかいお布団の中に入ったからでしょう、白ネコ魔王は「スヤァ」と寝息を立てながら、幸せそうに寝ているではありませんか!


 これにて、無事に魔王退治に成功した白クマ勇者は、額の汗を右手でぬぐいながら、仲間たちと笑い合いました。


「やりましたね、白クマ勇者様!ついに魔王を眠らせました!」

「おめでとう、白クマ勇者。お祝いも魚の干物でいい?」

「これで、無事に勇者の旅も終わったね。けれど、この森は危険だらけで、帰る時も何が起こるか分からないよ?これじゃあ、安全な場所でカンフーを教えることすらできないよ」


 たしかに、この西の森はとっても危険です。どう帰るかすらも分かりません。

 けれど、白クマ勇者は知っていました。勇者剣の願いはあと一つ叶えられることを。


「だいじょうぶだよ、皆。この魔法剣で、国王へいかのいる城に帰ろう。だから、ボクにつかまって」


 白クマ勇者の言う通りに、仲間たちは彼の肩に手を置きます。

 そして、白クマ勇者は最後の願いを言いました。


「魔法剣よ、最後のお願いだ。ボクたちを国王へいかのもとに連れてって!」


 魔法剣の願いの力により、無事に国王へいかの城の中に転移することができた白クマ勇者たち。

 そこには、白クマ勇者たちを今か今かと待っていた国王へいかがいました。


「おお!白クマ勇者よ、魔王はどうなったか?」

「はい、国王へいか。無事に魔王を眠らせて、退治しました!」

「よくやった、白クマ勇者!そして、すばらしき仲間たちよ!今夜は盛大にお祝いをしよう!」


 こうしてモフモフ王国は、白クマ勇者と仲間たちにより、平和を取り戻したのでした。

ここまでお読み頂き、ありがとうございました!


よろしければ、感想や「☆☆☆☆☆」の評価、いいね等つけて下されば幸いです!よろしくお願いします!(^^)

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― 新着の感想 ―
おふ◯◯、最強!!
2025/02/02 18:20 退会済み
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ワレのおふとん魔法を破るとは……( ˘ω˘ )スヤァ
白ネコ魔王の倒し方が平和的(笑) 可愛くて楽しかったです♪ (ウサギ聖女VS大きな岩の結果に慄きました(笑))
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