1章 21.ゴーレムと3回戦目といこうか
部屋に戻った俺達はクウの事について、マイラとプルムに話した。
「――で、クウはハンターに攫われたんだ。すまない、俺がこんなに不甲斐ないとマイラとプルム不安だろう」
「ガウゥ!」
「!」
最後まで静かに聞いていたマイラは、俺の膝の上に乗り体を寄せて来た。
プルムも足に擦り寄ってぷるぷると震えてる。2匹とも俺に元気を出させようとしてくれてるのか、ありがとう。
「ありがとうなマイラ、プルム。お前達にはいつも励まされてばっかりだよ」
「ガウガウ!」
しかしマイラはまだ吠えやまず、何かを伝えようとしている。励ましてる訳じゃないようだ。
するとマイラは突然床に飛び降り、体を大きく揺さぶりだした。
「お、おいマイラ急にどうしたんだよ?」
暫く体を揺さぶると、体からポロリと何かが落ちた。
「何だこれ?」
マイラの体から落ちた何かを拾って見てみると、それはスライムの欠片の様なものだった。
「!」
今度はプルムがぷるぷると震えて何かを訴えようとしている。
「マイラに付いてたこれプルムが付けたのか?」
「ガウ!」
マイラにスライムの欠片を蛇の口で取られ、そして突然マイラは窓から外へ飛び出して行ってしまった。
「ちょ、どこ行くんだよ!」
「!」
するとプルムがぷるぷると震え、触手のように身体を伸ばして俺の手を引いてきた。
「なんだよ、ついて来いって言うのか?」
「!」
プルムはぷるぷると震え、触手からその震えが伝わってきた。
「分かったよ、行けばいいんだろ」
プルムに手を引かれついて行った先は、街の外れにある民家の間にある空き地だった。
「こんな所で何をする……え!マイラ?ここに居たのか!?」
「ガウ!」
マイラは俺を見つけると勢いよく駆けて来て、飛び付いてきた。
ブンブンと振り回す尻尾にはスライムの欠片が咥えられていた。
「一体どういう事だ?マイラもプルムも常に俺と一緒にいたから、こんな所知らないはずなのになぜプルムはマイラの場所が分かったんだ?」
「!」
俺の疑問に対しプルムはぷるぷると震わせながら触手でマイラの尻尾の咥えているスライムの欠片を吸収した。
その様子を見て俺はようやく気が付いた。
プルムのスライムの欠片は、発信機のようになっていて、それがどこに行っても場所が分かってしまうんじゃないだろうか?
「プルム、その欠片はどこに行っても場所がわかるのか?」
「!」
プルムはぷるぷると震えて頷いた。
「ま、まさかその欠片をすでにクウに付けてるのか!?」
「!」
プルムの答えは、ぷるぷると震えて肯定であった。
「そ、そうか!クウにも付けていたのか!よくやったぞプルム、これでクウの居場所が分かる!」
だがプルムはまだぷるぷる震えており、俺はその震えの中に何か焦りを感じた。
プルムの焦りに疑問を持っていると、俺の腰の辺りからもスライムの欠片が落ちた。
「なんだプルム、俺にも欠片を付けてたのか。用意がいいな」
「!」
プルムはぷるぷる震え、落ちた欠片を見ろと言わんばかりに、欠片の前で触手を振り回していた。
するとスライムの欠片が徐々に溶けて小さくなっている事に気がついた。
スライムの欠片は最後には溶けきってそこには何も残らなかった。
「これってまさか、この欠片には時間制限があるって事なのか?」
「!」
プルムは弱々しくもぷるぷると震え頷いた。
「俺に付いてたのが消えたってことは、もしクウにこの欠片を付けてあったとしても、それももうすぐ消えるってことか!?」
「!」
プルムはさらに小刻みにぷるぷると震えたが、頷いていた。
どうやらスライム欠片には時間制限があるらしく、クウに付けている欠片ももうすぐ消えてしまうらしい。
「プルム!この欠片俺とクウに付けたのにはどれくらいの時間差があったんだ!?」
「!」
プルムはぷるぷると震えて何かを表現しようとしているが、焦っている事が分かるだけで、正確な時間が分からない。
こういう時に言葉で意思疎通が出来ないことを悔やんだが、今はそれどころではない。
「分かった!なら欠片を頼りに今すぐクウの後を追うぞ!例え辿り着く前に溶けきったとしても、足取りが分かるだけでも充分手がかりになる筈だ!」
俺はそう言うとマイラとプルムを両脇に抱え門まで走り出した。
「せめてライノさん達にこの事を伝えたいが……、そうだ!プルム、1匹だけ分裂して何とか騎士団に動いてもらえるよう、アマネを説得してくれ」
なぜアマネかって?そんなのあの魔獣バカなら、プルムの気持ちも理解してくれると信じてるからさ。
「騎士団まで送る時間はないから、なるべく人に見られないよう慎重に動くんだぞ!」
「!」
分裂したプルムはいつもより激しくぷるぷると震えていて強い意志を感じた。プルムは脇から抜け、そのまま騎士団のある方面まで向かった。
俺達は空き地からひたすら走り続け、ようやく門まで辿り着いた。ここからはプルムに触手で進行方向を示してもらいながら進む。
しかし門を出ようとしたところで、とある声に呼び止められた。
「あれ?灯君こんなところで何してるのさ?」
「マ、マリス!」
偶然とはいえ騎士団の精鋭であるマリスに出会えたのは運が良かった。俺は急いでマリスにプルムの事について説明した。
「なるほど、そういうことなら急いだ方が良さそうだね。本部にはプルムの分裂体も向かってるらしいし、それなら僕らだけで竜の蹄の隠れ家を見つけ出しておいた方がいい!」
「助かるよマリス!」
「ああ、僕もこれから門の外を捜索に行く所だったからちょうど馬もいる。さあ、早く乗って!」
俺はマイラとプルムにモンスターボックスに戻ってもらい、マリスに引き上げてもらい馬に乗り駆け出した。
モンスターボックスに戻す前に、道案内ようにプルムに小型に分裂してもらい、俺の服の中に忍び込ませた。
道の指示は服の間から触手を伸ばして方向を示してもらっている。
こうして俺は、プルムのおかげでクウの行方を探る手がかりを手に入れ、マリスと共に森を駆け出した。
「ところで灯君、まだ本部では街中の捜索が続いているのにどうして門の外に「竜の蹄」がいるって思ったの?」
馬で移動中マリスがそんな事を聞いてきた。
「そりゃ、街中に隠れ家なんてあったら何日も騎士団の目を掻い潜るなんて不可能だからな。大体あいつらの実力ならこの街の周辺に隠れ家を作ったって何の危険もないだろ。むしろ魔獣を狩るにはうってつけだ。てか、そんなことマリスだって分かってるだろうが、わざわざ1人で門の外に捜索に行くんだからよ」
「ふふ、やっぱ灯君は面白いね。一緒に居ると飽きないや」
「おい、楽しんでるんじゃねーぞ。これから「竜の蹄」と戦闘があるかもしれないってのに……」
「分かってるよ。あ、そろそろ小川が見えてくるよ」
マリスと馬を駆けていくと、初めてプルムと出会った小川に辿り着いた。プルムの触手はこの小川の上流を示していた。
「どうやらこの川の上流に奴らの隠れ家があるみたいだな」
「そうみたいだね、ここからは気を引き締めていくよ。罠や待ち伏せに注意して」
「ああ」
俺達は馬を降り、ここから先は警戒して慎重に進む。
川からは少し離れた森の中を川に並行に俺達は進んだ。
木の陰や茂みの裏など注意深く観察しながら進み、やがて俺達は高さ10mは優に超える巨大な崖の前に出た。
「行き止まりか?」
「いや、この崖うっすらとだけど魔力の痕跡がある。恐らくどこかに洞窟があってそれを魔法で隠してるんだ」
どうやらマリスは魔力の痕跡が見れるらしい。
なんでかは知らないが今はそんなことを気にしている暇はない。
「分かった!それならプルムに洞窟の入口を探させるか」
モンスターボックスからプルムを出し、17匹に分裂させて崖を隅々まで探させた。
クウの持っている欠片が強く反応する場所が、洞窟の入口の筈だ。
「!」
右端を探索していたプルムがぷるぷると震え出した。どうやら洞窟の入口を見つけたようだ。
「マリス、あそこだ!」
「分かった、あとは任せて!」
俺は素早くプルムをモンスターボックスに戻し、マリスはプルムの見つけた入口目掛け、居合切りを放った。
マリスの放った居合切りは、崖を真横に切り裂いた。
本来なら切り口から岩が崩れ落ちていき岩雪崩を起こす筈だが、マリスの斬った崖は切り口を中心に歪み弾け飛んだ。
そしてその後に見えたのは、洞窟の入口だった。
「入口が出てきた!」
「上手くいったな」
俺はマリスの元へ駆け寄り早速中へ入ろうとしたが、入口を見つけた途端崖の上からパラパラと石が落ちてきた。
「やれ、ゴーレム!」
聞き覚えのある声が崖の上から聞こえ上を見ると、なんと真上からゴーレムが降ってきていた。
「やばっ!」
「灯君!」
マリスは突然に鎧を起動させ、俺ごを押し倒すように真横に飛び退いた。
「ちっ!上手く避けたか」
「危なかった、灯君も大丈夫?」
「あ、ああ、助かったよマリス。で、またお前か」
俺は崖の上から歯をむき出しにして、睨みつけてくる白ラインの男に目をやった。
「忌々しいクソガキめ!貴様のせいで幹部まで上り詰めた私も、今では足でまとい扱いをされるハメになったんだ。終いにはこの私を門番として使うなど許せん!お前達は八つ裂きにしてやる!」
白ラインの男は崖から飛び降りると同時に爆発魔法を連発してきた。
「あの男とは色々因縁があるが、ここは適材適所だな。ゴーレムは俺が相手をする!マリスはあいつの相手を頼む!」
「任せて、あんなやつすぐに僕が断ち切ってみせる!」
マリスは左小手のシールドを展開しつつ爆発の中に飛び上がった。
「さて、俺達はゴーレムと3回戦目といこうか。いくぞマイラ!」
俺はモンスターボックスを前に掲げた。モンスターボックスは薄紫の光を放ち、扉が開きマイラが姿を表した。
「ガルルッ!」
マイラはこれが初の実戦だが、臆することも無くやる気満々だ。




