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3章 14.ルベロとユドラ

 マイラの成長を喜び顎の下などを撫で回していると、子ケルベロスやヒュドラの羨ましそうに見てきた。

 彼らにもこれから数日世話になるのだから、仲間外れは良くないな。


「ほら、お前らもおいで」


「バウバウ!」


「バオッ!」


 子ケルベロスとヒュドラに手招きすると、彼らは嬉しそうに笑顔を振りまいて駆け寄ってきた。

 一旦マイラを地面に座らせ、彼らの相手をするのだがこれが想像以上に大変だった。

 何せケルベロスは頭3つ、ヒュドラは頭9つもあるのだから、どう撫でたらいいのかわからない。

 だからとりあえず順番に、全ての頭を撫でてあげることにした。


「クゥ〜ン」


「バオォ〜」


「お前達もここが気持ちいいのか〜」


 マイラと同じく彼らも顎の下を撫でてやると、気持ちよさそうな鳴き声をあげ始めた。

 この兄弟はここが弱点のようだ。

 子ケルベロスは毛並みがふわふわで肌触りが最高で、ヒュドラは鱗は少し硬いが、裏はアオガネの様にサラサラとしていて気持ちいい。

 やはりこうして生き物と戯れている間は、とても癒される。

 ずっとこうしていたいと思えるよ。


「あらあら、随分と仲良くなったのね」


「あ、エキドナ。おはよう……」


 魔獣達としばらく遊んでいると、エキドナもやって来た。

 昨日は随分と恥ずかしいところを見せてしまったので、彼女と話すのは正直恥ずかしい。

 今思えば、なぜ出会ったばかりの彼女にあんなに、心の内をぶちまけてしまったのだろうか。


「もう、そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫よ。私から見たら灯ちゃんなんてまだまだ子どもなんだから、たまには大人に甘えてもバチは当たらないわ」


「はは……、いや、ほんとに恥ずかしいから傷をえぐるのはやめてくれ」


「あら、それはごめんなさいね」


 エキドナは謝りつつも、楽しげに薄い笑みを浮かべている。

 彼女からしたら俺は子どもなのだろうが、それでもいじられる方はたまったもんじゃない。


「それより気になってたんだけど、何でキマイラちゃんのことをマイラって呼ぶの?」


「ああそれは、ただのニックネームだよ。最初は子キマイラって呼んでたんだけど、それだと長過ぎるからマイラに変えたんだ」


「ガウッ!」


「ふーん、そうなの」


 やはり親からしたら、勝手に呼び名を変えられて怒っているのだろうか。

 マイラ本人は全く気にしていないが、キマイラに戻した方がいいのかもしれない。


「不快ならキマイラに戻すよ」


「え?全然そんなことないわよ。というかむしろ、羨ましがってる子が約2匹ほどいるから、その子達にも付けてあげてほしいな」


「羨ましがってる子?」


 予想に反しエキドナは全く怒っていなかった。

 それどころか、反対に羨ましがってる子がいるらしい。

 一体誰なのかと辺りを見渡すと、その正体が分かった。

 俺に12もの期待の視線が注がれている。それは子ケルベロスとヒュドラのものだったのだ。


「そうか、お前達もニックネームが欲しいか?」


「バウバウ!」


「バオォ!」


 子ケルベロスとヒュドラに尋ねると、2匹とも元気に返事を返してきた。

 どうやら2匹ともマイラのことを羨ましがっていたらしく、眩しいほどの笑顔を向けてくる。

 かなりの期待に責任重大で胃が痛いが、まぁマイラの兄弟というのなら、名前は案外すぐに決まった。

 キマイラがマイラなのだからな。


「それじゃあ子ケルベロスがルベロ、ヒュドラがユドラでどうだ?」


「バウゥー!」


「バオォッ!」


 2匹とも名前を聞いた途端、遠吠えや咆哮を上げだした。

 どうやら気に入ってくれたみたいで、うれしそうに俺の顔を舐めてくる。

 という訳で2匹のニックネームは、ルベロとユドラに決定だ。


「せっかくだから私にも何か付けてよー」


「いや、あんたはエキドナっていう名前があるんだから十分でしょ」


 2匹に名前をつけて満足していると、エキドナが混ざってきた。

 だが、正直このニックネームは俺が呼びやすくするために付けたもので、別にエキドナは呼びにくくないので何か付ける必要も無い。

 それで言うとヒュドラも別に呼びにくい訳では無いが、仲間外れはかわいそうなので付けてあげたのだ。


「あら、それなら皆にも名前があるわよ?」


「ふっ、大人なら大人らしく遠慮してくれ」


「むぅ、しょうがないわね……」


 さっきはたっぷりと子供扱いしてくれたからな。

 ならば此方もエキドナのことを、大人扱いしてあげなければ。

 彼女は不満そうだが我慢してもらおう。

 正直明らかに年上のオーラを出している人に、ニックネームなんて付けられる訳も無いしな。

 そんなことをしていたら、いつの間にか全員起床していたので話はこの辺で切上げ、エキドナ達の案内のもといよいよサラジウムへ向けて出発した。







 ――








 砂漠地帯のオアシスである、サラジウムまではエキドナの話では3日で到着するという。

 それまでの道中、馬車はユドラが引いてくれる。

 結局砂漠では馬車を引けそうな魔獣には出会えなかったので、非常に助かっている。


「ありがとうなユドラ。これからしばらくよろしく頼むよ」


「バオォッ!」


 ユドラは軽快な足取りで、砂漠の砂などものともせずにずんずんと突き進む。

 足の回転は少々おそいが、体長7m程の巨体なので1歩1歩が大きく、かなりスピードは出る。


「そういえば灯ちゃん、よくここがキマイラちゃんの故郷って分かったわね」


「ああそれは、マイラを売ろうとしてた連中を捕らえてどこで捕まえたか吐かせたらしいんだ。詳しいことは騎士がやったから知らないけどね」


 ライノさん達から聞いたのは、この砂漠地帯がマイラの故郷ということだけで、その他のことは聞いていない。

 だからあの竜の蹄の連中がどうなったかなどはよく分かっていないが、まぁ今頃は裁かれていたりするんだろう。


「本当にありがとうね、灯ちゃん達がいなかったら私達はキマイラちゃんがどこにいるかすら分からなかったもの」


「足取りは掴めなかったのか?」


「ええ、本当はすぐにでも探しに行こうとしたんだけど、旦那に止められてね」


「ああ、そうだったんだ」


 やはり自分の子供が攫われたというのに、黙っていられる訳無かったらしい。

 ただ、エキドナが探しに行くとかなり目立つからな。

 逆に彼女が狙われて、捕えられたり最悪殺されていた可能性もある。

 彼女がどれだけ強いか知らないが、騎士団が束になってかかればやられるだろうからな。


「それで今もうちの旦那は、キマイラちゃんを探してくれてるのよ」


「1人で大丈夫なのか?」



「ええ、あの人は空も飛べるし、とっても強いから負けるなんてありえないわ」


 エキドナは胸を張って旦那さんを自慢してきた。

 空も飛べるらしいし、それならだいぶ安全に捜索は出来るだろう。

 まぁ最も、もう既にマイラは故郷に帰ってきているので、捜索していても意味は無いが。


「エキドナの旦那さんって、名前はテュポンとか?」


「あら、どうして知ってるの?」


「いや、まぁちょっとしたツテがあってな」


 何となくエキドナに旦那さんの名前を聞いてみたが、やはりテュポンだった。

 エキドナで、子供にキマイラ、ケルベロス、ヒュドラときたら、その名前にも想像がつく。

 そういった知識は、クウと出会ってから数日、色々と調べたおかげでかなり豊富になっている。

 まさかこんなふうに役に立つとは思わなかったが。

 しかし、なぜ向こうの世界の神話の怪物が、この世界で生息しているのかは分からない。

 その辺りの謎も、いつか判明するといいな。


「ふーん、まぁそのうち灯ちゃんにも紹介してあげるわね」


「楽しみにしてるよ」


 テュポンという名前は知っているが、それがどういう怪物だったかはよく覚えていないので、是非会ってみたい。


 そんな風にまったりと移動を続け、特に何事もなく3日間が経過し、俺達は遂にサラジウムへと到着した。


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