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11 僻地の冒険者ギルド

 イスティアの冒険者ギルドは、以前俺たちがいた街の冒険者ギルドに比べると随分と小さく建物の作りも簡素だった。

 まぁ、田舎の冒険者ギルドなんでこれが普通なのかもしれない。

 扉を開けると、からんからんと力なくベルの音が響く。

 外観と同じように、ギルドの中も随分と質素だった。

 中に入ると、冒険者というよりは近所の親父、というような風体の男が数人酒を飲みながら駄弁っているのが見える。

 受付では若い女の子が暇そうに頬杖をついていたが、入ってきた俺たちに気が付くと驚いたようにたたずまいを直した。


 どこか、食料品店で会ったクロエに似ている気がする。

 きっと彼女が、ここでバイトしているクロエの妹なんだろう。


「このギルドについて少し聞きたいんだが、いいか?」

「は、はい! なんなりとお申し付けください!!」


 少女はどこか緊張した様子でかしこまってそう告げた。

 ……別に普通に話しかけたつもりだったが、何かいけなかったんだろうか。


「俺はレヴァン、こっちはセリスだ。失礼だけど君は、食料品店のクロエの家族かな?」

「あれ、お姉ちゃんのこと知ってるんですか?」


 先ほどクロエに会った話をすると、少女は少し緊張を解いたようだった。

 姉の知り合いということで安心したんだろうか。


「初めまして、レヴァンさん、セリスさん。私はこの冒険者ギルドの受付……のバイトやってるリアナと言います」


 そう言ってリアナはにこりと笑った。姉のクロエに比べると、中々落ち着いた雰囲気の少女だ。


「すみません。ここって全然外の人が来ることがないので、お二人が来てちょっとびっくりしちゃったんです」


 リアナは恥ずかしそうにそう告げた。なるほど、確かクロエもそんなこと言ってたな。


 俺はパーティーを追放され街からも出てけと言われたが、冒険者ギルドの登録までは抹消されていない。

 簡単に、しかし詳細を伏せて今の状況を説明し、ここでも仕事を受けられるか尋ねると、リアナは登録証を確認し問題ないと答えてくれた。


「ここって冒険者の数も少なくて、農家や商売の本業との兼業でやってる人ばっかりなんですよ。お二人ともすぐにエースになっちゃいますね! まぁ、依頼自体もそんなにないんですけど……」


 そう言って指差した先には、まばらに依頼書の貼られた掲示板が見える。

 確かに、溢れそうなほどの依頼書がびっちり敷き詰められていた前の街のギルドと比べると雲泥の差だ。


「あとこの町から少し離れたところに未踏破のダンジョンもあるんですけど……僻地すぎてほとんど誰も攻略しようとしないんですよ」


 なるほど。このギルドは全体的に活気がないというか……たぶん所属してる人のやる気もないようだった。

 俺は故郷を出てからずっとあちこちから冒険者の集まる迷宮都市で活動していたから知らなかったが、案外田舎の冒険者ギルドっていうのはこんな感じなのかもしれない。

 依頼の掲示板も見てみたが、簡単な採取依頼や低級モンスターの討伐依頼がぽつぽつと貼ってあるくらいだった。

 昔だったら、ダンジョン攻略に夢中で見向きもしなかっただろう。


「まぁ肩慣らしにはちょうどいいか……」


 セリスに支えられて歩いているようじゃまだまだだが、もう少し回復したら少しずつ依頼もこなしていかなければならない。

 いつまでも、フィロメラさんに世話になりっぱなしになるわけにはいかないしな!


「ちゃんと治るまで無理しちゃだめだよ!」


 俺の胸中を察したのか、セリスが釘を刺してくる。


「わかってるって、お前は昔っから心配性だよな。覚えてるか? 洞窟の肝試しの時だって……」

「またそうやって昔のこと持ち出す……」


 セリスは拗ねたように頬を膨らませた。

 出来心でその柔らかそうな頬をつっつくと、じとりと睨まれてしまう。

 その時ふと視線を感じて振り返ると、リアナがどこか興味深そうに俺たちの方を眺めていた。

 そして、おずおずと切り出してくる。


「あの、つかぬことをお伺いしますが、お二人は……」


 その続きは、バァンと豪快に開け放たれたドアの音に中断されてしまう。


「たっだいまー! リアナいるー?」

「もー、サフィ姉。またドアが壊れちゃうよ!」


 入ってきたのは若い女性だ。

 その姿は、少し前まで拠点にしていた迷宮都市でよく見たものだった。

 軽装だが、要所を守る機能的な防具。腰には剣を佩いている。

 おそらく彼女はここの冒険者なのだろう。


「ほら見て大量! ゴブリンの肉!!」

「うわぁ……あれ、今日は採取依頼だったんじゃ……」

「あぁ、なんかうろうろしてたから狩ってきた」


 女性がけろりとそう答えると、受付のリアナは額を抑えため息をついた。


「ちゃんと依頼の品も採ってきたからさ。そう嫌そうな顔しなさんな」

「……ゴブリンの肉って、あんまり扱いたくないんだよね」


 ぶつぶつ言いながらも、リアナは女性の狩ってきた採取物とゴブリン肉を持って奥の部屋へ消えていった。

 おそらく奥で状態を確認し、報酬換算を行うのだろう。

 女性はその様子を見送ってうーん、と背伸びをすると、あたりを見回しちょうど掲示板の前にいた俺たちと目が合った。

 彼女は一瞬驚いたような表情を浮かべると、すぐに目を輝かせて駆け寄ってきた。


「見ない顔だね! もしかして新しい冒険者!?」

「あ、あぁ……まあそんな感じだな」


 軽く自己紹介と状況説明をすると、女性は興奮気味に食いついてきた。


「迷宮都市で冒険者やってたってすごいじゃん! ねぇ、ランクは?」

「Bランクだ。俺もセリスも」

「え、すごーい! 私なんてこんなに頑張って働いてるのにDランクでさぁ……」


 俺たちは日々精力的に迷宮を攻略し、その実績でBランクまで上り詰めた。

 確かに、ここのギルドに張られているような依頼じゃあ、よほどの数をこなさないとランクアップは遠いだろう。


「あっ、こっちも自己紹介しなきゃね! 私はサフィラ。この町で妹と一緒に食料品店やりながら冒険者やってんだ! ちなみにさっきの受付も私の妹でーす!!」


 ……そうか。食料品店で会ったクロエは「姉さんと妹と一緒にこの店やってる」と言っていた。

 そうすると、このサフィラがクロエとリアナの姉なんだろう。

 サフィラは俺とセリスの顔を見回すと、いたずらっぽく片目を瞑ってみせた。




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