28 ダンジョン攻略中
続く第二階層でも、まだ敵は大したことなかった。同じく手に入るアイテムも大したことはない。
それでも、サフィラは初めてのダンジョンが嬉しいのかやたらとテンションが高かった。
「おらっ、もっとお宝ァ!!」
通路を塞ぐように現れたインプを殴打しながら、サフィラはハイになったように笑っている。
それを横目で見つつ、俺も飛来するガーゴイルを斬りつけた。
「やる気満々だね、サフィラは」
「ちょっと引くくらいにな……」
モンスターを倒し、宝箱を見つけ、開けていく。
「指輪にアミュレットか……」
「なんかの効果とかあるのかな?」
「レヴァンたちは鑑定とかできないの?」
「残念ながら……」
俺もセリスも鑑定スキルは大したことない。あの小さな町に鑑定士がいるのかどうかはわからないが、ギルドに帰ったら聞いてみよう。
何か役に立ちそうな魔法効果がある装飾品なら、売らずにとっておくのもありかもしれない。
まぁでも、ここに来て初めてのダンジョン攻略はうまく進んでいる。
セリスも弓で遠くのモンスターを牽制し、近づいてきた奴にはナイフで応戦し、落ち着いた時にはマッピングという形で順調そうだ。
「よし、これでだいたいは埋まったかな。まだ空いた空間があるからもしかしたらどこかに隠し扉があるかも」
「探してみるか?」
「えー、先行こうよー!!」
「そうだね、ゆっくり探索するのはまた今度でもいいか。入るたびに構造の変わるダンジョンとかじゃないといいんだけど……」
「え、そんなのあるの!?」
「あるんだな、それが……」
そのダンジョンの攻略中は、セリスがせっかく作った地図が無駄になるとぼやいていた。
確かに、苦労して作った地図が役に立たなかったらちょっとショックだよな。
「今日は様子見。無理はしない程度に、行けるところまで行こう」
セリスも意外とやる気そうだ。もちろん、俺も久しぶりのダンジョンにうずうずしっぱなしだ。
隠し扉を探すのはやめて、俺たちは次の階層へと進むことにした。
続く第三、第四階層も問題なく進むことができた。
階層が進むにつれて、だんだんと現れるモンスターが強くなっていく。それでも、俺たちにとってはまだ余裕の範囲だ。
第四階層から下へと伸びる階段を降り、第五階層に到達する。
そこは、明らかに今までの階層とは異なっていた。
まっすぐに、長い回廊が一直線に伸びている。そしてその先には、幾何学模様が刻まれた巨大な扉が鎮座していたのだ。
「なるほど、ボス部屋か」
ダンジョンには、何層か進むとこういう部屋があるのだ。
中には、今までの敵とは一味違うボスが待ち構えているはずだ。
「サフィラ、この先にいる敵のことって何か聞いたことある?」
「ううん、たぶん今まで入った人は、みんな浅い階層で引き返してきたみたいだから」
もしくは、途中でモンスターにやられて帰らぬ人となったか……と思い当たったがそれは言わないでおいた。
とにかく、あの扉の向こうには何が待ち構えているのか現状ではまったくわからないわけだ。
「どうする? ここで引き返すって選択肢もあるけど」
セリスが俺とサフィラの顔を見て慎重にそう告げる。
俺はちらりとサフィラに目をやる。偶然なのか、サフィラもこちらを見ていた。
そして、俺たちはお互いに考えていることが分かってしまった。
もちろん、ここで引き返すなんてもったいない真似ができるわけないってな……!
「……はは、二人ならそうすると思った」
まだ何も言ってないのに、セリスには俺たちの言いたいことがわかったようだ。それでも、セリスも同じ気持ちなんだろう。こいつだって冒険者。目の前にお宝がぶら下がっているのに、食いつかないわけがない。
以心伝心、それにおいては結成したばかりのパーティーにしては申し分ない。
「じゃあ行くか!」
三人で前方の巨大な扉を目指して歩き出す。不思議と不安な気持ちはなかった。
扉の前へとたどり着き、ゆっくりと扉に手を触れる。
「……やるぞ」
「うん!」
「まっかせてー!!」
少し力を込めて押すと、重い音を立てて扉が開いていく。
その先は、巨大な円形の空間になっていた。
一体どんなモンスターが……と目を走らせたが、そこには誰の姿もなかった。
「なんだ? いないのか?」
今までこういった場所だとボスモンスターが待ち構えているのが普通だったが、ここの遺跡はそうでもないんだろうか。
そんなことを考えながら広間の中央へと進もうとしたその時だった。
「レヴァン、下がって!」
セリスの声が響き、俺はとっさに背後に飛んだ。
次の瞬間、上から巨大なものが寸前まで俺の立っていた場所へ落ちてくる。
その姿を目にして、俺は思わず息をのんだ。
「まさか、天上に張り付いてやがったのか……!」
あと少し遅ければ俺はこいつに踏みつぶされていただろう。
この……天井から降りてきた巨大な蜘蛛によって!
蜘蛛が長い脚を振り上げ、セリスが牽制するように矢を放つ。
それを皮切りに、俺とサフィラも戦闘態勢へと入った。




