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望みは影より来りて  作者: 名録史郎
7/9

6日目(日曜日)


「映画どうだったか?」


「うーん。ぴんとこなかった」


「だよな」


 背伸びして恋愛映画を見たのがいけなかったかもしれない。


 普段は二人でアクション映画ばかり見ているのに。


「今度は家で見るみたいなやつ見ようぜ」


「そうね。それがよさそう」


 今度……そう今度だ。

 

 映画館なんていつだって来れるはず……。


 デパートをでてゆっくり歩いていると、

 健太が立ち止まっていった。


「手をつなごうぜ」


 健太が手を伸ばしてくる。


「普通、自然につなぐものじゃないの?」


「いいだろ。昔は遠足でもつないだだろ?」


「どれだけ昔のこと言ってるのよ」


 あたしは、仕方なさそうな振りをして手を伸ばす。


 昔よりも大きな手。


 昔と違うつなぎ方。


 いつもは待ってくれないのに

 今日は歩幅を合わせてくれる。


 隣を見ると、ちょっとだけいつもより大人びて見える。


 ゆっくりと心が満たされていくのを感じる。


「夕日綺麗だな」


「そうね」


 あたしは進んでいく方向に沈んでいく太陽を眺めて、はっとした。


 デートコースは、帰りのことまで考えていなかった。


 慌てて、あたしは、自分の後ろを見た。 


 本当なら、影が伸びるはずなのに、影が一つだけ。


 私の後ろに影はない。


「どうしたんだ?」


「ううん。なんでもない」


 あたしは健太が振り向かないように気をつけながら歩く。


 お願い早く沈んで……。


 あたしがそう願いながら歩いていると、


 向こう側から歩いてくる人が見えた。


「木下さん……」


 健太が気まずそうに、視線をそらす。


 木下さんは何も言わず、悲しそうに目を伏せて通り過ぎた。


 通り過ぎてからしばらくして、

 あたしが振り向くと木下さんがあたしたちを眺めていた。

 

 なにも言わなかった彼女は、あたしの足元をじっと見つめていた。

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