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16 依頼達成

 ひとまず庵に帰ってセリスを休ませ、俺一人でギルドへ依頼の達成報告に向かう。

 ギルドに着くと、ちょうどサフィラも戻ってきてリアナと何か話しているところだった。

 俺が入ってきたことに気づいたサフィラが振り返り、声をかけてくる。


「あっ、レヴァンだ。元気?」

「あぁ、だいぶよくなった気がする」

「じゃあダンジョン行ける!?」

「それはもうちょっと先だな……」


 俺としてはいつでも行きたいのだが、セリスの奴がまだ本調子じゃないからと許可を出さないのだ。

 まぁ、俺も入ったことのないダンジョンだし慎重を期すのは悪くないだろう。

 ここはセリスのいうことを聞いておこう。

 サフィラは俺が持っていたアガリクスの入ったカゴを見て、小さく声を上げた。


「キノコ採取依頼かぁ。よかったじゃんリアナ。地味な依頼でもやってくれる人がいて」

「そうですよぉ、ほんとにレヴァンさんとセリスさんに感謝です。あれ……そういえばセリスさんはどうかされたんですか?」

「あいつはちょっと体調悪いみたいで休んでるんだ。それで、ちょっと聞きたいんだが……」


 サフィラとリアナが不思議そうに俺の方を見ている。

 姉妹というだけあって、その表情はよく似ていた。


「クライミング・プラントって知ってるか?」

「あぁ、あの森とかによくいる奴だよね?」

「そうそう。で、そのクライミング・プラントが人を襲うことってあるのか?」


 そう尋ねるとサフィラとリアナは顔を見合わせ、そろって首を横に振った。


「ないない! 襲うどころか私が近づくとすごい速さで逃げてくし」

「私も聞いたことないですね……少なくとも、ここ数年そう言った事例はないはずです」


 記録帳をぱらぱらとめくっていたリアナも、心当たりはないようだ。

 ……やはりそうか。このあたりのクライミング・プラントは特別狂暴なのかと思ったが、そんなこともないようだ。


「実は、セリスがそのクライミング・プラントに襲われて……」

「えっ、大丈夫だったんですか!?」

「あぁ、大事はないみたいだが本人はショックだったみたいで今は休んでるんだ」

「うーん、確かに安全なモンスターだと思って油断してたら逆に……ってことはあるかもね」


 セリスだってBランクの冒険者。油断さえしなければあんな低級モンスターに負けることはなかっただろう。

 だからこそ、ショックを受けたのかもしれない。


「……もしかしたら、セリスさんはエルフだからモンスターも何かに反応したのかもしれませんね」

「え、そんなことある?」

「わかんないけど……とりあえず注意喚起だけは出しとく。一応サフィ姉も気を付けてよ」

「はいはい、わかりましたっと。レヴァン、セリスによろしくね。あとこれあげる」


 サフィラは持っていた袋をごそごそと漁ると、やたらとでかいリンゴを手渡してくれた。


「セリスにあげてよ。元気出るかも」

「わかった、ありがとな」

「いえいえ、うちの店にいっぱいあるから気に入ったら買ってってね!」


 好意かと思いきや宣伝だった。中々商魂たくましい奴だ。

 サフィラは大きく手を振ると、いつものようにすごい勢いで扉を開け放して出て行った。

 その姿を見送り、俺もリアナに依頼の達成報告を行う。


「ふふ、なんだか緊張しちゃいます。Bランクの冒険者の方がうちに来てくれるなんて滅多にないので」

「そうなのか? それも張り合いなさそうだな……」


 迷宮都市にいた頃は、周囲の同じようなランクの冒険者のことをライバルだと思っていた。

 そいつらに負けないようにと、常に上を上を目指していた。

 でも、ここではそんな必要はない。自分のペースで、好きな時に好きな依頼をこなせばいいんだ。

 それも……悪くないかもな。


 リアナから報酬を受け取り、掲示板をちらりと覗いて次の依頼に目星をつけ、受注はせずにそのままギルドを後にする。

 依頼を受ける前に、セリスに相談した方がいいだろう。



 ◇◇◇



 庵に戻ると、セリスはぼぉっとした様子でソファに腰かけていた。

 特に異常があるわけでもなさそうなので、その様子にほっと胸をなでおろす。


「大丈夫か?」

「うん、なんともないよ。ちょっと情けなさ過ぎて自分が嫌になるけど……」


 怪我や後遺症があるわけではなく、単に精神面で落ち込んでいるようだ。


「あんま気にすんなよ。サフィラだって油断してもしょうがないって言ってたぞ」

「サフィラに会ったんだ……」

「そうだ。これ、お前にって」


 サフィラに貰ったリンゴを見せると、セリスは驚いたように目を丸くした。


「おっきい……」

「だな。剥いてやるからこれ食べて元気出せよ」


 自分がやる、と言ったセリスを制してやたらとでかいリンゴの皮を剥いていく。

 ちょっと不格好になってしまったが、食べやすいように一口サイズに切ったリンゴを皿に乗せセリスの元へ戻ると、匂いにつられたのかどこからかフィロメラさんもやって来た。

 セリスは、どこか嬉しそうな表情でリンゴを口に運んでいる。

 少し元気を取り戻したようで俺はほっとした。


 ……今後は、簡単な依頼でもできるだけセリスから離れないようにした方がいいのかもしれない。

 どこか気怠そうな様子の幼馴染の姿を見ながら、俺はそんなことを考えていた。


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