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3章 19. これはご主人様が悪い

 四人掛けのテーブルいっぱいに、所狭しと大量の料理が並ぶ。

 そのほとんどが肉料理なのだが、よく見てみるとサボテンやもやしのような植物の料理もある。

 ここは地中に水路が張り巡らされている街なので、日光を必要としない野菜が栽培されているのだろう。


「それじゃ、いただこうか」


「わーい!」


「ラビアさんもネイアちゃんも、自由に食べていいからね」


「ご、ごちそうになります……」


「凄い量……」


 ラビアさんとネイアちゃんは、目の前に大量に広げられた料理に瞠目している。

 しかしまぁ、突然これだけの料理が運ばれてきたら、驚くのも無理はないだろう。

 俺はもう見慣れた光景だが、初めてこの光景を見て驚かない方がおかしい。


「クウー!」


「ガウガウ!」


 クウ達の料理もペット用に用意されたスペースに大量に運ばれており、2匹とももう既に食事を楽しんでいる。

 普段は丸焼きしか食べていないからか、様々な味の料理に心を躍らせているようだ。

 クウ達の楽しむ様子を尻目に、俺も料理に手を伸ばし始める。

 結果から言えば、砂漠地帯の料理はサソリだったりコウモリだったりと、どこかの洞窟を彷彿とさせる料理もあれば、豚肉のように食べ応えのある料理料理もあり千差万別だった。

 若干ゲテモノが多い印象ではあったが、それでもどれもちゃんと味付けがされていたので普通に美味い。


「ふぅ、結構美味しかったな」


「でもまだ足りない……」


 ドロシーはまだ食べたりなかったようで、物欲しそうに空になった皿を見つめている。


「もう十分食べただろうが。夕飯まで我慢しろ!」


「はーい」


 まだ物足りない人が1名いるが、ともあれ食事もほとんど終えて落ち着いてきたので、そろそろ本題に入ることにする。


「それで、何で俺達を人攫いだと勘違いしたんだ?」


「はい、初めに灯様を見かけた時に所持品が少なく、そしてその若さから商人ではないなと目を付けていたんです。そしたら肩に魔獣を乗せていることに気付き、ハンターだと勘違いしてしまったんです」


「魔獣だけじゃ決め手には欠けるんじゃないか?」


「いえ、灯様の連れている魔獣がキマイラだったので。その子が数カ月前に攫われたという情報を聞いていたので、灯様が捕らえたか購入したのかと思いまして」


「あー、なるほどね」


 俺はマイラを故郷に送り届ける為に連れてきただけだが、そのことを知らずにまだ捕まっていると思っていたら、勘違いするのも無理はない。

 というかむしろ、マイラを助けようとしたラビアさはとても良い人だった。


「それに灯様は、私達獣人族を見ては目を輝かせていたので、それが決め手になり……」

 

 ん?なんかこれ俺が悪いパターンじゃないか?

 俺がつい初めて見る獣人族にそわそわしてたせいで、変に敵増やしてたんじゃんこれ。

 これじゃ料理に目を輝かせてたドロシーの文句言えないな。いや、人をジロジロ見てた分俺の方がタチが悪いか。

 なんてことを頭の中で考えて反省していたら、急にラビアがテーブルに頭を付けて謝りだした。


「申し訳ございませんでした!これ程の料理を振る舞ってくださった灯様に対して、人攫いなどと誤解をしていた上に命を狙うなんて!」


「いやいやいや、顔を上げて!ラビアさんは悪くないから!」


「し、しかし……!」


「うん、これはご主人様が悪い」


「ぐっ、ドロシーめ。裏切りやがって!」


 食べたりなかった恨みなのか、ドロシーはあっさり俺を見放した。

 これまで一緒に旅をしてきた仲間にかける情けはないのか。


「ご主人様は女と見れば見境なく、すぐジロジロと見つめる」


「んなわけねーだろうが!お、俺はただ獣人族が珍しくてみてただけだよ!」


「ほら動揺してる。怪しい」


 必死に弁解したが、ドロシーはジト目で俺を見てくる。どうしてか分からないが、彼女の俺に対する信頼がない。

 一体俺が何をしたというのだ。


「そんなこと言って、どうせドロシーは料理を食べたりなかった憂さ晴らしをしたいだけだろ!」


「ちっ」


 俺の指摘にドロシーは小さく舌打ちをして目を逸らした。

 やっぱり俺の予想通り、食べたりなくてイライラしてただけだったようだ。いい気味だぜ。


「ふ、ふふ、あははははは!」


「ちょ、ちょっとネイア!やめなさい!」


 ドロシーと変な言い合いをしていると、隣で見ていたネイアちゃんが耐えられなかったかのように突然噴出した。

 こんな茶番でも笑ってもらえたなら何よりだよ。


「ごめんなさい、灯様が面白くってつい」


「面白い、か……」


 ネイアちゃんの言葉に、ふといつもマリスに言われていた言葉が頭をよぎった。

 マリスに俺はいつも馬鹿にされていたが、もうあれから1か月以上たっているので、当時が懐かしく感じる。


「まぁとにかくこれでラビアさん達の誤解は解けたということで、一安心だな」


「ご主人様の疑いはまだ晴れてない」


「それはドロシーが勝手に言ってるだけだろうが!」


「ちっ」


 ドロシーに冷やかされつつも、ともあれこれで俺達の疑いは無事に晴れた。

 その上で、獣人族の2人とも友達になれたのだから万々歳だ。


「あの、1つ気になったんですけど、どうして灯様がキマイラを連れているんでしょう?」


「あー、それにはちょっと色々あってね……」


 ラビアさんがマイラのことを聞いてきたので、これまであった経緯をかいつまんで説明した。

 2人はその話を聞いて納得してくれたので、これで今度こそ誤解は全て解けただろう。

 そうして一段落ついたのでちらりと外を見ると、いつの間にか空が夕日で染まっていた。

 思ったよりも長々と話し込んでしまっていたらしい。もう今日は人間の住む区画に行くのは無理そうなので、明日に回すことにした。

 別に急いでいるわけでもないしな。


「それじゃ、そろそろ帰ろうか」


「本当に今日はすみませんでした」


「俺も誤解するような行動をとってたから、お互い様だよ」


 ラビアさんが最後に改めて謝ってきたので、それに俺も軽く返す。

 俺達としても、誤解が解けたならもうそでいいからな。


「ご飯ありがとうございました」


「ははっ、またいつでもご馳走するよ」


 ネイアちゃんに眩しいほどの笑顔でお礼を言われ、俺も幸せな気分になる。この子の笑顔が見れるなら、いつでも奢ってあげたいと思える程に。


「あの、今日はご無礼をしてしまいましたので、明日はそのお詫びに街を案内させてもらえませんか?」


「それはありがたいな。正直この街の構造は複雑過ぎて困ってたんだよ」


「はい!でしたらまた明日よろしくお願いします!」


「こちらこそお願いします」


 別れ際にラビアさんからありがたい申し入れがあったので、お願いすることにした。

 今日1日歩いただけで、この街の入り組んだ路地には参ってしまったからな。

 案内してもらえるなら、是非お願いさせてもらおう。


「さようなら、灯様!」


「ああ、ネイアちゃんも気をつけてね」


 最後にネイアちゃんに、ちぎれそうなほど手を振って見送られながら、彼女達と別れた。

 この街の探検は明日再開だ。今度はラビアさんとネイアちゃんに案内してもらえるので、少し楽しみでもある。


「じゃあ溶岩の魔人を家に帰るか!」


「うん」


「クウー」


「ガウガウ」


 こうして、冒険者ギルドへ行く予定だったが、何やかんやで兎人族の2人と仲良くなって、サラジウムでの1日目は終了した。


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