ラッキーカラーは黒らしいⅢ
そんなこんなで、バタバタしてたら、あっという間に、
午前も過ぎ去る。
「石野さん、ランチ一緒に行きませんか?ちょい付き合って貰って良いですか?」
後輩の葵くんから、誘われる。
直接彼は誘ってこない。社内メールでお誘いがある。
彼が一年目の時、企業にいて、私が教育係だったからか、彼が花形の海外営業に移動してからも、
たまに会うととご飯に何人かで行く。
礼儀正しい、イケメンである。
黒木くんと、彼は同期だ。3年目の彼らは、目立つ存在。
会社から、10分程の店ルブランで待ち合わせをする。
そう、ここまでは、どこにでもいる、OLの、
社畜気味の、三十路の最悪気味な誕生日だったのだ。
この時のランチ、今日もおにぎりを流し込めば。
誕生日にちょっと素敵なランチ、イケメンの葵くんだとか、乙女心を出さなければ、こんな事にはならなかった!
と後悔をする自分。
何故って、少し遡ろう。
誘われた私は、年甲斐もなく、少し浮かれていた。
葵くんがイケメンだからではない。それも少しはある。
誕生日に、予約の取れない大好きなルブランの
ランチを食べれる事にだ。
仕事が多忙でいつもは、ゆっくりご飯が取れないのに、
昨日のクレーム対応のお陰か今日はみんな気を遣ってくれてる、そのお陰で、誘いの時間に行ける事、少しゆっくり行ってきて良いとの了解も出た事も相まって、いそいそ、
今、向かっているのだ、雨も上がり、何なら虹も出てる。
良い日じゃないかー、って。
えっ、まって、どう言う事。
一瞬なんだか、分からなかった、そう、最後の横断歩道で、葵くんを見つけて、そしたら後ろから、背中を押されて、幹線道路のトラックにぶつかって、宙を舞う。
キャーとか、ワーとか、人が叫んでいる。
私の視界には、白崎さんが見えて。
押される直前に、「おばさんのくせに!私の葵と何故よ」って殺意を込めた、低いでも、鈴の様な彼女の声が聞こえて、スローモーションで、脳が状況を処理する、投げ出された体は、トラックが電柱にぶつかる爆音と共に、濡れているアスファルトに強く強打した。
雨で湿った地面に多量の血が…。
遠のく意識に、薄れる視界、あっ、あおいくん?
そっかぁ、白崎さんとの悩みだったのかな?
「なんで、先輩…、俺、◯◯◯××××◯」
イケメンに寄り添ってもらっての最期とか。
ヒロインみたい。
なんかもう聞こえて来ない、痛みと、寝不足のせい?
眠気で、意識はなくなった、、、。
最悪から、最高から、最低に移り変わりの目まぐるしい、
誕生日なのにね、ルブランのランチ食べたかった。
薄れゆく意識で、今日のラッキーカラーは黒。
姉妹店の高い方の、ノアールにしとけば。
あぁ、眠い。
___ ̄ケイヤクヲカワソウ__ ̄
け、いや、く?
__ ̄ ̄イキマスカ?_____
生きたいです。
そんな変な声が聞こえた気がした。