ラッキーカラーは黒らしい
ふぅー。
爽やかな朝、日差しー。
ゆっくりと飲むコーヒー。最高の始まり。
石野茜、30歳、正に三十路。
今日は最高の1日…いや、地獄の始まり。
先週最後の砦の友人のユナも先週エリートと結婚して、
平日に会える、人もゼロ。
ハッピーバースデーと言うのに、
おめでとうの歌より、電話保留音の社歌が
頭で流れる社畜モードな始末。
好きでもない、コーヒー飲んで目を覚まさないと、
憂鬱な気分も抜けない。
いつも通り、平均年齢の高い、隣の会計課に睨まれながら、
うるさくてすみません、って謝って。
営業企画部の若手華やかなモンスターの、教育係に勤む、
ステージの変わった、唯一の30代女子×いやいや、女性。
のわ、た、し。
3月の決算期に雨の土砂降りのなか、傘もささずに、
コンビニに猛ダッシュ、おにぎり一つを流し込んで、
クレーム対応で追われ、残業の中
「あかねちゃん、女の旬は30代からだよ」なんてー、
油の乗った既婚上司に何となく夕飯に誘われて。
セクハラですよー、辞めてください!って払える三十路。
逃げるように帰宅したら、自分の誕生日〜。
いっそ、風邪でも引きたいのに、健康だけが自慢な私。
寝て起きたら、誕生日初めての食べ物は、朝の苦いコーヒー。
いつから、甘くないコーヒー飲むようになったっけ?
ふぅ、今日行けば、私だけ女性で、30代…。
何やってのよ、わたし。
戦闘服の社畜オフィスカジュアルに着替えて、
落ち着いて見えるように、爪もナチュラル、話し方も敬語。
年上には褒められても、皆んな既婚者。
髪も全部いつから、無難に纏める様になったっけ。
可愛いヒールから、無難なパンプス履く様にしたっけ。
着替えも憂鬱、これは、雨のせいかも。
ピピピッ、アラームが鳴る、今日の占い見たら、
会社に向かうサイン。
運勢は〜、新しい出会いがあるかも、ラッキーカラーは黒。
…、黒って、ハッピーカラーじゃないな。
とか思いながら、今日の1日を始める。
黒いパンプス履いて、傘持って、
バタンと外のムワッとした、春の雨のなか駅へ向かう。