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2章 34. 迷いの森大連合

「ふぅ、後はイル達の話を聞くだけだな……」


 エルフルーラさんと別れた後、俺は森の各勢力のトップを呼び出した。

 魔蟲王・イルと森の魔人とゴブリンの親玉であるイー。

 人間の言葉も分かる彼らを呼び出して、今回の件についての詳細を聞き、どうまとめるかを話し合うことにしたのだ。


「さて、集まったみたいだしこれから長会議的なものを始めようか」


「的なものとはどういうことだ?」


「ウム、オレモソレハキニナッタ」


「そんなことはどうでもいいから、早く始めましょ!」


 適当に言ったことなのに、妙に食いつくイルとイーを森の魔人が宥めることで、会議はスタートした。

 ありがとう森の魔人。


「んんっ!じゃあまずはイルとイーがなぜ同盟を組んだのか、そこから話してくれ」


「うむ、では灯らと別行動をした後から話をしよう」


「頼む」


 それからイルは、俺達と別行動をした後のことを語った。





 ――





 灯と合流したイルは、ようやく見つけたイーと一騎打ちをするため、彼を連れて別の場所へと移動した。


「ようやくそなたと戦う時が来たか」


「オレハオマエナンカニヨウハナイ」


「ふっ、そなたに無くとも我にはあるのだ。我とそなたは同族だからな」


「ドウイウコトダ?」


「……いいだろう。少し説明してやる」


 イルは自分と同じ存在であるイーを、自分自身の手で倒すために連れ出した。

 だが、イーはイルの話に興味があるようで、少し会話をすることとなった。


「20年前、我は人間の実験によって生み出された。その者達は我が既に始末したが、どういう訳か最近同じ実験が行われたらしくてな」


「ソレガオレタチトイウコトカ?」


「そうだ、そなたは人間に利用されているのだ」


 イルの話を聞いたイーは、下を向いて深く考え込みだした。

 その表情に変化は無いが、そのことからイルの話の内容を真剣に考えているのが伺える。

 イーの喋り方は片言で拙いが、それでも知能は通常のゴブリンよりも相当高いということだ。


「ダガオレハ、アルジヨリモリヲシハイスルヨウ、メイヲウケタ」


「そんなもの従っても意味は無いぞ。奴ら人間は利用できるものは全て利用し、いらなくなればすぐに捨てるような存在だからな」


「ソウナノカ……」


「ああ、実際に我と同じ実験を受けていた魔獣は何匹もいたが、皆簡単に捨てられていた」


「……」


 イルの話す内容に、最初は相槌を入れていたイーだったが、最後には何も喋らなくなりただイルの話を聞くだけになっていた。


「――と、まぁこんなものだ。これでそなたも人間がいかに悪か分かっただろう?」


「アア、ダイタイハナ……」


「そんな奴らに協力するより、我らには素晴らしい味方がおるのだぞ!」


 と、そこまで暗い雰囲気で話していたイルが、今度は真反対なほど明るいトーンで、別のことを話し出した。

 それは、灯のことである。


「灯は人間であるのに、我ら魔獣のことを親身になって考えてくれる素晴らしい者なのだ。そなたも先程まで合っていたのだから分かるだろう?」


「サッキタタカッテイタニンゲンカ。タシカニアイツハナゼカ、ミョウニシンライデキルオーラガアッタ」


「だろう!?そうなのだ。灯は魔獣である我らでもなぜか妙に心惹かれる存在なのだ!そなたもあんな変な騎士の味方をするより、我らと共に灯と協力する気はないか?」


「フム、ワルクナイナ」


 本来イーを一騎打ちで倒すために別行動をしたのに、気づけばなぜかイルはイーを仲間に勧誘していた。

 そしてその提案を受け、イー自身も意外なことに満更ではなかったのだ。


「ボオォー!」


 イルとイーが意気投合し同盟を結ぼうかと言う時に、森の茂みから別の魔獣が現れたのだ。

 それは森の魔人の側近として、他の植物型魔獣の指揮を執っていた切り株の魔獣であった。

 彼もまた影でイルの話を聞いていて、その内容に自分達も混ぜてくれと乗り込んできたのである。


「なんだ、そなたも我らの仲間に加わりたいのか?」


「ボオォ!」


 切り株の魔獣は人の言葉を話すことは出来ないが、イル達は魔獣なので魔獣の言葉も分かる。

 だから彼が、自分達も同盟を結びたいと言っているのが、すぐに分かったのだ。


「そうかそうか、そなたらも我らの仲間になりたいか……」


 イルは切り株の魔獣の提案を受け、しばしの沈黙の後ニヤリとした顔つきで口を開いた。


「よし、それならば我ら3種族で、迷いの森大連合を結成しようではないか!」


「ヨカロウ」


「ボオォー!」


 イルの言葉にイーと切り株の魔獣も即座に同意し、3者は掌を重ねた。

 これが、迷いの森大連合の結束した瞬間である。






 ――





「という訳だ灯。分かってもらえたか?」


「……ああ、まぁ、何となくは」


 イルの説明のおかげで、彼らが同盟を結んだ経緯はだいたい理解した。

 俺はイーと決着をつけるつけに行ったはずのイルが、3つの種族で同盟を結んで帰ってくるとは思っていなかったので、衝撃的ではあったが。


「あなた達も同盟に参加したのね」


「ボオォ」


 対して森の魔人は、切り株の魔獣を呼び出して何やら話をしていた。

 だが確かに彼らの親玉は森の魔人なのに、それを差し置いて切り株の魔獣が勝手に同盟を結んだのだから、彼女が怒っても無理はないだろう。


「へー、初めて灯を見た時から魅力的だったって?」


「ボ、ボオォ……」


 気のせいか、切り株の魔獣に言及する森の魔人の声音が、どんどんと重いものになっている。

 そしてそれに比例するように、切り株の魔獣は縮こまって、声も萎んでいた。

 やはり森の魔人は勝手なことをされて怒っているのだろう。


「ふーん、あんたも分かってるじゃない」


「ボ?」


「へ?」


 先程までの反応からして、森の魔人は切り株の魔獣を叱責するのかと思ったが、どうやら違ったようだ。

 彼女は若干ドヤ顔で、微笑みながら切り株の魔獣を褒めていた。

 その反応に切り株の魔獣も困惑している。

 俺もおもわず声が出てしまった。


「なかなかいい判断よ。流石は私の1番の椅子ね!」


「ボオォ!」


「椅子って……」


 切り株の魔獣を椅子呼ばわりしていることに引っかかったが、本人は嬉しそうな反応をしてるので気にしないでおこう。

 森の魔人も同盟には反対じゃないみたいなので安心した。


「それじゃあ同盟の件は良しとして、今回の争いについてはどう締めくくるんだ?だいぶ被害も出てるだろ」


 3者とも同盟に関して異議はないということで、話題は次へと移った。

 そう、それは今回の騒動の落とし所だ。

 全てジェリアンの仕組んだことだとしても、ゴブリン達はそれに加担し、少なくない被害が出ていることも事実だ。

 それに目を背けていては、今後も良好な関係を築けるとは思えない。

 だからそれについて3者に話を振った。


「安心してくれ、それについてはすでに結論は出ている」


「おぉ、そうなのか。どうなったんだ?」


 そこに関してはこれから話し合うのかと思ったが、もう答えは出ていると聞いて驚いた。

 彼らも立派に組織のボスということなのだろう。


「今回の争いは、人間の仕組んだこととはいえ、それにゴブリン達が加担したことは消えない。よって彼らの縄張りを半分献上することで手を打った」


「なるほどな、まぁ妥協案としてもその辺りが妥当だな」


「うむ、それでその縄張りは我ら昆虫型魔獣が貰い受けることとなった」


「え?全部イル達が貰うのか?」


「そうだ」


 俺はてっきり、ゴブリンから貰った縄張りは植物型魔獣と分け合うのかと思っていたので、イルが全部貰うと聞いて驚いた。

 だがイルは、そんな俺の疑問にも気づいていたようで、その理由も続けて話してくれた。


「今回の件を実質的に阻止しようと動いていたのは我らだけだった。そこを考慮してくれたのだ。それに今回の立役者である灯を仲間に引き込んだのは我らのらでもあるからな」


「そういうことなのか……。森の魔人はそれでいいのか?」


「私達はは元から縄張りなんて気にしてないし、別に問題ないわよ」


「まぁ両者が納得してるなら、もう何も言わないよ」


 森のことは、森で暮らす彼らが決めることだ。

 元々部外者である俺が口出しすることでもないし、彼らが納得してるならそれでいいのだろう。


「うむ!では、これにて全て解決だな!」


「アア、ミナニハメイワクヲカケタ。コレカラハヨロシクタノム」‬‬‬


「私も長年の恨みを晴らせたし、スッキリしたわ!」


「どうにか丸く納まって安心したよ」


 こうして最後には皆で笑い合い、迷いの森での騒動は幕を閉じた。


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