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3章 18.兎人族

 うさぎ耳の獣人族2人を引き連れ向かった先は、獣人族と人間の生活区画の中間あたりにある、そこそこ大きい飲食店だ。

 ドロシーとは食事の約束をしていたし、店内を見渡した感じだと、人間も獣人族も分け隔てなくいたのでちょうどいい感じの店だったのでここにした。


「ほら早く座りなよ」


「あ、あの、ここでいいんですか?」


 うさぎ耳の女性は、小汚い倉庫が何にでも連れて行かれるのだろうと思っていたのか、飲食店に入ったことに驚いている。

 まぁ人攫いがこんな店に連れてくる訳もないし、驚いても仕方ないのだろうが。


「ちょうど腹減ってたし、食べながらでも話は出来るだろ」


「さすがご主人様!」


「はいはい、じゃあんたはドロシーの隣に座ってくれ。俺はこの子の隣だ」


「は、はい……」


「分かりました……」


 話を終えるまで逃げ出されても困るので、念の為ということで、女性をドロシーの隣に座らせ俺は女の子の隣に座った。

 俺の膝の上にはクウ達もいるし、これなら何かあってもすぐに対応出来るだろう。

 ちなみにこの店は魔獣を連れて入っても、問題は無かった。

 他の客も何人かペットを同伴させている。ここならクウ達にも料理を食べさせられそうだ。


「ご主人様、何頼んでもいいの!?」


「いいけど頼みすぎるなよ」


「分かった!」


 ドロシーはキラキラとした目でメニュー表を眺めながら、涎を垂らしている。

 相変わらず食い意地の凄いやつだ。


「あんた達も何か頼みなよ。話はその後でもいいし」


「は?わ、私達もですか?」


「ああ」


 一緒に食事でもすれば、多少は俺達のイメージも良くなるかもしれない。

 打算的な考えだが、それでもいつまでも嫌われているとやりずらいからな。

 ここで少しでも互いの距離を縮めておきたい。


「い、いえ結構です。私達はそれほどお金を持っていませんし……」


「ここは俺達が払うから気にしなくていいよ。どうせアホみたいな値段払うんだから、1品や2品増えたって変わらないしな」


 ドロシーは机に乗らないほど料理を注文するに違いないのだから、彼女達の分を払っても差は出ない。

 いつも飲食店に入ったら、10万ブルムは飛んでいくと覚悟しているのだから。

 しかし、具体的な金額を思い浮かべたせいで、憂鬱になってきた。どこかで食べ放題の店をやってないだろうか。


「ほら、君も好きなのを頼んでいいよ」


「い、いい、んですか?」


「もちろんだ」


 隣に座るうさぎ耳の女の子にメニューを差し出すと、目を見開いて驚きつつもそれを凝視しだした。

 やはり子どもは素直だ。俺は一人っ子だったけど、もし妹がいたらこんな感じなのだろうか。


「ちょっ、ネイア!」


「いいんだよ、あんたももっと気を楽にしてくれ。俺は話をしたいだけだから」


「っ、分かりました」


 うさぎ耳の女性の方はまだ警戒していた様だが、妹さんが料理を選び出すのを見て、何かを諦めたように肩を落として納得してくれた。

 俺も妹の眺めるメニューを横目で見てみる。

 この世界には写真のようなものは無く、全て文字だけだ。そんなメニューに記されていたのはほとんどが肉料理の様な名前だった。

 だがそれも仕方ないだろう。ここは砂漠で、植物などまともに育たないのだから。


「まぁ俺はドロシーが頼んだやつを適当につまめばいいや」


「えー、やだよ」


 俺がそんなことを呟くと、ドロシーが即座に顔を上げて反応してきた。

 普段はは口足らず無くせに、こういう時だけ反応がいい。


「なんだよケチだな。それを見越して多めに頼めばいいだろうが」


「あーなるほど」


 ドロシーは俺が食べる分を見越して再びメニューを凝視して、料理を吟味しだした。







 ――







 そんな感じで全員注文を済ませると、料理が来るまでの間少し暇が出来たので、この隙に自己紹介でも済ませておく。


「そんじゃ改めて、俺は灯だ。で、そっちがドロシー。最初に言っておくけど、俺達は旅人でたまたまこの街に寄っただけで、別に人攫いやハンターじゃ無いぞ」


「よろしく」


 俺の自己紹介にドロシーが一言添える。いつもなら何も言わないドロシーだが、今は食事を目前にしているせいかテンションが高い。


「ほ、本当に人攫いやハンターではないのですか?」


「何を勘違いしたのか知らないけど、俺達はそんなんじゃない。これでも一応冒険者だよ」


 うさぎ耳の女性には中々信じてもらえない。だから身分証がてら冒険者ギルドカードを彼女に手渡す。

 彼女はそれをまじまじと見つめて、ある項目に目を向けた。


「あ、魔獣使いだったんですか」


「そうだよ。ほら、こいつらが俺の魔獣だ」


「クウー!」


「ガウガウ!」


 そう言いながらクウとマイラを持ち上げると、2匹ともご機嫌な鳴き声をあげた。

 こいつらもさっきから香る料理のいい匂いに、かなり興奮している。


「か、可愛い……」


「へへっ、ほら抱いてみるか?」


「い、いい、んですか?」


「もちろん」


 俺の横でクウとマイラを見ていたうさぎ耳の女の子が、羨ましそうに見てきたので抱かせてあげる。

 すると女の子は耳をピンと立たせて、気持ちよさそうにクウとマイラに頬擦りをしだした。


「わぁー、柔かーい!」


「クウー」


「ガウゥー」


 クウ達も嫌がってないので、この子は気に入られたのだろう。こんなところアマネが見たら羨ましがるだろうな。


「じゃ、その子たちは無理やり捕まえて売るとか、そういう目的は無いんですね?」


「無いよ。俺とクウ達は仲間だからな」


「そうですか……」


 俺の返事を聞いて、うさぎ耳の女性は顎に手を当てて考え込むように下を向く。

 そしてしばらく考え込んでいたが、やがて顔を上げた。

 その表情にはもう迷いは無いようで晴れやかでありつつも、どこか申し訳なさを感じ取れる。


「申し訳ありませんでした。私達はてっきりあなたが人攫いかハンターと勘違いして、突然襲いかかってしまって……」


「まぁそうだろうとは思ってたよ。誤解が解けたなら何よりだ」


「突然のご無礼失礼致しました」


「ご、ごめんなさい……」


 うさぎ耳の女性は突然立ち上がり、背筋を伸ばして綺麗に90度に上体を曲げて謝罪してきた。

 それに釣られるように、妹の方も立ち上がって謝罪してくる。


「分かってくれたならもういいよ。こっちは誰も怪我してないし、なあドロシー」


「うん」


「ありがとうございます」


 元々誤解だというのは分かっていたことだし、そこをいちいち追求するつもりは無い。

 というか思ったよりすんなり納得してもらえて安心した。

 正直冒険者になっても、あまりメリットはないと最近は思っていたから、こんな所で役に立ってラッキーだ。


「それじゃ、今度は君達のことを教えてよ」


「はい、私は兎人族のラビアで、その子は私の妹のネイアです」


 獣人族の中でも、猫人族や犬人族など様々な種族があるらしいが、その中でも彼女達の種族は兎人族という種族らしい。


「兎人族、やっぱりうさぎか」


「うっ、は、はいそうです」


「あ、ごめん。うさぎって言われるのは嫌なのかな」


 うさぎと言われてラビアさんは一瞬むっとしたが、さっきまでのことがあったからか押し黙った。

 しかし、種族のことを不用意に触れるのは良くなかったな。何がコンプレックスなのか分からないし。


「嫌ではないのですが、うさぎには強さも怖さも無いから、他の種族よりも侮られることが多くて……」


「そういうことね。でも戦ってみた俺達から言わせてもらえば、むしろ、ラビアさん達が1番恐怖を感じたけどね」


「ほ、本当ですか!?」


「ほ、ほんとほんと」


 ラビアさんがやたら食い入るように身を乗り出してきたが、これは嘘ではない。実際本当に彼女達が1番怖かった。

 ネイアちゃんの上からの奇襲はちょっと焦ったし、何より恐ろしかったのは、ラビアさんの鬼の様な形相だ。

 今まであんな顔で睨まれたことがないので、身が縮こまる思いだった。


 そんな感じで誤解を解いてお互い自己紹介していると、とうとう料理が運ばれてきた。


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