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3章 旅の目的を達成

ケルベロスの呼び方を変えました。


ケルベロスの子

  ↓

子ケルベロス

 砂漠で魔獣を捜索中に偶然出会った子ケルベロス、ヒュドラ、そしてその2匹の母であるエキドナ。

 俺の予想が正しければ、マイラもエキドナの子供だろう。その為にも、彼らを会わせなければならない。


「あんた達、ちょっとうちの馬車に寄って行かないか?」


「あらなぁに?お姉さんをナンパしてるの?でもごめんなさいね、私にはもう大切な旦那がいるの」


「なっ、ちげーよ!あんた達に会わせたい魔獣がいるんだよ!」


「それは残念。で、会わせたいにはどんな子なの?」


「それは会ってからのお楽しみだ。子ケルベロスの治療も必要だろうし、とりあえず移動しよう」


「分かったわ。行きましょう」


 エキドナに変な誤解をされたときは思わず慌ててしまったが、どうにか馬車まで連れていくことには成功した。

 ただ、マイラがエキドナの子供だと確定したわけではないので、それはまだ言えない。

 それにもしそうじゃなくとも、傷ついた子ケルベロスの治療は必要だろうしな。


「じゃあ完全に日が沈む前に移動しよう」


「バウッ!」


 馬車に戻る為にライチの方へ移動しようとしたとき、子ケルベロスが抱きついてきた。

 怪我が傷むのだろうに、想像以上に元気がある。


「うおっと。なんだ、一緒に行きたいのか?」


「バウバウ!」


「ふふ、どうやらケルベロスちゃんは灯のことを気を入ったみたいね。任せてもいいかしら?」


「分かったよ。それじゃあ行こうか、子ケルベロス」


「バウッ!」


 こうして俺は、子ケルベロスを抱いてライチの背に乗りエキドナもヒュドラに乗り、馬車を目指し移動を開始した。






 ――






 馬車の場所は、モンスターリングのお陰でクウ達のいる所を常に把握しているので、簡単に帰って来れる。

 すっかり日も沈み、辺りも真っ暗になり肌寒くなってきた頃俺達は馬車に戻って来た。


「あ、ダーリンやっと帰って来たー!」


「遅かったね」


「クウ―!」


「ガウガウ!」


「皆、遅くなったな」


 馬車に戻ると、ドロシー達はすでに移動を止めてキャンプを設営していた。

 とはいえテントを張れるのは俺だけなので、焚き火を焚いて肉を焼いているだけだが。


「シンリ―帰って早々で悪いんだが、こいつの治療を頼む」


「わぁ、頭が3つ。分かったわ、任せて」


 シンリ―には高度な治癒の能力があるので、重傷だろうと問題なく癒せる。これであの子ケルベロスの傷もすぐに癒えるだろう。


「マイラ、ちょっと来てくれ」


「ガウ?」


 シンリ―に子ケルベロスの治癒を任せている間に、俺はマイラをエキドナに合わせるべく呼び出した。

 マイラはまだなぜ呼び出されたか分かっていないので、不思議そうな顔をしているが。

 ともかく俺はマイラを抱いて、エキドナの元へと向かった。


「ほら、こいつがあんたに会わせたかった魔獣だ。見覚えはないか?」


「うそ……キ、キマイラちゃん!?」


「ガウガウ!」


「やっぱりマイラもあんたの子か」


 マイラはエキドナを見つけた瞬間、俺の手から離れて彼女に飛びついた。

 そんな光景を目にして、俺は確信する。やはりマイラはエキドナの子供だったのだ。

 俺の予想は間違っていなかった。これで、ここまでの旅の目的を達成したことになる。


「いったいどこでキマイラちゃんに出会ったの!?」


「俺がマイラと出会ったのはハルレーンっていう街の近くの森だ。その前まではハンター集団に捕まってたみたいで、そこから騎士団が救出してくれたんだけどな」


「そうなの、ここまで連れてきてくれてありがとうね」


 エキドナは涙を流しながらマイラを抱きしめ、俺に礼を言ってきた。

 その言葉を聞けて、俺もここまで頑張ってきた甲斐があったというものだ。


「ダーリン治療終わったわよ」


「おお、ありがとうなシンリ―」


 マイラとエキドナが久しぶりの再会を喜んでいると、シンリ―が子ケルベロスを抱いてやって来た。

 見ると傷は完璧に治されている。相変わらず優秀ななかまだよ。


「ガウガウ!」


「バウッ!」


 マイラと子ケルベロスはお互いの存在に気付き、嬉しそうにじゃれ合い始めた。

 そしてそこに後ろで待機していたヒュドラも混ざる。

 1匹だけ巨大だからバランスがおかしいが。


「ふふっ、3匹とも嬉しそうにはしゃいじゃって」


「あの2匹はマイラの兄弟なんだろ?」


「ええそうよ。ケルベロスちゃんもヒュドラちゃんも、久しぶりにお兄ちゃんに会えて喜んでるの」


「お兄ちゃん!?」


 あの3匹が兄弟だということは予想していたが、マイラが2匹の兄だとは思っていなかった。

 子ケルベロスの兄ならまだ分かるが、ヒュドラの兄というのはとても信じられない。体格が違いすぎるだろう。


「ええ、キマイラちゃんが長男、ケルベロスちゃんが次男でヒュドラちゃんが三男よ」


「な、何で三男が一番でかいんだよ……」


「あの子だけ早熟だったのよ。でも中身はまだまだ子供だから安心してね」


「そ、そうか。まぁ魔獣だしそういうこともあるのかな」


 人間でも下の兄弟の方が背が高いなんてことはよくあるし、まして彼らは魔獣だ。

 俺の常識外の事が起こるのなんて当たり前。

 三男とも兄弟仲は非常にいいみたいだし、もうそれで良しとしよう。


「それで何でマイラはハンター共に攫われたりしたんだ?」


 ライノさん達は捕まっていたマイラを救出しただけで、なぜ捕まえたのかなどは知らなかった。

 だがマイラの母であるエキドナなら、その原因も知っているかもしれない。

 そう思って俺はエキドナに尋ねてみた。


「恐らく街へ行ったときに攫われたんだわ。ここから少し先にあるサラジウムっていう街には獣人族が暮らしていて、私達は彼らと友達なのよ」


「獣人族か、この国では珍しいな」


 獣人族とは、この国から東に渡った所にある島々で暮らしている種族のことだ。

 帝国に奴隷にされることが多いから、あまり自分達の島から出てこない。

 そんな種族がこの国で暮らしているとは驚きだ。しかもその上で魔獣と友達なのだからな。


「私達はたまに彼らの所に遊びに行くのだけれど、その街には人間もいて少し目を離した隙にキマイラちゃんは連れ去られちゃったのよ」


「助けられなかったのか?」


「あの時は同時に獣人族の人攫いも起きたの。だから獣人族は忙しくて手伝ってもらえなくて、でもだからといってケルベロスちゃん達とバラバラに行動しても、また攫われるかもしれないから離れられなくて……」


「なるほど、それで人手が足らなくてマイラを見つけられなかったって訳か」


 人攫いに魔獣狩り、それら全ては帝国の仕業か。どうにも気に入らないな。

 この世界では奴隷とかは当たり前のことなのかもしれないが、それが自分とかかわりのある連中に向けられるのは非常に不愉快だ。

 このままでは、クウの安心して暮らせる場所なんて、とうてい見つかりっこない。

 これは、まずは帝国のやり方をどうにかして食い止める必要がある。


「だから本当にありがとう。キマイラちゃんをここまで連れてきてくれて」


「マイラには俺達も何度も助けられたし、仲間なんだから当然だよ」


 エキドナは再び目に涙を浮かべながら、深々と頭を下げてきた。

 帝国のことは気がかりだが、ともかくこれで旅の目的の1つは達成できたのだ。

 今はそのことを喜ぼう。


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