第一目 子供+耳-親+金-目-愛+妖=火ノ目
初投稿です。
怖かったり怖くなかったりするお話が、つくりたくて書きました。カケラでも面白いと思って頂けたら嬉しいです。
左目を閉じて8年。僕は右目だけを使って生きてきた。
遠近感が掴めなかったりして困ったのが最初の一年。
眼帯をしているから周囲から少し浮いてしまうのに慣れるには二年程かかった。
まぁ僕が浮いてしまうのは眼帯の制だけじゃない。…簡単にいうと性格が根暗だからだと僕は思っている。
物心つく前に父親と死別し、10歳の時に母親を病気でなくしてから、僕は親戚の間をたらい回しにされて育ってきた。
父は『莫大な遺産』を、母は『異形の声を聞くことの出来る耳』を僕に残していった。
そして母を失った後に左目を失明した僕は晴れて得体の知れない声を聞く耳をもち、片目の不気味で身寄りのない、しかし莫大な遺産の権利をもつ子供となった。
親戚達は僕の事を気味悪がったが遺産の分前を得るためにたらい回しにしながら僕を育てた。このように僕は陰気な人間として社会に認識されてきた。
でもそれはそれで構わないと思う。
何だかよくも解らない他人に、何の落ち度もないのに絡まれるよりかはずっと気楽で自由だ。
そして何より安全だと思う。
そう。
僕がほんとに困っているのは、この白く濁った左目だ。
医師には白内障と告げられている。
けれど白くぼやけるはずの視界は今日も漆黒に沈んでいる。そして僕の眼前に彼らだけを映す。人には見えない異形の姿を。
左目を失明した時に僕が学んだ事は
自分が彼らの存在に気づいていることを、
彼らに気づかれると非常に危険な目に遭うということだった。
そもそも8年前、
左目がこんなことになったのも彼らの誘いに耳を傾けたからだった。
彼らに視力の代わりに霊視力を与えられてからは、
より彼らに気づかれ安くなってしまった。
聞かないふりをすることより見えないふりをする事の方が難しい。
道で目の前に彼らがいると生理的にどうしても後退ったり、道を譲ったりしてしまう。
見えない者はそんなことはしないはずなのにだ。
その瞬間に彼らは何処までも絡んでくる。
救いを乞うものは時に引きずり込もうとするし。契約を持ちかけて来る奴らや腕や足を一本丸々要求してくる奴までいる。
だから僕は左目を隠す(封印する)。
見えないふりをするのでなく、見えないようにすることで身を守ることができる。安全に生きられる。
彼らは妖。
そして僕は工藤 火ノ目という。
読んでくれてありがとうでございます。 しかしちゃんと連載できるのやらやら…