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恋愛撃  作者: 柑橘ルイ
1/4

一発目

 漫画や小説みたいにサバイバルゲームで重い設定や劇的なこと無いよ! 普通に楽しいよ! ってことが書きたかったので書いてみました。サバゲやろうぜ!

 あとタイトルの読み方は(れんあいげき)、恋愛要素強めです よろしくお願いします。

 的に玉が当たり、甲高い音が広場に響きわたる。

 二十メートルほど離れた位置に、ショットガンを持つ男性が一つ息を吐き、同時に構えを解いた。


「やっぱり6発同時は散りますね」


 細くたれ目の柔和な印象の男、兵庫(ひょうご) (あゆむ)は買ったばかりのガスショットガンの試し撃ちをしていたところである。

 偶然見かけた山の開け所でキャンプをしつつ、射撃の練習場としてしようしていた。

 大きな車道から脇道に入った利便性の良い穴場だが、草が生えて放置されているようだったので、草を刈り使用しているのである。


(うーん……障害物に隠れながら接近ですかね? 電動と撃ち合うのは無理ですね)


 思案しながら銃をケースにしまい、折り畳み式のローチェアに座りって薪ストーブで温めた缶コーヒーをすする。

 自然に囲まれたゆったりとした時間のなかで、歩はショットガンの運用を考えていた。


「ねえねえ、お兄さんなにやってるの?」


「うお!」


 突然聞こえてきた声にビクリと歩は体を震わせる。

 いままで利用してきたが歩以外だれもあったことがないため、完全に一人と思っていたのだ。

 歩は椅子から立ち上がり、声が聞こえた方へ顔を向ける。

 そこにはショートヘアーに大きな瞳の活発な印象を受ける少女がいた。

 細く小柄な身体を男っぽく動きやすい衣服に包み、小さく首をかしげながら歩に近づいて行く。


「えっと……君は?」


「フフン、相手のことを聞くときには、まず自分からって聞いたこと無い?」


 見つめあっても埒があかないと歩は疑問を口にする、その返答は胸を張っての得意顔であった。


「あーうん、確かにそうですね、自分は兵庫 歩、ここでキャンプしているとことです」


 言いながら歩は薪ストーブやタープなどキャンプ道具を見せる。

 他にエアガンの試射もしていたが簡潔に堪えるため割愛した。


「ふーん、ボクは蜂巣(はちす) 姫蝶(きちょう)、お祖父さんの土地を暇つぶしに見に来たんだけど……」


 聞いた途端に歩は硬直した。


「お、お祖父さんの……土地?」


「うん!」


 満面の笑顔で答える姫蝶だが、歩は対照的に顔面蒼白である。


「誰かに貸したとか、誰かが使用してるなんて聞いてないけどなー」


 姫蝶は頬に指を当てて思いだそうとしている様だったが、歩をチラ見しながらも彼女の口角が上がっていた。

 勝手に他人の土地を使用する事は犯罪である、そこを突かれた歩は従うしかなかった。


「何が望みです」


「えへへ、あのね! その銃見せてほしいな!」


 歩は驚きに目を見開く、お金や従属などを要求されると思っていた事と銃に興味を持った事、二重に予想が外れたためである。


「こいつに興味があると?」


 傍らに置いてあるガンケースを持ち上げると、姫蝶は上下に激しく首を振った。


「うん! エアガン? ってのはわかるけど、凄く本物っぽかったから気になって、見せてほしい!」


 目を輝かせて歩に迫る。


「わかりましたから、そんなに急かさないでください」


 歩は手作りの机にガンケースを置き、ジッパーを引くと中にはKSGと呼ばれるショットガンが収まっていた。


「うわー凄い、近くで見ると迫力あるね、これってオモチャなんでしょ?」


「確かにオモチャといえばそうですが、十八歳未満は購入禁止です」


 歩が取り出しながら、姫蝶に見せる。


「じゅ、十八禁か……」


「その言い方だと別物に聞こえますね」


 ショットシェル型のマガジンを込めながら歩は笑う。


「撃ってみます?」


「いいの!?」


 余程触って見たかったのだろう、被せぎみの姫蝶だったが歩は一旦待ったをかけて別の物を渡す。


「メガネ?ボク目はいい方だよ」


「度は入ってないですよ、これはシューティンググラスといって目を保護するものです」


「目を守る物?」


「野外で撃つとはいえ、玉が跳ね返ったりするかもしれません、確率は少ないですが安全確保は大事です」


 姫蝶の手に乗せるが歩離さずにいた、不思議そうに見つめる彼女に彼は再び口を開く。


「玩具といいますが目に当たれば失明、前歯も折れます。自分の言うことを守れますか? 自分勝手にやるようだったら、取り上げるし使わせません」


「意外と威力あるんだね、分かった、言うこと聞くよ」


 冗談ではない眼差しの歩に、姫蝶も真剣な表情で受け答えし、歩は一つ頷き手を離す。


「さっそくですが、銃口を人に向けない、引き金に指をかけない、安全装置は押しておく、これらは特定の場所以外では絶対にやる事、暴発して怪我を負わせます」


「はーい」


 姫蝶は頷きながら銃口を上に向け、引き金に指がかからないようにしながら、そのまま机まで移動する。


「映画とかで散弾銃独特の動作がありますよね、それで弾を送り込んで射てるようになります」


「こうかな?」


 前部の可動部分を前後すると、金属音が鳴り姫蝶は目を輝かせた。


「カッコいい……」


 ため息と共に発した姫蝶の言葉に、歩は心の底から同意する。


「照門と照星を合わせると銃身が真っ直ぐということです、今は撃ちたいでしょうし、好きにうっていいですよ」


 姫蝶は顔側に凹みのある突起と先端にある突起、そして的を合わせて引き金を引く、独特の発射音と共に玉が撃ち出され的を弾いたのだった。


「お! 上手ですね」


「本当!?」


 歩はが称賛を贈ると姫蝶は満面の笑みを浮かべ、今度は腰辺りで構え連射した。


「うりゃーってあれ?」


 景気よく撃ちまくろうとするが、あっという間に玉切れを起こす、六発同時にだったため消費が激しいのである。


「ちょっと待っていてください」


 歩はKSGを受け取り、フォアエンドを引いて出てきたスイッチを動かし、同じ部分を前進させた。


「何したの?」


「ここを動かすと6発同時から3発に切り替えられます、倍の回数射てるようになりましたよ」


 感心する姫蝶に手渡しながら続ける。


「ですがマガジンには30発しか入りません、ですので実際は10回程度しか射てませんよ」


 姫蝶は連射してあっという間に撃ち尽くしたあとに眉間に皺をよせる。


「く! 物足りない…!」


 その様子を見ていた歩は思案し一つ提案を出した。


「そうですね……来週同じ時間にここへ来れますか?」


「来週? 何か用事あったかな?」


 手帳をめくり始める姫蝶。


「今度はマシンガンを持ってきましょう」


「行く!」


 勢いよく閉じると、姫蝶は目を輝かせて高々と宣言するのであった。




(今日も疲れましたね)


 寝間着の歩は頭を拭きながらPCを起動させる。


(今度はどこ行きましょうか……)


 独り言をしながら探すのはサバイバルゲームのフィールドである。


(試しに蜂巣さんを誘ってみましょうか? いやまだ会って間もないですし……来週……いや再来週ですかね?」


 その手が止まり鞄に視線を送って思案すると、大きめの鞄を用意し再びBB弾やガス缶など撃つ時に必要となる物を詰め込んでいく。

 姫蝶との約束で持っていく道具だが、それ以外にも薄手のコートや帽子、ストールなどもつめこんでいった。


「まあこんなものですかね」


 一通り詰め込んだところで携帯が鳴り、通話相手を見ると先ほど考えていた姫蝶である。

 次に行くときに車で送ってほしいと頼まれ、待ち合わせで連絡がつけるようにと、姫蝶と携帯番号の交換を行ったのだ。

 歩が電話にでるとヤッホーと陽気な挨拶が返ってきた。


『明日大丈夫? もう楽しみで仕方がなくてネットで調べたり動画見たりしてドキドキなんだけど! うわー、今日寝れるかな!?』


『ええ、大丈夫ですよ、天候も良さそうですし、あ、ただ最近大分涼しくなってきましたからね、何か羽織る物が必要かも知れませんよ』


 歩は言いながらネットの天気予報を開く、夏も終わり、山も赤く染まりきった時期で、寒暖の差が激しく時には風が冷たく吹き荒ぶ事もある。


『よかったー、流石に雨の中だと出来ないもん』


『まったく出来ないと言うわけではありませんが、エアガンには良くないですね』


 安堵し嬉しそうな姫蝶の声に歩もつられて笑う。

 電動はショートし、ガスガンは錆が出てエアーコッキングは中のスプリングが劣化しやすくなるのである。

 気密も其れなりにあるので直ぐではないが、あまりいいものではないのだ。


『おや? もうこんな時間ですか、そろそろ寝ましょうか』

『え!? いつのまに!?』


 眠気を感じた歩は時計をみると、思いの外遅い時間になっており、また姫蝶も驚きの声を上げるのだった。











「お兄さーん!」


 自分を探しているだろう歩を見つけ、姫蝶は目立つように片手を振りながら走って近づいて行く。


「おっと」


 姫蝶は嬉しさと待ち遠しさで、そのまま歩の腕に飛び付いたが、歩は驚きながらも倒れる事もなくしっかり支えていた。


「えへへー、早く行こ!」


「そんなに急がなくても大丈夫ですよ」


 若干の恥ずかしさを感じながらも、姫蝶は抱き抱えるように腕を絡ませて歩を促し、車へ乗り込むのだった。


「車の中暖かい、本当に今日は寒いね、風もあるしそれがまた冷たいの」


「冬ももうすぐですね」


 おごってもらった缶コーヒーを口にしながら助手席に座り、暖かさにホッと一息つく。


「休日にこんなおじさんと一緒でよかったのですか?」


「おじさんってお兄さんで行けるよ! それにエアガンに触れるんだもん、こっちがいいよ!」


 車内に流れる軽快な音楽を聴きながら、目的地へ移動中の質問に笑顔で姫蝶は答える。


「蜂巣さんは美人で、見知らぬ人でも直ぐに仲良くなれそうな人柄です、学校でも人気がありそうです」


「美人ってそんな! もう照れちゃうよ」


 初めて言われた誉め言葉に、姫蝶は頬を手で覆う。


「仲がいい人は沢山いるけど、ボク人気者じゃないよ」


 友人は多いが、自分から話しかけて友達になった人が大半であった。

 人気者は周りの人が勝手に集まって来るのだ、その様な人物を知っている姫蝶からすると、自身は人気者ではない。


「そうなのですか? 不思議なものです、といったところで着きました」


 先日と同じ場所に停車したあと期待に胸を膨らませながら、姫蝶は降り立ち机のそばで待機する。


「早く早く」


「はいはい」


 急かすつもりは無いが、ついつい小声で言ってしまう姫蝶を、微笑みながら歩は準備をするのだった。


「これが電動エアガンです、銃はオーストラリアのステアーですね」


「おお! なんかこう、尖ってる!」


 姫蝶が見た感じを一言で言い表したように、銃口から引き金辺りまで上下が斜めになった姿である。


「これは電動というように電気で連射するエアガンです、電源はストックにニッケルバッテリーを入れ、フルオートで引き金を引きっぱなしで連射、セミオートで引く度に1発、そしてセーフティーで射てない状態です」


 歩の説明を真剣に聞く姫蝶は一つ一つに頷いていく。


「引き金の根元にあるボタンを押しながらマガジンを下げると抜けます、このようにマガジンの交換をします、こんなものですかね、それでは撃ってみますか」


 シューティンググラスを着けた姫蝶が受け取った時に、歩はもう一度口を開く。


「エアガンを扱う際の注意事項を覚えていますか?」


「お兄さんに従う、銃口を人に向けない、引き金に指をかけない、安全装置を押しておく、だね」


 よろしい言われながら歩に促され、姫蝶は銃を的へ向けて引き金を引く。


「うひゃー!」


「おお! よく当てますね」


 初めての感覚に興奮を押さえきれない姫蝶は、笑みを浮かべながらフルオートで撃ちまくった。


「ぬぬ、えい!」


 最初は的に当てることを考えていた姫蝶だったが、徐々に的の中心へと集中していく。


「この、よ……」


「……よし……」


「……」



 段々と口数が減っていき、ついにはだまって撃ち続ける姫蝶だが、指は離れることはなく、また弾も一転集中するように纏まっていった。


「ん」


 舌打ちする感覚で姫蝶は声をこぼす。

 マガジン交換も滑らかに行うが、それでも途切れてしまうことについつい不満が出てしまうのだ。


(交換すると集中が切れちゃうな、撃ってるときが楽しいだけにちょっと残念だな)


 銃口を下げて大きく息を吐き、ずっと同じ態勢だったため、固まった筋を伸ばすように背伸びをする。


「楽しかったですか?」


「へ?……弾いれてくれたの!? ありがとー!」


 話しかけられて姫蝶が振り向くと、マガジンに弾込めをしていた歩と目があう、自分のためにわざわざ準備をしてくれていたことに気付き姫蝶は頭を下げる。


「いえいえ、凄く集中していましたからね」


「あ、もしかしてずっと見てたの? なんだか恥ずかしいな」


 微笑む歩に見られていたと姫蝶は赤くなる顔を覆う。


「お兄さんも撃ってよ、今度はボクが見ていてあげる」


「自分を見ていても面白く無いでしょう」


 歩は笑いながら弾を込め、KSGを構えた。

 姫蝶は歩が撃つ様子をじっと見つめる。

 歩の普段の柔らかな顔から一変し、的を睨む鋭い視線に姫蝶の体が熱くなり、フォアエンドが音をたてる度に心臓が強く打った。


(ネットで見た他の人と構え方と違いがわからないけど……なんだか)


 そう思いながら姫蝶は歩の姿を目に焼き付け、体の熱を吐息に乗せながら呟く。


「はぁ……格好いいな」


 初めて見た時は視界が震えるほどに胸が高鳴り、草むらからずっと飽きることなく見続けていた、撃ち終わってのんびりする歩に今が好機と話しかけたのだ。


「あの、蜂巣さん?」


「ふぇ? な、なにかな?」


 歩が構えを解きながら話しかけるが、熱心に眺めてた姫蝶は一瞬反応に遅れる。


「黙って見てたことは謝りますので、近くで見つめられると流石に気になります」


「気にしないで! そのへんの石ころだと思えばいいよ」


 歩は隣でじっと見られると視線が刺さって落ち着かないのだろう、だが姫蝶は止めるつもりはまったくない。


「いやいや無理ですよ、せめてそこの椅子に座って下さい」


「近くで見たーいな」


 ここは譲れない姫蝶は笑顔で返答し、それを見た歩は察したのか一つため息をつくのだった。


「ねえねえ、少し気になったんだけど……」


「なんでしょう?」


 姫蝶が質問すると歩は構えを解く。


「さっきから言ってる蜂巣ってどうにかならない?」


「どうにかとは?」


「はっきり言うと名前で呼んでほしいな」


 若干恥じらいからふざけた感じに言ってしまうが姫蝶の目は真剣であった。

 歩に苗字で呼ばれることに姫蝶は距離を感じてしまい寂しさを覚えてしまう、出会って時間も短いが少しでも近づこうとそんな事を言ってしまうのだった。


「名前ですか? それぐらいなら良いですよ」


「やった! ささ! どーんと来い」


 気負う様子もない歩に期待を胸に姫蝶は待ち構えるように両手を広げる。


「姫蝶さん」


「……おぉぅ」


 歩に呼ばれ想像以上の衝撃に姫蝶は変な声が出たうえ体が固まる、だがもう一歩欲しかった。


「さ、さんじゃなくて、よ……呼び、捨て、で……」


「姫蝶」


 爆発したと勘違いしそうなぐらい心臓が鳴り、姫蝶はのけぞって胸を押さえる、友人の多い姫蝶は名前で呼ばれることは多々ありその中には男性もいた、だがこれほど歓喜に体が震えることは初めての体験であった。


「姫蝶!? 大丈夫ですか!?」


「くっはー! だ、大丈夫!」


 目を丸くしながら手を伸ばす歩に姫蝶は顔に熱を感じながら手のひらを向け制する、姫蝶自身もおかしな行動してるなと思いつつもどうしても抑えられない。


(呼び捨てされるだけでこんなになるなんて思わなかったよ!)


 姫蝶は真っ赤な顔を両手で覆いながらしゃがみ込み、深呼吸をしながらなんとか心を落ち着かせていく。


「お兄さん、さん付けでお願いします」


「わ、わかりましたよ、姫蝶さん」


 苗字に戻すのは嫌だった姫蝶は少し下がってさん付けに戻してもらう、それでもそれなりに効くが我慢ができるのだ。手を伸ばすか引っ込めるか迷っている歩に申し訳なく思う姫蝶である。


「あーそういえば姫蝶さん、動く目標を撃ってみたくありませんか?」


「動く目標? 撃って大丈夫なら撃ってみたい!」


 話を強引に変える歩にのって姫蝶は気にしてない素振りで元気な返答をした。


「ではサバイバルゲームに行きましょう」


「良いの!? やった!」」


 姫蝶はネットでエアガンを調べていたとき、サバイバルゲームという文字が多く出てきたため、ついでに検索していたのだ。

 サバイバルゲームとは、エアガンを持ち、障害物に隠れながら待ち伏せ、前進して隠れる前に打ち倒す、時に全滅させ時に陣地のシンボルを奪い取る。

 日本発祥とも言われている戦争ごっこである。


「それでいつ行くの!? 絶対に開けるから!」


「明日です!」


「明日!?って何にも準備してないよ」


 何が必要かよくわからないので間に合うかと不安になる姫蝶だが、歩は大丈夫と頷いた。


「銃はそのステアーでいきましょう、その他は現地で借りることができます、有料ですが参加費込みで自分が払いますのでご安心下さい」


「そんな悪いよ、ボクの分は出すよ」


 姫蝶はエアガンを検索してたときサバイバルゲームを知り、その値段もしらべていた。

 参加費だけなら3千~4千円ぐらいだがレンタル込みだと1万円に届く、エアガンを持っていくので多少安くなるが、二人分だと言い値だんになる。


「自分が誘いましたし、急な話ですからね、働いていますからそれぐらいは出せます」


「でも……」


「カッコつけさせてくれませんか?」


「……うん、わかった、よろしくお願いします」


 両手を合わせる歩に、姫蝶は悩みながらも断りすぎるのも失礼かと思い、渋々了承する。


「でもレンタルでいいの?買った方が結果的に安くなりそうだけど?」


「確かにそうです、ですが初めてですからね、続けるなら買った方が安くなりますが、一回でやめる可能性はあります、どんな感じか様子見するためにも最初はレンタルがオススメですよ」


 顎に指に当て首をかしげる姫蝶に、歩は頷く。


「服装というか着替えは持ってきた方がいいですね、最前線か後方支援かで違いますが、汗はかきますから」


「激しく動くからね、服装と言えばやっぱり軍服着ている人が多いのかな?」


 姫蝶が見た動画や画像は基本的に迷彩柄の軍服であった。


「迷彩柄はやはり見にくくなりますからね、有効ですから着る人も多いです、ですが安くするため私服を着て民間軍事会社、PMCでしたりコスプレしたりします、大体6:3:1といったところででしょうか?」


「コスプレか……折角非日常を味わうならそれもまた一興かな、お兄さんはどんな格好してるの?」


 ちょっと待っていてくださいと歩は車へ向かい中から色々取り出した。


 ツバが一周する帽子にメッシュのゴーグル、ストールをゲリラのように巻き、茶色で薄手のロングコートを羽織る、黒のグローブをしショットガンシェルをいくつも付けた幅広のベルトを巻いて、厳つい安全靴をはいた。


「これは終末装備と言われるらしいですね、世界が崩壊して旅する人を意識しています」


「うわ! 凄く似合ってる!」


 着られてる感じもなく、違和感なく着こなしていた、全体に茶色く地味であるが終末と言われ、荒野を歩く姿を容易に想像できる。


「こんな格好は少ないですが、いない訳ではありません、ほかにもスーツを着て二丁拳銃したする人もいましたね。こういった格好が増えると嬉しいですね」


「そっかそういうのもアリか……」


「明日はレンタルなので迷彩服でしょう、もし続けるなら今度道具を買いに一緒に行きましょうか」


 姫蝶は満面の笑みを浮かべて頷くのであった。




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