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1章 22.ゴーレムは頭が弱点

 マリスに白いラインの男は任せ、俺とマイラはゴーレムと対立した。


「ゴオォォォ!!」

 

 俺とマイラを前にし、ゴーレムは低い唸り声と共に突進してきた。

 巨体のせいで歩幅が広く、このままでは一気に距離を詰められてしまうのだが。


「甘いな、ただの突進じゃ俺達は倒せないぜ。マイラ、燃やし尽くせ!」


「ガウッ!」

 

 前方に迫るゴーレム目掛け、マイラは勢いよく真紅の炎を吐き出した。

 マイラの超高温の火炎放射を正面で受けたゴーレムは、熱さで全身を真っ赤に熱されて、動きを止めた。

 

 ゴーレムは両腕を盾代わりにし炎を防ごうとするが、マイラの炎は腕など関係なく全身を覆い焼いた。

 ついに立てなくなったのか、ゴーレムは両膝から崩れ地面に手をついた。


「よし、そろそろ終わりか」

 

 炎に動きを鈍らせるゴーレムを見て、俺が勝利を確信した。

 しかしそう簡単にはいかない。

 ゴーレムは両手を地面に突っ込み、そのままちゃぶ台返しの勢いで地面を引っくり返したのだ。

 返された地面はそのまま壁となりマイラの炎を防いだ。これでは流石のマイラの炎も届きそうにない。


「ガウゥ……」

 

 炎が届かないと悟ったのかマイラは炎を吐くのをやめ、どうしたらいいのか分からない様子で、困ったように鳴き声をあげた。


「ゴオォォォ!!!」

 

 対してゴーレムは、炎が止まったことでチャンスとばかりに、目の前の岩の壁に何発もストレートを放った。

 ストレートを打つ度に岩の破壊される音が轟き、ビキビキとひびが広がっていった。


「まずい!マイラ、一旦森に逃げるぞ!」


「ガ、ガウ!」

 

 俺とマイラが森に入るのと同時に、岩の壁は完全に崩壊した。

 崩れる音と共に先程まで立っていた場所に、無数の岩の礫が弾丸のように弾け飛んでいく。


「あっぶねー、あと数秒あそこにいたら俺達死んでたな」


「ガゥ……」

 

 マイラはこの惨状に目に見えて萎縮しまった。


「元気出せよ、反撃はこれからだぞ。マイラが本気を出せばあんな奴一瞬で倒せるさ」


「ガウ!」

 

 俺が励ますとマイラも少し元気を取り戻し、ゴーレムを睨みつけ隙を伺いだした。

 まだまだ戦闘意欲は有り余ってるようだ。

 さて、あのゴーレムをどう倒すかだが、炎がダメとなると後は毒で攻めるしかない。

 だが、それだと至近距離まで迫らないと当たらない。

 何とか隙を作るには……。


「マイラ、俺が囮になってゴーレムを引きつける。その隙にあいつを毒で溶すんだ。出来そうか?」


「ガウ!」

 

 マイラは任せろと言わんばかりに頷き、尻尾に力を込めて早速意識を集中し始めた。


「ゴオォォ」

 

 ゴーレムはまだ熱のダメージがあるのか、これまでの俊敏さは無くなり、動きが鈍くなっていた。

 森へ逃げた俺達を追おうと、ゆっくりと森に体を向けたところで俺は森を飛び出した。

 ゴーレムは急に俺が出てきて方向転換が間に合わず、バランスを崩して動きを止めた。

 この隙に俺はゴーレムの背後を走り、洞窟のあった崖際まで来た。


「ゴオォォォ!!!」

 

 ゴーレムは動きこそ遅くなったが、歩幅の大きさを生かし、俺までの距離を一気に詰めて渾身のストレートを放ってきた。

 だが、初めからこの動きを読んでいた俺は崖際で止まることなく、壁を蹴ってあえてゴーレムに向かって行った。

 ゴーレムのストレートの勢いはトラックが正面から向かって来るかのような迫力だった。

 だが俺は臆することなく進み、壁蹴りでの加速と最後にスライディングをいれることで、ストレートの下を潜りそのままゴーレムの股下を通り抜けた。

 ゴーレムは空振りのストレートをそのまま崖に叩き込み、完全に動きが止まった。


「ふぅ、ギリギリだったな。今だマイラ!」


「ガウゥ!」

 

 俺がゴーレムの相手をしている間に、マイラはヤギの足を生かして崖を駆け上がり、既にゴーレムの真上まで飛んでいた。

 そのままマイラはゴーレムの頭に尻尾の蛇を伸ばし、毒牙で噛み付いた。

 するとゴーレムの体は白い蒸気を上げながら、噛まれた頭を中心にみるみるうちに溶けだした。


「ゴオォォ……」

 

 溶けて頭を失ったゴーレムは崩れ落ちていき、やがて岩だけの残骸となった。

 俺のの世界での戦闘で、ゴーレムは頭が弱点だということは分かっていた。だからこそ出来た戦法だ。


「ゴーレムの倒し方なら既に知ってるんだよ。やったなマイラ!」


「ガウー!」

 

 マイラは猛ダッシュで俺の胸に飛び込み、肩を甘噛みしてきた。

 俺は、1番の功労者であるマイラの頭や顎の下を撫でて褒めちぎった。


「よしよし、良くやったぞマイラ!さて、マリスの方はどうなったかな?」


 ゴーレムとの戦闘に無事勝利した俺は、マイラをがしがしと撫でつつ、マリスと白ラインの男との戦闘に目を向けた。






 ――






 俺とマイラがゴーレムと激闘を広げる隣で、マリスと白ラインの男の戦闘も激しさを増していた。


「おらおらどうしたぁ!?騎士の力はこんなもんかぁ!?」

 

 白ラインの男は岩の槍を次々と地面から突き出させ、気が付くと辺りは足場もないほどの剣山となっていた。

 次々と足元から突き出してくる岩の槍を相手に、マリスは剣と盾を駆使してなんとか防ぎきっている状態だ。


「剣1本で何が出来るって言うんだおらぁ!」

 

 止まない岩の槍の嵐に防戦一方のマリスだが、彼の目は曇ること無くただ一点のみを見つめていた。

 マリスは腰の投擲用ダガーを起動し、岩と岩の間を縫うように、白ラインの男目掛けて一直線に飛ばした。

 だが、ダガーは白ラインの男の目の前で、岩の槍を突き出され阻まれた。


「こんな、チンケなナイフ1本で俺をやれると思ったのか?騎士と言ってもまだまだガキだな」

 

 白ラインの男は、マリスが防戦一方で反撃も遠距離からダガーを飛ばすことしか出来ないと思ったのか、大笑いで小馬鹿にした。


「いや、そのダガーはお前の攻撃を一瞬止める為に投げただけだ」

 

 しかしこれはマリスの作戦だった。

 マリスは、白ラインの男が一瞬守りにはいった隙に、本来片手用の剣を両手持ちの正眼の構えに変えた。

 マリスの類まれなる剣の才能は、片手剣と両手剣の両方の剣術を自在に使いこなす。

 騎士団に入団したマリスには、その剣の才能が認められ特注で剣が造られた。


 本来騎士団の扱う剣は盾と併用するために、片手剣サイズに設計されているが、マリスに与えられた剣は違う。

 剣を片手で持った時は一般の騎士達と同じ片手剣サイズだが、両手で剣を持った時だけ刀身が伸び、刃も分厚くなり両手剣仕様へと変化する。


 本来騎士団の武器には、それぞれの武器に1つだけ、魔力を一定量込めることで発動する必殺技がある。

 だが、変形による2つの型を持つマリスの剣にだけ、必殺技が2つ備わるという特別な剣となったのだ。


「バカが、こんな一瞬は止まったうちに入らねえよ!」

 

 白ラインの男は、足を止めたマリスの真下に岩の槍を突き出した。だが元々狙っていた間だけに、マリスの剣の方が1歩動き出しが速かった。


「両手剣起動!『長刃斬撃』」

 

 マリスの掛け声に呼応し、一時的に魔力で出来た刀身が両手剣時の3倍ほどの長さに伸びた。

 3倍に伸びた両手剣を豪快に上段切りすると、足下から出てきている槍ごと、地面に広がった岩の の槍を一直線に一刀両断した。

 両手剣が地面に叩きつさられた衝撃で、周囲に広がる岩の槍も全て薙ぎ倒す。


「トドメだ!」


 マリスは鎧を起動し、更地になった地面を高速で駆けた。


「くっ、クソガキが!アースシールド!」

 

 白ラインの男はマリスの突進を防ぐ為、咄嗟に目の前に巨大な岩の壁を作り出した。

 しかし、マリスには壁1枚などなんの障害でも無かった。

 マリスは剣を片手に持ち替え、片手剣用の必殺技を起動させた。


「甘いな、片手剣起動『鋭刃斬撃』」


 片手剣用の必殺技は切れ味の向上。

 通常の騎士の剣は岩なら数回剣を振るえば何とか砕き斬れる程度の斬れ味だ。

 だが、必殺技を起動させた切れ味はダイアをも一撃で真っ二つにしてしまう程の斬れ味を誇る。


「せえぇいやぁ!」

 

 マリスは高速移動の勢いのまま、岩の壁目掛けて高速の突きを繰り出し、岩の壁ごと白ラインの男の腹を貫いた。


「ぐっ、ぐふぁっ!」

 

 マリスの剣によって腹を貫かれた白ラインの男は、血反吐を吐き腹を抑えながら地面に倒れ伏した。


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