46 突然の来訪者
今日は45、46話の2話更新です
あの一件以降、セリスはまるで何事もなかったかのように振舞っている。
俺もマノスのことや、その後に話したことには何も触れずに、今まで通り親友として、幼馴染としてセリスの傍にいる。
でも……このままでいいんだろうか。
俺がいつまでもこうしてセリスの傍にいては、セリスが添い遂げる相手を見つける邪魔にならないだろうか。
そう……頭のどこかでは考えてしまうんだ。
いつものように二人で朝食を取り、今日の予定の話になる。
「今日はどうするの?」
「特に予定ないしギルド行く。そろそろ小さい依頼が溜まってそうだしな」
「そっか。僕も行こうかな」
聞けば、今日は魔女の弟子としての仕事もないらしい。
そういえば二人でギルドに行くのも久しぶりな気がする。
俺たちは……いつまでこうして二人でいられるんだろうか。
ゆっくりと隣を歩くセリスをちらりと見ながら、俺はそんなことを考えていた。
◇◇◇
そしてたどり着いたギルドで依頼を吟味していると……にわかに外が騒がしくなる。
一体何かあったんだろうか。
「なんだ?」
「酔っぱらいの喧嘩……というわけでもなさそうですね」
「もうちょっと様子見ようか」
リアナにもセリスにも心当たりはなさそうだ。
もう少し様子を見て、トラブルに発展しそうだったら首を突っ込もう。
そう決めた時、ギルドの扉が開いた。
そして、見慣れない一団が入ってくる。
それは、俺たちと同じくらいの年の、数人の女性だった。
戦士、魔術師、神官……身なりからして、彼女たちも冒険者なのだろう。
その珍しい光景に、ギルドの中にいた者たちの視線が引き寄せられる。
彼女たちは視線を物ともせずしっかりとした足取りでギルドの中へと足を踏み入れた。
そして、最後に入ってきた者の姿を見て……俺は驚愕した。
……まさか、こんなところで会うなんて。
「……エリック?」
すぐ隣にいたセリスが息をのんだのがわかった。
きっと、セリスも驚いているんだろう。
そこにいたのは、かつて俺たちが所属していたパーティーの、リーダーその人だったのだから。
俺の声が聞こえたのか、エリックがこちらを振り返る。
そして、驚いたように目を見開いた。
「レヴァン……!? それに、セリスもか……!」
エリックが近づいてくると、先にギルドに入ってきていた女性たちは道を開けるようにエリックを通していた。
「やっぱりエリックか! どうしたんだよこんなところで」
「それはこっちの台詞さ。まさかこんなところで会えるとは思わなかったよ」
エリックが朗らかに微笑む。
その様子を見て、俺はほっとした。
セリスを守るためとはいえ、俺はパーティー内の仲間を半殺しにした。
そのことでパーティー内の不和を招き、エリックには迷惑をかけた。
てっきり恨まれてるんじゃないかと思っていたが……この様子を見る限りはそうでもなさそうだ。
「君たちは相変わらず仲がいいな」
「まぁな……あの子たちは、お前のパーティーメンバーか?」
彼女たちはじっと俺とエリックの成り行きを見守っているようだった、
これでまさか赤の他人、ということはないだろう。
「あぁ、彼女たちは僕の頼りになる仲間だ。今はこうして各地を旅している途中なんだ」
なるほど、それでこんな田舎にまでやってきたわけだ。
だが、そうなると俺たちが元々所属していたパーティーの奴らはどうなったんだ?
俺とマノスが追放され、セリスが抜けたとはいえまだパーティーの仲間は他にもいたのに。
俺の表情で何を言いたいのか察したのだろう。
エリックは少し物悲し気に目を伏せて、小さく呟いた。
「君たちが抜けてから、パーティーはうまくいかなくなって……解散したんだ」
「解散……」
「あっ、勘違いはしないでくれよ? 解散は僕の力不足のせいで、君たちのせいじゃない。君たちが抜けた穴を埋められなかった僕の責任だ」
エリックはそう言ったが、やっぱり直接の原因は俺たちにあるんだろう。
それでも、俺たちを責めないこいつはできた奴だ。
「色々あったが、今は新しいパーティーで心機一転頑張っているところさ。こうしてまた会えて嬉しいよ、レヴァン、セリス」
エリックはそう言って、片手を差し出してきた。
その手を強く握り返す。
確かにいろいろあったけど……こうしてまた会えて嬉しいのは俺も同じだ。
俺と握手を交わした後、エリックはセリスの方にも手を差し出した。
それなのに、セリスはじっと立ちすくしたままだった。
「……セリス?」
どうしたんだよ、と呼びかけるとセリスははっとしたように顔を上げる。
「あ、うん……」
そして、セリスはどこかためらいがちにエリックと握手を交わしていた。
久しぶりの再会に緊張しているのだろうか。
それとも、追放された俺とは違いセリスは自分からパーティーを抜けた身だ。
多少バツが悪いのかもしれない。
「僕たちはしばらくここに滞在するつもりなんだ。またよろしく頼むよ」
エリックは懐かしそうに微笑むと、背後に控えていた女たちの元へと戻っていった。
「あいつも元気そうでよかったな」
「…………」
「セリス?」
「ぁ…………」
セリスはどこか不安げに、エリックたちの方を眺めていた。
「どうかしたのか」
「……ごめん。ちょっと、用事思い出したから帰る」
「待てよ、俺も行く」
別に生活が苦しいほど金に困ってるわけでもないし、エリックたちが来たからには溜まった依頼を片付けてくれるのにも期待できそうだ。
どこか気落ちした様子でギルドを出ていくセリスの背を、俺は慌てて追いかけた。




