001 記憶を持ちながら転生しました
馬鹿だ俺は。
あんな呑気に上を向いて、左右の確認もせずにバイクと衝突、か。
バイクを運転してる人は悪くないんだから罰さないでね検察さん。
さて、今俺はどこにいるでしょうか?
自分でもよくわかりません。確か渡った道路はそこそこの大きさの通りだからスピード出してるから、俺は死んだんだろうけど。
最近人間関係よくわからなくなってきてたし、そこまで悲しくないってのが大きな問題。来世は良い人間関係が築けたらいいね。
お?
なんか、感覚器官からの応答がずっと無かったんだけど、ベルトコンベアで運ばれてる感覚。
どこに?
分からない。
慌てて意味ないけど、輪廻転生ってこんな感じなの? ベルトコンベアとか(笑)って感じなんですけど?
「なんだこの魂。やけに反抗的でうるさいな」
ん?
誰かしゃべった!
聞こえた! 幻聴?
「は? 自我を持っているのか? 記憶の消去はどうしたんだよ! アイツか……」
記憶の消去……今記憶あるのがイレギュラーってことね。よくある転生系はここで記憶消去されずに転生してしまう、と。まあ平凡な俺はここで記憶消去されるんだよね。悲し。
「おいお前! 記憶の消去忘れてるぞ! 危ないな」
「すみません!」
お、上司が部下を叱ってるのか。ちなみに今の内に来世の世界について教えてくださってもよろしいのですよ? 記憶消えるんで。
幽霊と魔法は信じないけど異世界は信じる派だから。今回で転生信じる派にもなりました。
「お前らのとこでいう剣と魔法のファンタジー異世界だ。喜べ。記憶は消すけどな。まあ、魔法の素質くらいはよくしてやるよ。記憶消し忘れたのも何かの縁かもしれないし。でも並みより良いレベルだから調子乗るなよ……って言っても意味ないか。記憶をしょうきょぉー?」
「何話してんだよ! さっさと次の魂の処理するぞ! こいつの記憶は消したな? よし、送ろう」
「あ、それはまだ……」
「……完了! ……え? 今何か使ってたじゃんか」
「それは適性付与で、あぁ……」
「あぁ……」
あぁ……
記憶ありますよ、私。
またベルトコンベアで運ばれる感覚。早く記憶消さないと、って……
放り出された! 滝を落ちる水の気分。
あーれー……
「ま、まあ上にはバレないだろ!」
「そ、そうですね。バレなきゃ犯罪じゃないんです!」
◇
あのさ、記憶持ったまま転生するのは置いといてさ、意識持ってからお母さんの体の外に出るまで10ヵ月もかかるのやめようよ。受精卵のころから意識あった計算だよ。そんさに脳細胞ないよ。
というわけで生まれました。ばんざい!
しかも話す言葉は理解できるようです! ばんざい!
そのおかげで脳細胞ないのに記憶あるとかいう驚愕の事実を知ったわけだけど……
「お子さん、泣きませんね。これは呼吸障害かもしれません! おや?」
ヤッベ! 呼吸のない胎児生活に慣れすぎた。呼吸できますよ! 目は開かないけどね
「うえーおあああ!!」
「どうやらレイル君は正常に生まれたようです」
「ええ。ありがとうございました! レイル、健康に育つのよ?」
「あいー」
「まあ! この子今あい! って……」
「気のせいじゃないか? それよりお前もはやく体調整えてレイルと3人でクエスト行こうぜ!」
「ええ。ありがとう」
「どういたしまして。ははっ」
両親かな? 会話から察するに名前はレイル! いいね! そして両親いちゃいちゃすんな! 家族の中で悲しくなる……
まあ、楽しそうな家族でとても嬉しいです。ありがとう記憶消去ミスった人。神様なのかな?