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1章 16.アマネ程じゃないだろ

 足元に一通りスライムが集まったのを確認すると、俺は首から下げているモンスターボックスに触れた。


「じゃあまずはクウとマイラを紹介するかな。出て来い!」

 

 モンスターボックスを前に掲げると、眩い光と共にクウとマイラが現れた。

 

 しかしスライム達はいきなりの登場に驚き、また岩陰に隠れてしまった。


「うーん、この臆病過ぎる性格はなんとかしないとかなー。おーい、スライム君たちー、怖くないから出てきてよー」

 

 呼びかけるとおどおどとした様子だが、少しずつ出てきた。


「よし、皆出てきたな。まずは自己紹介からかな。俺は竜胆 灯だよろしく。そしてこの白いドラゴンがクウで、こっちがキマイラのマイラだ」

 

 スライム達は一斉にぷるぷると震えだした。スライムは言葉が喋れないようで、これが了解の合図なんだろう。


「それじゃあスライムの皆も、この中に入ってくれ」

 

 そう言って首にかかっているモンスターボックスを前に掲げると、スライムたちは一切の抵抗なく次々と吸い込まれていった。

 一瞬にして全てのスライムがモンスターボックスの中に入った後は、足元がスッキリとした。

 スライムは顔もなく意思疎通は難しいのだが、これでひとまず好かれているということは分かった。

 モンスターボックスに入ったということは、俺を気に入っている何よりの証拠だからな。


「ほんとに凄いなこれ。18匹もいたのに余裕で収まったよ。いや、もっと凄いのはこの体質か、まさかスライムにまで好かれるとは思わなかった」

 

 ともかくこれで新しく仲間も増えたので、本格的に次のことが出来る。


「やっぱ、魔獣だけひたすら集めてもチームワークができてなきゃ意味無いからな。出て来いスライム!」

 

 モンスターボックスを前に構え、スライムを呼び出すと無数の光が溢れてスライム達が現れた。

 ようやく準備が整ったので、これからもう1つの目的をする。


「よし、全員揃ったな。これからお前達の連携力を鍛える!実戦は恐らくすぐ来るだろうから充分に備えておくぞ!」


  魔獣達は、一斉に返事をしてくれた。クウやマイラもいつになく真剣な表情だし、これならいい連携が取れそうな気がする。


「まずスライム半分とクウは川の方へ来てくれ。スライム達のジャンプ力を生かして、クウのワープ魔法の精度を上げるのを手伝ってもらう」


 そう言って俺は、クウとスライム9匹を引き連れて川岸までやってきた。


「いいか、クウは対岸から向かってくるスライム達を上手くワープホールで受け止めて、飛んでるスライムと跳ねさせるんだ。それを繰り返してスライムを川に落とさないようにしていけ。だんだん速度を上げてお手玉のように出来きたら成功だ。やれるか?」


「クァッ!」


「!」

 

 よし、クウもスライムもやる気十分だ。クウの空間魔法は精度を上げれば、どんな場面でも役に立てる。

 これが出来るようになれば防御面は飛躍的に上がる筈だ。

 そして次は攻撃側だ。このパーティーだと攻撃はマイラがメインになるからな。

 後はスライムがどこまでやれるかも気になる所だが、まずはマイラの戦闘力を見てみるか。


「マイラと残りのスライム達はついてきてくれ。どれだけやれるか見てみたい」


 そう言って俺はマイラとスライム9匹を引き連れて、川辺にある大きめの岩の前までやってきた。


「マイラ、まずは炎を頼む」


「ガウ!」

 

 マイラは返事をすると、口大きく開けそこから紅蓮の炎が吹き出した。

 最初に見た時は慌てていてじっくりと見れなかったが、目測だが20mくらいは出てるんじゃないだろうか。


 そして肝心の火力だが、川岸にあった岩が全体的に真っ赤な焼き石となっていた。

 直接当たっていたところに関しては、若干融解している。

 範囲火力共に想像をはるかに上回っていてかなり驚いた。


「よ、よし次は尻尾の蛇の毒牙をあの木にやってみてくれ」


「ガウー!」

 

 勢いよく木の方へと駆け出し、するりと伸びた尻尾の蛇で木の幹に噛み付いた。

 すると木は噛まれた箇所から腐りだし一瞬で朽ちていった。どうやらただの蛇の毒ではないようだ。

 マイラの尻尾の毒は酸みたいだな。これなら鉄でも簡単に溶かす勢いだぞ。


「す、凄いなマイラ、お前実はかなり強い魔獣なんじゃないか?よし、次はスライムだな。お前達は戦闘は何が出来るんだ?」


「!」

 

 スライム達はぷるぷると震え出すと、俺の方へ近づいてきた。足元まで来るとそのまま足の下に入りバランスを崩して来た。


「うおっ!そうかなるほど、相手の重心を崩して滑らせて転ばせるんだな。よし、俺を倒せるかやってみろ」

「!」

 

 俺の声を聞いて、スライム達は足元でぷるぷると震え出した。

 おかげで重心を支えることが出来ず、見事に転ばされた。

 イメージするなら床がぬめぬめの電車に、何も捕まらず乗っているような感覚だ。

 そして倒れたところで数匹が顔に覆い被さってきた。どうやら窒息させる事が狙いらしい。

 だが、スライムはあまり力のある魔獣では無いらしく、これは簡単に手で引き剥がせてしまった。


「ぷはっ」


「!」

 


 俺が振り払うと、スライム達はぷるぷると震え下がって後ろに下がって行ったので、どうやらこれでもう降参らしい。


「ふむふむ、足元に忍び込み滑らすのはなかなかいい作戦だったぞ。ただ敵に近づくまでのスピードと、倒した後の窒息させる為のパワーが足りないのが課題だな」


「!」


 また震え出した。若干下も向いてるような気がした。これは落ち込んでいるのかな?


「全然落ち込むことじゃないよ。相手を倒すのはいい戦法だし、クウやマイラとうまく連携を取れば、確実に戦力になるよ!」


 これで皆のやれることがだいたい分かったから、これからは本題のチームワークを鍛える練習だな。

 今思いつくのだと、クウで敵の攻撃を受け流して、マイラの炎で注意を引きつつスライムまで敵をおびき寄せて、滑らせた後はマイラが焼くなり噛むなりして決めるって感じかな。取り敢えずこれでやってみるか。


「よしマイラ!まずはこの岩を敵だと思って、敵を右に寄せるイメージで意識して攻撃してみてくれ!」


「ガウ!」

 

 俺の命令に従い、マイラの豪火が岩を襲った。

 上手い具合に左側を狙っている。これなら避けるには右に逃げるしかなくなるな。ここで……。


「今だスライム達!右におびき寄せた敵の足元に忍び込んでひっくり返せ!」


「!」

 

 ぷるぷると震えジャンプして敵の懐に入るスライム達だが……。


「うーん、やっぱり速さが足りないよなー。いくらクウがいてもあそこまで近距離だと危険が多いし……。あ!そうかクウのワープで足元にスライムを出せれば一瞬で移動出来る!マイラの炎があれば反撃もそう簡単には出来ないだろうし……、よし、これならいけるぞ!」


「ガウゥ!」


「!」

 

 マイラも調子よさそうだし、スライムもぷるぷる震えていけるって言ってる気がする。

 それじゃ、そろそろクウの様子を見に行くか。


「なっ!嘘だろ……」

 

 クウの特訓を見に行くと目を疑う光景がそこにはあった。

 クウのワープホールが何度も繋がり、加速していったスライムが、今や目で追えないほどのスピードで飛び交っていた。


「クウ!もう終わりだ!」


「クア!」

 

 こっちに気付いたのか嬉しそうに笑いクウはスライム達を上に打ち上げた。

 突然のことで俺は止めることも出来ず、その間にスライムはグングンと空を昇っていってしまった。

 やがて上空で速度が落ちたように見えた所で、クウはスライム達の下にワープホールを出し、地面と繋げて安全に着地させてみせた。


「凄いなクウ……、どうなる事かと思ったけど、まさかワープホールを応用して安全に着地させるなんて。ここまで出来るようになるとは思わなかったよ」


「クアッ!」

 

 クウは俺に飛びついてくると、笑顔で頬擦りしてきた。

 全く可愛い奴め。これなら例の作戦も使えそうだな。


「よしよし、それでスライム達はどうだ?怪我とかはないか?」


「!」

 

 安全確認のため、スライムに聞いてみたがどうやら問題ないらしい。

 それどころか弾丸のように飛び交うのが楽しかったのかまだやりたそうだ。スライムは意外とタフな種族なのかも知れないな。


 そうして訓練は続き、気が付いたらもう夕日が見え始めていた。


「やばっ!ちょっと遅くなりすぎたなこれは」

 

 そう思い慌てて帰ろうとした時に、遠くからアマネの声が聞こえてきた。


「あ、いたいた!灯君勝手に行動しちゃダメじゃない!ライノ隊長かんかんに怒ってるよ!」

 

 どうやら随分と探させてしまったようだ。申し訳ないことをした。


「ご、ごめん、訓練に夢中になってて……」


「訓練?あれ、そういえばなんかスライムがいっぱい居るけど。まあいいわ、とにかく早く本部に帰りましょ!もう作戦も決行日も決まったんだから!」


「もうか、騎士団は行動が速いな。分かった急いで戻ろう!クウ、移動頼めるか?」


「クウッ!」

 

 クウは元気な返事と共に肩から飛び立ち、目の前に大きめのワープホールで騎士団の本部と繋いでくれた。


「よし!クウ以外は皆戻ってくれ!」

 

 モンスターボックスをマイラとスライム達の前に掲げ、みんなが吸い込まれたのを確認した。


「それじゃアマネ、クウ行こうか!」


「クァッ!」

 

 クウは肩の上に戻ってきた。


「それがモンスターボックスか、中々ぶっ飛んだ魔道具みたいね」


「アマネ程じゃないだろ」

 

 ニヤニヤと笑いながら言うと、アマネは顔を真っ赤にして追いかけて来た。


「もう!どういう意味よ!」


「ハハハッ!」


「待てコラー!」

 

 そうして俺達は訓練を終えて騎士団の本部へと帰ってきた。


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