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【第6話】夜襲


 夜中、気配を感じて目を覚ます。

 俺は普段から特に意識しなくても敵意を感知することが出来る。

 この能力は別にこの世界に召喚されたから得たと言うものではなく、長きにわたって悪の組織と命のやりとりをしていたから身についたものだ。


 ユウは気持ちよさそうにムニャムニャと根ごとを言っている。


 俺は気配がする方向を凝視する。


 すると、星明かりのなか、大型の狐のような動物が1匹、また1匹と姿を現した。


 先頭の狐に目の焦点を合わせ集中する。


 名前  ダブルテイルフォックス

 レベル 20

 力   58

 魔力  43

 速さ  40

 素材 皮:防具、素材になる

    肉:食用可能 



 ウサギよりはかなり強く、しかも団体さんのお着きだ。

 1匹2匹なら変身するまでもない相手のようだが、見た感じ片手で足りない数がいる。

「ここは一気に片付けるか……」


 俺は呟くと丹田へ魔力を集めるポーズを取る。

「レディー、変身!セット!!」


 瞬間、俺の魔力が腰に巻き付きベルトへと姿を変える。

 後は最後のキーワードをシャウトするだけだが、ここで俺はふと考える。


 たしかあの狐どもは皮が素材になり肉も食えるということだ。

 それならZ3(ズィースリー)の力は、いささかオーバーキルではないだろうか。


 せっかくの素材を傷つけたらもったいない。


 俺は変身ポーズを取るのをやめ、腕のブレスレットに魔力を込める。


「チェンジ! カラフルメタモルフォーゼ! ブルー!」

 ブレスレットの宝玉を回転させながら言葉を紡ぐ。


 瞬間、青い閃光に包まれて、俺はカラフルブルーに変身した。

「ふっ、お前達などカラフルブルーの敵ではない。

 命のいらない奴からかかってこい」


 俺は狐たちへ決めぜりふを言うが、どうやら相手は人語を解さないようだ。

 グルッグルッと威嚇音を発しながらじりじり迫ってくる。


 ガオォォゥウーー

 先頭の一匹が吠えながら飛びかかってくる。


 俺は素早く下へ回り込むとブレスレットから魔法を発動する。

「ブルーウォーターカッター」


 ブルーブレスレットから照射された水魔法は、極薄の水の刃となってオオカミの腹に当たり、そのまま背中に突き抜けた。

 着地した狐の魔獣はそのまま縦に両断されて倒れる。


「チッ、背中の皮まで真っ二つにしてしまった」

 いささか出力が強すぎたようだ。


 しかしおかしい。

 ブルーウォーターカッターにここまでの切断力はなかったはずだ。

 せいぜい、狐の腹を割いて内蔵で止まる程度の技が、きれいに脊髄まで真っ二つにしている。


 これはもしかすると、この世界に満ちている魔力の密度が地球より高いからだろうか。

 いささか検証を必要とするようだ。


 考えている内に次の狐が飛びかかってきた。

 まとめて三匹だ。


 俺は魔獣たちの上に飛び、三匹まとめて首を目標にしてブルーウォーターカッターで一閃する。


 着地と同時に三匹の首が地面に転がり、頭を失った切断部からは真っ赤な血が間欠泉のように噴き出す。


 数えると後8匹ほどだ。


 飛びかかった仲間が次々と倒れるのを見ていささか慎重になったのだろう・

 魔中達は俺を囲むように陣取り、飛びかかることなくじりじり間合いを詰めてくる。


 これだけ圧倒的な力を見せつけても尚撤退しないのは、未だにこちらの能力を過小評価しているのか、それとも別の原因があるのか。

 数の上での有利を確信しているけものゆえの愚かしさか。


 俺が背後の気配にも神経を研ぎ澄ませて警戒していると、接敵する寸前の間合いで8匹の狐は停止し、グルグルとうなり声を上げてはいるが、それ以上近寄ってこない。


 まるで足止めしているようだ。

 これはもしかすると、何かある。


 俺は警戒を最大にし、360°あらゆる方向の気配を探る。


 そのとき、俺の後ろに当たる方向の狐の更に後ろから、大きな気配が飛び出し、俺の斜め後方の上空から迫るのを感じる。


「ちっ、ブルーウォーターカッター!」

 俺は振り向きざま、斜め上方へと技を放つ。


 そこには他の狐の2倍に近い体長5メートルほどの巨大狐がいた。

 ブルーウォーターカッターは確実に魔獣の腹に当たっているが、多の魔獣より防御力が高いのか、皮は傷ついているが致命傷ではない。

 いや、むしろかすり傷程度のようだ。


 俺は目に力を込めて大きな狐を注視する。


 名前  ナインスステイルフォックス

 レベル 59

 力   259

 魔力  249

 速さ  139

 素材 皮:防具、素材になる

    肉:食用可能 


 なるほど、他の狐より段違いに強い。

 これは、カラフルブルーの攻撃がきにくいのもうなづける。

 そんなことを考えていると、狐のたくさんあるしっぽが次々と横なぎの攻撃を繰り出し、5本目のしっぽをよけそこねた俺は空高く吹き飛ばされる。

 ユウが寝ている方向とはずれているのが救いだ。

 狐たちは俺に狙いを定めたのだろう。俺の飛ばされている方に皆集まる。


「ちっ!

 仕方ない」


 俺は、空中で一旦変身を解除するとあらためて丹田に魔力を集中させベルトを出現させる。


「レディー、変身!セット!!」


 体をひねって空中姿勢を安定させ、放物線の頂点を過ぎたところでさけぶ。


「変身!Z3(ズィースリー)!!!」


 周囲一帯から魔力を吸収したベルトが激しく輝き、変身が完了する。

 俺は着地するとそのまま攻撃態勢に入った。


「Z3(ズィースリー)パンチ」


 全力で殴れば、あの程度のステータスの生き物なら間違いなく粉みじんになる。

 素材としても肉としても貴重な収入源をここで商品価値ゼロにしたくはない。

 真っ先に俺に追いついてきたでかい狐の右頬を、俺は手加減したパンチでぶん殴った。


 でかい狐が空中に派手な放物線を描いて舞い上がり、やがて地面に激突して地響きを立てる。

 これでユウからは更に距離が稼げる。少々派手にやっても問題ないだろう。

 あとは雑魚狐を一掃し、あのでかいのをさばいて素材にするだけだ。

 

 これだけ大騒ぎしているにもかかわらず、ユウは全く起きる気配がない。


 俺はナインステイルフォックスが落ちていった方へと移動する。

 雑魚狐の生き残りも俺を追ってくる。

 俺は近づいてきた雑魚狐から順に殴り飛ばし、大狐の落下地点に到達するまでには8匹全てを倒し終える。




 落下地点に到着すると、地面に大きなくぼみが出来ているが、肝心の大狐は見当たらない。

 これは、加減しすぎて逃がしたかと思っていると、右後方から火炎がとんできた。

 狐火という奴だろうか。どうやら敵はまだ戦意を残しているようだ。


 俺は全力で火の玉の飛んできた方向へ走ると、そこにはゆらゆらと揺らめく炎を纏った9体の大狐がいた。


 どうやら敵は分身の術でも使える魔物のようだ。


 俺は手近な一体に狙いを定め軽くパンチを繰り出す。


 敵の顔面をとらえたと思った俺の拳は、狐の頭の中を素通りして空振りした。

「ちっ、ホログラムか……」

 いや、この場合狐だから幻術といったところなのだろう。

 何にしても本物そっくりな幻のようだ。


 さてどうしたものか……。


「面倒だな……

 まとめてやってしまうか」


 俺は両足に力を込めると力強く大地を蹴る。

「Z3(ズィースリー)ジャンプ!」


 空中で姿勢を整えた俺は両拳りょうこぶしに魔力をためる。

「Z3(ズィースリー)流星火炎パンチ!」


 両拳りょうこぶしの魔力を炎に変換し、左右交互に拳を繰り出すと、拳の形の大きな火炎が目標に向かって上空から降り注ぐ。


 ドゴゴゴゴゴッーーーーーン


 爆音とともに当たりは火の海と化し、幻の狐も本物の狐も仲良く炎の中に消えた。



 まずい……、火が消えない……。山火事である。

 加減を間違えたことは疑いようがない。


 このままでは向こうで寝ているユウも巻き込まれかねない。


 俺は着地と同時に一旦変身をとき、再びカラフルブルーへと変身する。

「チェンジ! カラフルメタモルフォーゼ! ブルー!」


 変身完了と供に、ブルーブレスレットに魔力を集中させる。

「ブルーウォータースプラッシュ!」


 俺は魔力を水へと変換し、周囲の炎へかけていく。

 しかしZ3(ズィースリー)とカラフルブルーの技では圧倒的にZ3(ズィースリー)の方が強力なのだ。カラフルブルーの水でZ3(ズィースリー)の炎を消すにはかなりの時間を要した。


 完全に鎮火したのを確認し、ナインテイルフォックスの遺体を探す。

 これだけ派手に燃やしてしまったのだから毛皮はダメだろうが、もしかして肉はまだ手に入るかも知れない。

 そんなことを考えて焼け跡を見回すが、大きな狐の丸焼きはどこにもない。


 これは骨まで燃えてしまったのかと考えていると、岩陰から真っ黒になった小さな狐がふらふらと現れ「きゅーー」と一声鳴いた後、ぱたりと倒れた。

 どうやら瀕死のようだ。


 俺たちの戦いに巻き込まれた小型の狐だろうか。

 敵意がないものまで屠ったとあっては正義の味方を標榜する者として、人聞きが悪い。


 俺は昼間に収得したばかりの癒やしの力を使い、子狐を治療した。


 とりあえず治療はしたが、子狐はまだ寝ている。

 俺は変身を解いて狐を抱え上げると、ユウが寝ている方へ移動するため後ろを振り向く。

 そこに、寝ていたはずのユウがいた。


 どうやら上半身の力だけで移動してきたようだ。







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