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望みは影より来りて  作者: 名録史郎
3/9

2日目(水曜日)

 次の日の放課後、いつもの感じで健太が声をかけてきた。


「一緒に帰ろうぜ」


「だから、彼女がいるのに、もうファミレスは一緒にいけないって言ったでしょ」


 恋人でもない異性と、ファミレスに行くのはよろしくない。

 芸能人が世間であれだけ叩かれているのだ。

 学校でどれだけ健太が酷いことをいわれるかわからない。


「そうだよな。彼女がいる奴が、他の女とファミレス行くのは変だもんな」


「うん。そう」


「だから、別れて来たよ」


「えっ?」


「ならいいだろう?」


「い、いつ別れたの?」


「昨日の夕方だけど、それがどうしたんだ?」


 昨日呪いの儀式をやってすぐ……。


 なら、今の健太は……。


 健太を観察する。


 跳ねた髪。

 犬みたいに人懐っこい顔。

 

 いつもと変わらないように見える。


 変わったのは……。


「なっ? いいだろ」


 健太は、私の肩に手を置いた。


 距離感。


 まるで恋人のような距離。


 頬が熱くなるのを感じる。


「木下さんあんなに自慢していたのに」


「うーん。やっぱり合わなかったというか。のぞみが悲しそうな顔しているのに、耐えられなかったというか。家に帰って自覚したわけよ。俺が好きなのは、やっぱりのぞみだったって」


「うれし……」


 私は自分の足元を見つめた。


 影がなかった。


 太陽を浴びた健太の影がいつもより濃く見えた。


 私は固まってしまう。


「ははは、やっぱ、俺じゃダメか?」

 健太は、困ったように、頬を掻く。


「そんなこと……」


 ないと言おうとして、うつむく。


「ファミレスは行くだろう」


「うん……」


 健太の影が笑っている気がした。

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