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1章 26. 私は怪力キャラじゃないわよ!

 洞窟内の湖では、アマネと黄ラインの男が激しく火花を散らしていた。


「なかなかしぶといわね」

 

 アマネの軽快さと槍の速さを持ってしても、黄ラインの男には致命傷を与えることが出来なかった。

 黄ラインの男は、雷魔法で自身の身体機能を向上させ、常人ではありえないスピードで、洞窟内を駆け回っている。

 縦横無尽に動き回るせいで、なかなかアマネの攻撃も当たらなかった。


「おいおい随分と遅いなー!取り柄はさっきの怪力だけかぁ?」


「なっ!私は怪力キャラじゃないわよ!変な事言わないで!」

 

 アマネは黄ラインの男の言葉に惑わされ、顔を赤くさせながら槍を放った。

 しかし僅かに生まれた焦りのせいでさらに攻撃を外し、壁に槍を突っ込んでしまった。


「あ……」

 

 アマネの一撃は洞窟の岩盤ををいとも容易く貫き、壁を粉砕した。


「やっぱ怪力キャラじゃん」

 

 黄ラインの男は若干呆れ気味に肩を竦めていた。


「もう!絶対許さない!」

 

 アマネは目に闘志を滾らせ、この男だけは逃がさないという獣の瞳で黄ラインの男を睨みつける。


「おー怖、それじゃそろそろ決めちゃうぜ!クリエイトサンダーウルフ!」

 

 黄ラインの男は両腕から雷を放出し、狼を型どった召喚獣を呼び出した。


「アォーン!」


 狼の遠吠えのような鳴き声をあげると、口から電気がバチバチと鳴った。

 サンダーウルフはバチバチと全身の電気を迸りながら、アマネに向かって高速で移動した。

 アマネは咄嗟に飛び跳ねて避けるが、サンダーウルフはの動きはそれを上回る速さで、追いつき前足で叩き落されてしまった。


「んん、ぐっ……、こいつ、強い!」

 

 サンダーウルフは全身雷で出来ている。触れるだけでも感電してしまうというのに、その上物理攻撃まで上乗せしてくる。

 アマネは地面に叩きつけられた体を起こすも、かなりの深手を負い窮地に立たされた。


「これでトドメだ!」

 

 黄ラインの男は、両手に纏った雷の剣でトドメを刺そうと動いた。


「はっ!」


 しかしアマネは槍を棒高跳びの様に使い、高く飛び上がることでなんとか回避した。


「何、まだあんな力が!?」

 

 鎧に魔力を流し身体能力を上げたアマネは、飛び上がった勢いのまま天井まで届くと、逆さまになり足を天井につけた。


「まずはあのサンダーウルフを」

 

 アマネはビリヤードの様にサンダーウルフに狙いをつけると、天井を強く蹴り矢の如き速さで、サンダーウルフを一直線に貫いた。


「ガルゥ!?」


 アマネの閃光の如き速さに反応出来なかったサンダーウルフは、無防備のままアマネの攻撃を受けてしまう。

 更にサンダーウルフを貫く直前、槍を高速で何度も突き、跡形も無く消し飛ばした。


「う、嘘だろ、サンダーウルフが一瞬でやられただと!?」


 アマネの突きはあまりにも速い。

 いくら高度な魔法を使えるハンターの幹部であろうと、槍術に関して素人のこの男ではたった一突きしかしたようには見えなかっただろう。


「次はあなたよ」

 

 アマネの動きはまだ止まらない。サンダーウルフを倒した勢いのまま駆けつつ、アマネは黄ラインの男に狙いをつけた。


 だが……。


「狙い撃ちはさせねえよ、結局お前の速さじゃ俺には足りない!走り回ってりゃ俺を捕えられねえんだからよ!」

 

 黄ラインの男は宣言通り、床を駆け、壁を蹴り、湖を跳ねた。

 全身に纏った雷の影響もあり、光の軌道を残しながらも高速で移動し、アマネに狙いを定めさせようとしなかった。

 

 だがアマネはそれでも構えを変えず、ぶれることなく一点に狙いを絞り続けた。

 全てを見抜いているかの如き鋭い眼光で。


「もうその動きは見切ってるわ」


「へぇー、なら狙い撃ちしてみろよ!」

 

 黄ラインの男は挑発に乗せられ、いくつかのフェイントを混ぜつつアマネの背後に回ると、2本の雷剣を突き出した。


 しかし黄ラインの男は空中で突然動きを止め、2本の雷剣はアマネには届かなかった。


「な、なぜ届かな……、ごふっ!」

 

 黄ラインの男は訳も分からないまま血反吐を吐き、地面に崩れ落ちた。


「長柄槍起動『伸槍鋭突』」

 

 倒れ伏す黄ラインの男を背に、アマネは小さな声でそう告げた。

 

 長柄槍の必殺技は「伸槍鋭突」。これは、槍の刃のみを自在に伸ばすことが出来る必殺技。

 その長さは最長100mで騎士団の扱う武器では最長の長さを誇るトップクラスの遠距離物理攻撃だ。

 しかもこの必殺技の最大の利点は、その長さではなく、伸ばした刃を自由自在に曲げ敵をどこまでも追従する機動性なのだ。


 黄ラインの男が裏をとったと思わせたのは全て作戦の内。

 槍の機動性を生かし、逆にアマネがその背後に変幻自在の槍を回り込ませ、刺したことになる。

 どんなにどんなに身体機能を上げてもアマネにとっては意味は無い。

 それを圧倒的に上回る突きの速度と、相手の動きを見切る観察眼を持つアマネを相手に、速さ勝負など元から無駄だったのだ。


 アマネは怪力とは正反対の、繊細で正確な攻撃が得意な中距離班班長なのだから。


「ぐっ、槍がそんな動きをするなんて思わなかった……」


「言ったでしょ、私は怪力キャラじゃないのよ!」

 

 怪力キャラと言われたことは若干気にしている。

 だが、今はそんなことに構っている暇はない。アマネは黄ラインの男を止血し、縄で体を縛りあげ、動きを拘束させた。


「さあ!クウちゃんの居場所を吐きなさい!」


「うぅ、くそ……」


 胸ぐらを掴まれ、鬼の形相で睨みつけられた黄ラインの男は、微かな怯えの色を見せながらクウの居場所を白状した。


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