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2章 15. 魔人と魔人の戦い

 切り株の魔獣の上で、偉そうに俺たちを見下ろすのは森の魔人。

 ここまで連れてきたのは彼女だろうが、その目的はなんだろうか。

 狙いはわからないが、協力を頼んでも了承してくれるかは微妙だな。


「何で俺達をこんな所まで連れてきたんだ?」


「ん?誰よあんた?私はそっちの奴に用があるのよ!」


「えぇ……、どういうこと?」


 ここに連れてきたのはそっちのはずだし、狙いも完全に俺だったのに、用があるのはドロシーにらしい。

 森の魔人の狙いが全く分からなくて混乱していると、切り株の魔獣が動いた。


「グボォォー」


「何よ、あんたが連れてきたの?どういうことよ……」


 切り株の魔獣が何を言っているのかは分からないが、森の魔人は会話ができるらしく、なにやら話しだした。


「グボボ」


「はぁ?気に入った?それで勝手なことした訳?」


「グボォ……」


「ったく、とりあえずあんたの説教は後回しね。今は泥の魔人よ」


 森の魔人はしばらくの間切り株の魔獣と言い合いをしていたが、最終的に切り株の魔獣が押し黙ることで決着が着いた。

 そしてドロシーの方を向き、泥の魔人と言った。そのことを知っているの人は少ない。

 ということはやはり、彼女達は魔人同士知り合いなのだろう。


「おいドロシー、やっぱり狙いはお前らしいぞ。知り合いなのか?」


「さぁ」


「さぁって……、どうせ忘れてるだけなんだろ?頑張って思い出せよ」


「うーん、無理」


「やっぱダメか」


 そんな風にドロシーと話していると、いつの間にか森の魔人は切り株の魔獣から降りていて、ドロシーの前まで来ていた。


「久しぶりね、泥の魔人」


「あなたなんて知らない」


 突然話しかけられて、ドロシーは眉をひそめながら応えた。

 この反応に森の魔人も一瞬目を見開いて驚いたが、ある程度予想していたのか、すぐに気味の悪い笑顔になった。


「まぁ馬鹿なあんたが覚えてるわけないわね。まあいいわ。ようやく先日の続きが出来るんだもの」


「何のこと?」


「あら、ほんの数日前のことまで忘れちゃったの?ほんとに馬鹿ね。この前森に迷い込んできたあんた達を襲ったことまで忘れてるなんて」


「?」


 森の魔人は事ある毎にドロシーを小馬鹿にしながら話している。

 その態度は少し頭にくるが、まぁドロシー自身が馬鹿なのは否定しようもないので仕方ない。

 それよりも気になるのは、森の魔人が先日襲ったと言っていることだ。

 話の内容からして、恐らくドロシー達が初日森に迷った時のことを言っているんだろう。

 となるとあれを仕組んだのは、この森の魔人という訳だ。


「おい、この前ドロシー達を襲ったのはお前らなのか?」


「ドロシーって誰のこと言ってるのよ?」


「え?あ、そうか、ドロシーはニックネームだったな。ドロシーってのはそこの泥の魔人のことだよ」


「ニッ!?う、うらやましい〜。はっ!違う違う、そうじゃなくて……。ええそうよ!そこの泥の魔人を襲ったのは私達よ!」


 ニックネームと聞いて、森の魔人はなぜか一瞬取り乱したように発狂したがすぐに正気に戻った。


「やっぱお前らの仕業だったのか。何が目的だよ?」


「ふん、あなたには関係ないでしょ!なによ、人間の分際でニックネームなんか付けちゃって。ダサいのよ!」


「なっ、ニックネームは関係無いだろうが!」


 俺は名前を付けると大概マリスとかに笑われてしまうから気にしていたのに、面と向かってダサいと言われるとさすがに腹が立つ。


「この間だって変な邪魔が入らなかったら仕留められたのに……。今日はあの時の借りをきっちり返してあげるわ!」


 変な邪魔と言えば、俺とティシャさん達で突撃して救出した時のことを言ってるのだろう。


「さぁ泥の魔人、私と勝負しなさい!」


 森の魔人はドロシーを指さして一騎打ちを申し込んできた。


「ご主人様、どうする?」


「戦わないと話すら聞いてもらえなさそうだな。ドロシーやってくれるか?」


「分かった」


 ドロシーに戦闘を任せると、彼女は嬉しそうに薄く笑って、森の魔人の前に立った。

 こうして泥の魔人と森の魔人、魔人と魔人の戦いが幕を開けたのだった。


「覚悟しなさい、今度こそきっちり仕留めてあげるわ!」


 森の魔人は自身の腕を枝に変えてスルスルと伸ばして鞭のように振るってきた。


「ふん」


 対してドロシーは、腕を泥の鎌に変化させて迫り来る枝をバッサバッサと切り飛ばし距離を詰める。


「むぅ、やるわね。ならこれならどう!」


 枝の鞭では分が悪いと判断したのか、森の魔人は即座に戦法を変えた。

 両手を空に掲げ腕を伸ばすと、それは上空で巨大な丸太となってドロシーに落石のように降り注いできた。


「よっと」


 しかしそれに対しても、ドロシーは顔色1つ変えることなく、片腕を泥のハンマーへと変えて対処した。


「うおっ!」


 丸太と泥のハンマーが衝突し、周囲には強い衝撃が走り、俺は軽々と吹き飛ばされてしまった。


「お、ごめんご主人様。大丈夫?」


「ああ、大丈夫だから戦闘を続けてろ!」


 森の茂みがクッションとなってくれたお陰で、大した怪我をすることも無く俺は立ち上がれた。

 この場にいるとまた巻き添えを喰らいそうなので、少し遠くへと離れる。


「あんな弱っちい男を主人にしてるの?やっぱりあんたは大馬鹿ね!」


「むぅ、ご主人様を悪く言うな」


 俺の姿を見た森の魔人が挑発混じりにドロシーに丸太の腕を何度も振り下ろす。

 ドロシーはそれを何度もハンマーで打ち返すが、俺のことを馬鹿にされたので少し怒っている。

 自分が馬鹿にされても怒らないのに、俺が馬鹿にさせると怒るとは、意外と主人思いな奴だったんだな。


「てやっ!」


 ドロシーはハンマーで丸太を弾きつつ、さらに片方の腕で森の魔人目掛け泥弾を連射しだした。


「甘いわ!」


 しかし森の魔人は、強く地面を踏みつけそこから木の根が合わさった壁を作ることで、泥弾を防いだ。


 丸太の連撃を防ぎながら、泥弾を連射するドロシー。

 根の壁で泥弾を防ぎながら、丸太で攻める森の魔人。

 どちらも1歩も引かない、一進一退の攻防が続く。


「ぐぅ、もうしつこいわね!」


「そっちこそ」


 お互い攻める決め手が見つからず、だんだんと膠着してきた。

 このまま双方攻め手を失い戦闘も終われば良いのだが、魔人にはもう1つの姿があることを知っているから、嫌な予感がする。


「こうなったら、本気でいくわよ!」


「ん、私も」


 2人の魔人は、同時に攻撃の手を止めると、体を膨れ上がらせた。

 ぶくぶくと泥が全身を多い、若干丸い巨大な力士のような格好となったドロシー。

 大木を纏うように背を伸ばし、スラリとした細身ながら、全身わ高密度の木が絡みつき、ギシギシと音を鳴らす森の魔人。


 巨大化し、魔人としての本領を発揮した両者を止められるものはもう誰もいない。

 気づけば森の魔人の仲間の魔獣も、辺りから姿を消していた。

 俺も逃げた方がいいだろうかなんて考えていると、遂に戦闘が再開された。


「はあぁ!」


「ふん!」


 両者は同時に拳を突き出し、激しくぶつかり合った。

 その衝撃は凄まじく、ぶつかった反動で泥や枝が飛び散ってきた。


 森の魔人はその勢いのまま、もう一方の腕を極太の鞭のようにしならせながら、フックの要領で殴りかかった。

 巨大化したせいで機動力が落ちたのか、ドロシーはその攻撃をもろに受けてしまう。


「はっ、でかいだけで当てやすくなったわ!」


 しかし、耐久力は上がっているようで、多少よろけつつもすぐさま反撃した。


「それはお互い様、っでしょ!」


 ドロシーの拳が森の魔人の腹にきまると、そこからガトリングの様に泥弾を連射して追い打ちをかける。


「ぬうぅー!負けるもんか!」


 泥弾の連射にたじろぐ森の魔人だが、すぐさま反撃にでる。

 両足から伸びた根がドロシーの両サイドから波のように襲い掛かる。


「むっ!」


 ドロシーは慌てて両手を根の波に向けて、即座に泥の壁を形成することでこれを防いだ。

 しかし、そのせいでドロシーの正面ががら空きになってしまった。

 この隙を森の魔人が逃すはずも無い。


「もらったわ!」


 森の魔人は両腕を拗らせて、ドリルのように鋭く伸ばし、ドロシー目掛け突き出した。

 ドロシーは両腕が塞がっており防ぐ術はない。

 絶体絶命だ。


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