ラッキーカラーは黒らしいII
いつもの駅に向かう。
雨の日に防水パンプスで、歩く。
一人暮らしの始めの頃は、家から10分の駅までの
下りの坂道にオシャレさなんか感じてたけど、
お疲れの足を引きずっての、登りの帰り道に坂道に、
素敵さを感じた自分がら恨めしい。
地下鉄、電車の3両目、いつもの右端の位置をキープ。
たまに会う、スーツの素敵男子を横目に、ドキドキなんかもしない自分が、年くったなとか感じてしまう。
ふぅ、結婚かぁ〜。マッチングアプリの吊り広告と
先週のユナのウェディングを思い出し、
脳死してる自分ではもはや、
トキメキすらない事を思い出す。
ポケットの携帯が存在感をしめす。
最近、会社携帯の方、プライベートの10倍は鳴るよね。
チェックする。
あっ、「あかね先輩、ハッピィバースデー。私今日有給でぇ、坂上商事の資料のメール忘れてて、お願いしまぁす♫」………殺。
これは、殺意。昨日のクレームこりてない。
ハァー、流石、南さん、やらかし案件の宝庫だわ。
腹も立たなくなった、清々しさ。
可愛いんだけどね、可愛いんだよね。
また、震えるメール、次は何だよ。
「すみません、南がメール忘れてて、気づいて朝一、
何とかメールはしときましたが、フォローお願いできますか?俺、部長抑えときます…」
黒木くん、君ってやつは、流石エースだね。
んっ?黒ってラッキーカラー?いやいや、
マイナスからのスタートだよね。
なんてしてたら、会社についてしまった。
いつもの、水曜日。
社員証で事務所に入り、ニッコリ笑顔で挨拶する。
まだ、オフィスには人はまばら、髪を一つにまとめ、
人が来ない、電話ならないこのひと時に、高速で入力する。それはもう、無心。
何なら1番働いてるよね。
社内メールで、昨日のお詫びからの南さんのフォロー、
開始したら、まず、怒られ電話だな。
「おはようございます、先輩朝からすんません。
南がマジごめんなさい。あいつ甘えてんすよ、先輩に…」
横から声かけてくる、黒木くんの声を浴びながら、
今日も低音で素敵だわって思う自分。
できた彼氏でよかったね、南さん。
彼は、優良物件だよー。とかぼんやり考える。