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【第35話】帰還 日本へ

お待たせしました。

って、待っててくれた人っているのかな?

何はともあれ完結です。


「ワタル様、ユウ様、それにキュウちゃん。

 このたびは魔王軍の撃退に助力いただき本当にありがとうございました。

 戦力を失った魔王軍は深く魔の国の奥地へと撤退した模様です。

 しばらくは再侵攻できる余力もないでしょう。

 本当にありがとうございました」

 そう言ったのはちょっとつり目がちの恐ろしいほどの美少女、アルテーシア・ウインザード様だ。


 戦いが終わった俺たちは、今、領都ウインザードのウインザー侯爵邸応接間で侯爵令嬢のアルテーシア様に対面している。

「反乱分子によって無理矢理この世界へ拉致されたにもかかわらず、人々のために協力してくれたお二人には言葉にし尽くせないほど感謝しております。ありがとうございます」

 丁寧に頭を下げるアルテーシア様は貴族の傲慢さを全く感じさせないが、凄まじい存在感は放ち続けている。おそらくこの人は相当に強い。

 そういえばウインザードの町に入る前の平原に一面、焼け焦げたところやクレーターだらけになったところなど、何の天変地異が起こったのかと驚かされた場所が合ったが……


「こちらの反乱分子もめでたく粛正できましたので、これで違法召喚された異世界の方々を元の世界に帰すことができるようになりました。

 反乱分子の元にいた異世界人の方は既に元の世界に帰って頂いております。

 あなた方もすぐにでもお帰りいただけるところですが、できれば明日行われる祝勝パレードに参加していただきたいのです。

 魔王軍撃退の英雄を民に紹介した後、ウインザードの全ての民に見送らせて、あなた方を元の世界へお届けし、この戦いの終わりを印象づけたいと思っています。

 ご協力いただけないでしょうか」


「了解しました、アルテーシア様。

 ユウもそれでいいかな」

「僕はワタルがいいなら、パレードは少し恥ずかしいけど、これも土産話にいいかもって……」

「と言うことですので、明日のパレードの件は了解しました」

 俺たちが了承の意思を示すとアルテーシア様は嬉しそうに頷いた。

「ありがとうございます。

 それでは明日までの短い期間ではありますが、領都の観光などしておくつろぎください。それと、これは少ないですが報奨金です。観光のときの買い物にお使いください」

 そう言って差し出された人の頭ほどの大きさの革袋はずしりと重く、中身がどうかだとしてもかなりの金額であることが窺えた。

 実際は金貨だったので、日本円にして5億円ほどの価値がありそうだ。


 その後、侯爵邸の中庭でお茶に招待され、領都の周りの焼け野原がアルテーシア様の魔法によるものだと友人のペリーヌ様に暴露されたアルテーシア様が恥ずかしそうに赤くなる場面など堪能し、午後からはウインザードの街で買い物を楽しんだ。

 キュウちゃんはアルテーシア様のペットのレインボースライムとすっかり仲良くなったようだ。

 夕食を侯爵邸で頂いて客間に案内されたときに、キュウちゃんにくっついてレインボースライムが遊びに来て戯れていた。


 無事にパレードを終えた俺たちは、今侯爵邸の正門前にいる。

 見送り、と言うより見物だろうか、町中の人が領都前に集まり、俺たちの日本への帰還を見守っている。


「それでは準備はよろしいですか、お二人とも」

 アルテーシア様の言葉に俺とユウは頷く。

「アルテーシア様、一つお願いがあるのですが……」

 俺は昨晩、ユウと話し合っていたことを伝える。

「何でしょう、私にできることであれば良いのですが」

「はい、実はキュウちゃんの件です。

 キュウちゃんはこの世界の生き物です。

 人になれており、危険はありませんが、俺たちの世界には同族が全くいない状態です。

 ユウやキュウちゃん本人とも話したのですが、野山にはなって害獣と間違えられるのもかわいそうなので、できればアルテーシア様に保護していただけないでしょうか」

「ああ、その程度のことなら問題ありません。うちのレイとも仲良くなったみたいですので、侯爵邸で面倒を見ましょう。

 キュウちゃん、貴方もそれでいい?」

 アルテーシア様に話しかけられてキュウちゃんは「キュウ」となき、俺たちから離れてアルテーシア様の隣へ並んだ。お見送りの体勢である。


「それでは転移ゲートを起動します。事前の説明通り、元の世界の時間と場所を強くイメージしてください」

 アルテーシア様はそう言うと、ペリーヌ様とともに魔道具を起動させ転移ゲートの魔方陣を出現させる。

 上空10メートル程に出現した魔方陣は、こちらに来るときの魔方陣のように俺たちを吸引することはなく、代わりに魔方陣から虹の橋が出現して俺たちの前に接地した。

「さあ、その虹を渡ってください」

 アルテーシア様の言葉に頷くと、俺はユウを横抱きにして虹へと足を進める。

「ちょっと、ワタル!いきなり何よ。僕は杖で歩けるよ」

 ユウは抗議の声を上げるが無視だ。

「ワタルってば!」

 ちょっとジタバタするユウをがっちり支えて俺たちは異世界の人々が見守る中、虹の橋を上った。


「キュウ」

 魔方陣に入った瞬間に、キュウちゃんが一際大きく泣いた声が歓声の中でも耳に届いた。






 魔方陣を抜けると、そこは俺たちが吸い込まれた駅へと続く道の上空5メートルと言うところだった。

 当然落下するが、俺はユウを抱えたまま無事に着地する。

 変身前だというのに難なく着地できた。

 異世界での戦いで身体能力がかなり上がっているのだろうか。


「これを見越して抱っこしてくれたんだね、ワタル」

 横抱きにされたままユウがいう。

「ああ、吸い込まれたのがかなり高いところだったから、同じ空間と時間をイメージすると上空に出現するんじゃないかと思ったんだ」

「そうか……、ありがとうワタル。

 確かに松葉杖では着地できなかったよ」

「そうだな」

「それでね、ワタル。

 僕から一つお願いがあるんだ」

 ユウが少し頬を赤らめながら俺を見つめる。もちろん抱っこされたままだ。

「なんだ」

「あのね、ワタル……」

 しばらくの間、言葉が切れる。

「あのね、あのね、」

 声が小さくなる。

「好きです、ワタル。僕と付き合ってください!」

「えっ」


 まさかのユウからの告白だった。

 好意を向けられうれしく思う反面、疑問も浮かぶ。

「ちょっと待ってくれ、ユウ。

 好いてもらうのは嬉しいが、ユウは確か、『体は女でも、心は男、恋愛対象は女性です』って言ってなかったか」

「うっ、そうなんだけど……

 どうもね、『体は女、心は男、恋愛対象はワタル限定』になったみたい……

 僕ってゲイなのかな?」

「いや、ゲイってのは『体は男、心も男、恋愛対象も男』って人たちだろ。

 『体が女で恋愛対象が男』ならノーマルじゃないか?」

「でも、でもね……僕、こころは『男』のままかも知れないんだ」

「???」

 正直わからなくなった。

「それで、返事はどうかな?」

 ユウが上目遣いで俺を見つめる。もちろん抱っこされたまま……


 戦いに明け暮れ、記憶喪失にもなり、『彼女いない歴=年齢』の俺に断る術はなかった。

「わかったよ、ユウ。

 これからは彼女として付き合ってくれ」

「彼女……、うん、でもね、僕、もしかしたら彼氏かもよ?」

 こうして俺に彼女兼彼氏ができた。






 その後、俺はユウの下半身不随を見てもらうため、ユウを病院に連れて行った。

 結果は3日後と言うことなので、しばらく俺の部屋で同棲することにする。

 キュウちゃんなしでは移動にかなりの制限がかかるので、慣れるまでは俺が補助するためだ。

 一旦ユウを俺の部屋に連れて行った後、俺はカラフルレンジャー解散パーティーへ参加するため急いで部屋を出た。

「同棲初日に放置ですか!」

 と、かわいくむくれるユウに早めの帰宅とお土産を約束してパーティーへと向かった俺だったが、それがまさかあんな事件に巻き込まれるとは、このときの俺は知るよしもなかったのだが……、それはまた別のお話だ。


 こうして俺の異世界旅行は、人生初の彼女(彼氏?)ができたと言うことで幕を下ろしたのである。


《完》



遅くなりましたが、やっと最後までかけました。

読んでいただきありがとうございました。


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