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【 月狂犯 】〜届かない終幕と死者の貴方へ〜  作者: 伊東之俺
【第〇幕・ツバキ姫と主演者】
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プシュケと椿姫(2)

向こうから、一つ一つが紡ぎあげられた糸のように艶やかで、毛先がぐねり内側にぴょんと半円を真似たように飛んでいる頭髪(前髪もまた同様である)を後ろで一束にした、いかにも生真面目そうな少女が現れた。


その者はコツコツと革靴で床を叩き鳴らしこの場へと歩み寄ってくる。


「初めまして。ワタシの名前は古都華、古都華 伽。」


その制服…衣服の裾から端までも裏を見せず、波打っていない、その佇まいからは尊敬や謹厳が感じられる、口調も暖かで、自分の瞳には温厚篤実な人物に写るのに何故だろう。それは人間を模した機械じみている。その微笑みでさえ、何処か無機質な匂いが漂っているように考えられる。


ぎこちない、まるで人の笑みを理解していない。

影に誰かが潜んでいる。彼女の影に、誰かが取り込まれている。そんな感じがする。


「…え、あっ、宜しくお願いします、古都華さん。」

「ああ、宜しくね。そうだ、向こうの人達とは挨拶を交わしてきたのかい?」

「い、いえ。まだ、」

「なら言ってくるといいよ、みんな愉快で面白い人達だからね…随分と混乱している人もいるようだけれど。」


行ってらっしゃい、と誰かの微笑みで手を振られるので、応じて俺も手を振り返す。


「…椿木さん、あの方は」

「コトカさんだよ?言ってたでしょ。」

「そうなんですけど…何と言うか…いえ、何でも、」


前を見ると、多種多様な人間達が一様に混乱していた。突然、この様な場所に見目知らぬ人間と一緒にされ、不安な心もあるだろうが、乗り越えようとお互い宥め合っている様子だった。


ふと、白雪の色に桃色が編み込まれたサイドテールを見付けて、あの人に声を掛けてみようと発想が浮かんだ。


「こんにちは、初めまして、俺の名前は宇土原明羽です。貴女の名前は?」



その言葉から少し遅れてくりくりとした琥珀の瞳が俺の双眸を見やった。


黒タイツの右足が左を振り向きゆらりと前へ運ばれ、左足もそれに倣って右足の横へ整列する。


くるりと細く丸まった後れ毛に、薄く三本に別れた前髪、先述した髪束は、水色のレースの髪ゴムで固定され、茶色のリボンで飾られている。落ち着けない髪達は、くの字に曲がっていたり、三日月の格好をしていたりする。


灰色のタートルネックの上には袖を削いだシャツに装飾した撫子色の大きなリボン。胸当てを消した、濁り空のセーラー服に肩紐を縫い付けタートルネック、シャツの上に重ねて着ていて、腹部には二つ、金のボタンがある。多分改造制服って奴だ。


「…あ、えっと、こんにちは!ごめんねー!ちょっと頭痛が酷くて気が付かなかったんだー!あ、おじさんの名前は小山 志句暮です。宜しく!てふてふよ!」

「え……?は、はい…」


てふてふ…?女児じみていて些か愛らしいが、もしかして俺の事を言っているのではないだろうか、いいや明らかに俺の目を見てその名を言ったから、やっぱり俺の事かもしれない。


語尾を伸ばした口調で饒舌に自己紹介を済ませると、唸りつつも頭に手を添えていた。


「えっ、オヤマさん、大丈夫?」

「あー…ちょっと頭痛がね!いつものことだからさ!気にしないで!」


ふとして、誰かの歩みが聞こえてくる。


古都華 伽

良家の老女のような喋りをする頭身の低い少女。

真面目で真っ直ぐな性格だが、明羽はそんな彼女に違和感を覚えているらしい。


小山 志句暮

中学校の頃の制服を、自分で自由に改造出来るくらい手先が器用。

時折頭痛がするらしい。記憶力が乏しく、人の名前も顔も覚えるのが大の苦手、その為、名前を聞いたらすぐに渾名を付けるようにしている

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