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52 魔神

今日は51、52話の2話更新です。

「ひれ伏すがいい、蛆虫どもめ!!」


 魔神と化したエリックがそう叫んだ途端、地面から無数の真っ黒な手が現れ俺たちの方へと襲い掛かってくる。


「させません!!」


 エセリナが呪文を唱えると、俺たちの前に光の壁が現れ闇の手を弾き飛ばす。


「私の妹に手を出そうとしたこと……忘れてないからなああぁぁぁぁぁ!!」


 サフィラは魔神相手でも全く臆することなく斬りかかっていく。

 しかし通常の武器では魔神相手に大したダメージは与えられないようだ。

 エリックは痛がるそぶりも見せず、サフィラの方へ振り向きにやりと笑う。


「なんだ、貴様も愛でてやろうか?」

「鏡見てから言いなよ!!」


 サフィラの言葉が気に障ったのか、エリックは手のひらに真っ黒な球を作り出すと、それをサフィラの方に投げつけた。


「危ねぇ!!」


 すぐさまサフィラの前に走り込み、白銀の剣で暗黒の玉を切り裂く。

 すると、玉は真っ二つになって消滅した。


「やはり……破邪の剣!!」


 エセリナが嬉しそうにそう叫び、エリックは不快な雄たけびを上げた。

 よくわからんが……俺の剣が効くってことか!!

 だったらぼさっとしてられないな!!


「お前は潰す! ここで!!」


 セリスも猫のようにしなやかな動きでエリックの足を切りつけた。

 その鮮やかな動きに。思わず見惚れそうになってしまう。


「まだそれだけ反抗する気概があるとは……もう一度貴様の精神を犯してやろうか?」

「うるさいっ! 僕はもう騙されない!!」


 セリスは激高したように何度も何度もエリックに斬りかかっている。

 しかし、さすがは魔神。ちょっとやそっとじゃダメージは与えられないようだ。


「あれだけ闇に弄ばれてもまだ正気を失わないとは……貴様を繋ぎ止めているのは、その男か?」


 エリックが馬鹿にしたように俺の方に視線を向ける。

 俺もセリスの隣へ陣取り、奴を睨み返す。


「……理解できんな。なぜそのように人間に執着する? その男がいずれ貴様を置いていくのは変わらんぞ」


 ぐっと唇を噛みしめる。

 そうだ、俺はずっとセリスの傍にはいられない。

 ……例えエリックを倒したとしても、それは変わらない事実なんだ。


「それでも……」


 俺の隣にいたセリスが、エリックを睨みつけながら一歩前へ出た。


「それでも、僕はレヴァンと一緒にいたい……! たとえお前から見たらほんの少しの時間でしかないとしても!!」

「理解できんな。我と来れば極上の快楽を与えてやるというのに」

「お前は、さみしい奴だね」


 セリスがどこか憐れんだようにそう言うと、エリックは表情を歪めた。


「なんだと?」

「支配とか、洗脳とかそんなのでしか繋ぎ止められないなんて、悲しい奴だ」


 エリックがセリスに向かって闇の玉を放つ。

 俺はすぐさま玉を切り裂きセリスを守った。


「なんだ、愛だの恋だのとという戯言か?」

「そうだよ……僕は、レヴァンが好き。大好き。だから一緒にいたい、それだけ」


 セリスは照れるそぶりも見せず、そう言ってのけた。

 ……でも、俺はめっちゃ照れるんだけどな!


「ちょっとー、そういうのは二人の時にやって欲しいんですけどー」

「あの……今は魔神を倒すことに集中して欲しいんですが」


 サフィラとエセリナにまで呆れたようにそう言われ、なんか俺の方が恥ずかしくなってきた。


「セリス、後で話そう。でも……これだけ言っとく。俺も好きだ。」


 そう告げると、セリスは驚いたように目を見開いた。

 くっ、かなり照れるなこれ……!


「とにかく、今はこいつを叩き潰すぞ!」

「わかった!」


 そのまま二人でエリックに向き直る。


「小賢しい……! 全員まとめてなぶり殺しにしてやるわ!!」


 エリックがいくつもの闇の玉を作り出し、俺たちの方へと射出した。


「光の加護を!」


 エセリナの創り出した光の壁が玉を弾き、逆にエリックへと反射させる。

 その隙に、サフィラとセリスが同時にエリックへと飛び掛かった!


「お前の……思い通りになんてさせない!!」


 セリスが短剣を突き刺すと、エリックの皮膚がぼろぼろと剥がれ落ちていく。

 脆くなったその場所に、サフィラが渾身の力で剣を突き立てた。

 エリックが苦悶の叫びを上げる。


「じゃあな、リーダー」


 俺はお前のことを信頼していた。

 お前はリーダーとして立派に働いていると思っていた。

 でも……俺は、本当のお前を見ていなかったんだ。もう、間違わない。


 精神を集中させ、剣に魔力を纏わせる。

 ここで負けるわけにはいかない。

 皆の……誰よりも、セリスの為に、俺はこいつを倒す。


「レヴァン、今だ!!」


 セリスの声を聞くと、体の奥底から力が溢れてくる。

 そうだ、いつだって……お前のためなら、強くなれたんだ。


「あばよ、エリック!!」


 がむしゃらに振り回されるエリックの腕をかいくぐり、足に風魔法を纏わせ大きく跳躍する。

 そして、エリックの脳天に剣を叩き込んだ。

 剣がエリックの肌に触れた途端、そこから光が溢れ出す。


『ウグアアアァァァァァ!!』


 エリックは断末魔のような声を上げ……その体はさらさらと砂のように崩れていった。

 後に残されたのは、真っ黒な砂の山だけだ。

 ……あっけないな。これが魔神の最期か。


「レヴァン……」


 すぐに、セリスが俺の方へと走ってくる。

 どうやら皆無事のようだ。その姿を見ると安堵で力が抜けた。

 そして、そのままその場に崩れ落ちてしまう。


「レヴァン!?」


 慌てたようなセリスの声がどこか遠くに聞こえる。

 あぁ、セリス。お前に言いたいことがたくさんあるのに……。


「レヴァン、しっかりして!」

「いけません、早く治癒を!!」


 気合で抑え込んでいたが、セリスに刺された箇所からはどんどん血が流れだしている。

 やばい、頭がくらくらして、体に力が入らない。

 これは……思ったよりもやばそうだ。


「レヴァン、起きてよ! 置いていかないって……ずっと一緒だっていったじゃん!!」


 涙交じりの声に、重いまぶたを開ける。

 思った通り、セリスは幼い頃から変わらない情けない泣き顔を晒していた。


「セリス……」


 お前に、言いたいことがたくさんあるんだ。

 でも……なんかもうダメそうだ。


「俺は……」


 その続きは、言えなかった。


明日で完結予定です!

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