【第34話】静寂と喧噪
なんとかキリがいいところまで書けました。
そう、B級プチうまサワガニアルゴンレーザーこそは、本来のZ3の敵、ネオジャドーの最強怪人だ。
まさかのラスボス二体目……
しかも、日本で戦ったときも、ギリギリの勝利だった。
そいつがこの世界に召喚転生されて、強化されているのだ。
まずい。
さっきの一撃で俺の変身は解け、背中に相応のダメージを負ってしまった。
しかし、ここで負けるわけにはいかない。
まずは、回復のためにカラフルブルーに変身したいところだが、やつはそんな暇を与えてくれるのだろうか。
「ぐははは
強化されたこのS級激うまタラバガニキセノンレーザー様がすぐに貴様に引導を渡してくれる」
どうやら暇はなさそうだ。
それにしても、こいつは珍しく名前があまり長くなってないじゃないか。まあ、元々長めだったからそんなものかも知れないが、なんだか少し感動する。
しかし、名前の内容は、B級がS級に、プチうまが激うまに、サワガニがタラバガニに、アルゴンレーザーがキセノンレーザーに全てパワーアップされている。
A級やクリプトンレーザーを飛ばして全てが二段階特進したとでも言うのだろうか……
一瞬奴の新しい名前について考察したが……、しかし、猶予はなさそうだ。
俺は現在の最強形態になるべく、まずはZ3に変身する。
「レディー、変身!セット!! 変身!Z3(ズィースリー)!!!」
続いてすぐにカラフルレンジャースーツを起動する。
「チェンジ! カラフルメタモルフォーゼ! ブルー!」
赤から青に変色したZ3で最後の決戦に挑む。
この形態になって自然と理解した。青いZ3は周囲への魔力漏れが赤いときよりも少ない。
間違いなく、カラフルレンジャースーツの効果で魔力漏れが抑えられている。
これなら、いつものZ3よりも長時間活動できるかも知れない。
選べる作戦も増えるというものだ。
そんなことを考えていると目の前にS級激うまタラバガニキセノンレーザーが迫っていた。
速い!
「タラバパンチ」
ハサミ状の腕が俺の左頬にヒットし、正面からの単純な攻撃だというのに、先ほど同様吹き飛ばされる。
「カーニカニカニ!
弱い、弱いぞZ3!!
いや、俺様が強くなりすぎたのか」
S級激うまタラバガニキセノンレーザーは日本で互角だったときに比べて大幅に強くなっていた。
Z3自身も、かなりこの世界で強化されているはずなのに、歯が立たない。
しかし、俺の後ろには、ゆうやキュウちゃん、冒険者ギルドのみんな、街の人々がいる。
諦めるわけにはいかない。
持てる力を全て出す。強い決意を胸に敵に突撃する。
「カーニカニカニ!
無駄だ無駄だ
俺様は貴様よりも3倍強い!
必殺のレーザー攻撃を出すまでもないわい!!!」
俺のパンチやキックはことごとくかわされるか受け止められ、敵の攻撃は確実に俺にダメージを与えていく。
「カーニカニカニ!
少し本気を出してやるわい
タラバアッパーレーザーパンチ」
レーザーからエネルギー供給を受けた敵のハサミパンチが顎に命中し、俺は空中に舞った後地面に転がる。
衝撃で変身が解ける。
まずい。
奴のパワーは明らかに現在のZ3最強形態を上回っている。
変身前の俺の力を10とするなら、Z3になることで100倍、カラフルブルーの能力を加えることで+100……
10*100+100=1100の力が通用しない。
通常の訓練した人間の110倍の力が……
奴の3倍強いという言葉が本当なら、奴は人の330倍の強さと言うことなのか……
「頑張ってワタル!
僕も戦う!!!」
絶望的な状況にくじけそうになる俺に、ユウの声が聞こえた。
キュウちゃんの変身したマシンに乗ってユウがこちらへ突っ込んでくる。
「よせ!
おまえたちでは無理だ」
俺の叫びが聞こえないのか、ユウとキュウちゃんはS級激うまタラバガニキセノンレーザーへ突撃していく。
キュウちゃんの変身したブルーライトアースが先端のドリルを回転させてS級激うまタラバガニキセノンレーザーの胸板へ激突する。
しかし、今まで数多の魔物を貫いてきたドリルが、奴の甲殻外皮に阻まれて突き刺さらない。
「カーニカニカニ
こそばゆいわ!」
「それならこれでどう?
ブライトショット」
至近距離からユウの光魔法が炸裂し、S級激うまタラバガニキセノンレーザーは煙に包まれる。
「やった!」
ユウの声が聞こえた瞬間、キュウちゃんごと吹き飛ばされて二人は俺の後ろへ転がる。
無傷のS級激うまタラバガニキセノンレーザーが右腕を振り抜いた姿勢でこちらを見ていた。
「ユウ、キュウちゃん大丈夫か!」
「ううう、ごめんなさい。ムリみたい」「きゅううう」
二人はかなりのダメージを負ってしまったようだ。
本当ならすぐにでもカラフルブルーにチェンジして回復のスキルを使いたいが、敵がそれを許すとは思えない。
「カーニカニカニ
弱い、弱すぎる!
そろそろ飽きてきたわい。
どれ、必殺のレーザーをくれてやろう」
奴の額のレーザー発射口が不気味に輝きはじめる。
まずい。
絶体絶命だ。
どうする。
何か手はないのか。
奴には10×100+100=1100の力では歯が立たない……
そのとき、俺の脳裏にある数式がひらめいた。
10×100+100=1100
では(10+100)×100ならどうだ……
答えは11000……
まずカラフルブルーに変身して、+100……
更にそこからZ3に変身して100倍……
しかし、そんなことが本当にできるのか?
いや、できるできないじゃない。
やるしかないんだ。
「チェンジ! カラフルメタモルフォーゼ! ブルー!」
ブレスレットの宝玉を回転させ、まずはカラフルブルーへと変身する。
すかさず次の変身に入る。
「レディー、変身!セット!!」
ブルースーツの上から丹田へと魔力が集まりベルトへと姿を変える。
「変身!Z3(ズィースリー)!!!」
成功した。
カラフルブルーにZ3の力を乗せることができたと確信できる。
しかし、何だ、この消費魔力は……
これでは、この状態を維持できる時間は10秒しかないぞ。
大幅に強化された思考力でそこまで理解したが、俺に焦りはない。
なぜなら10秒もあれば十分だと分かってしまったからだ。
S級激うまタラバガニキセノンレーザーはさっきの姿勢のままほとんど動いていない。
周囲の全てが、まるで時を止めたかのように静止している。
いや、正確にはわずかに動いているがそれがあまりにも遅いのだ。
俺は、その止まりかけた世界の中を全力で翔る。
S級激うまタラバガニキセノンレーザーの正面へと至り、今にも発射されそうな奴の額にパンチをたたき込む。
その間、わずかに0.01秒。
そう、敵が遅くなったのではない。俺が速くなったのだ。
まるで時間の流れからはみ出したかのように俺は動くことができると確信した。
活動残り時間9.99秒。
十分だ。
残りの魔物の間を駆け抜けながら、パンチやチョップで攻撃する。
魔物たちは自分が攻撃されたことすら気がつかずに絶命していく。
俺の遙か後方に0.1秒前に攻撃した魔物が破裂して飛び散っていく。
最初に爆発したのはもちろん、S級激うまタラバガニキセノンレーザーだ。
おそらく奴は自分が勝ったと思ったまま死んだのだろう。
そして10秒後、俺はユウとキュウちゃんのところに戻り、最後の魔力で二人を回復する。
タイムオーバー……
俺の変身が解けると同時に、攻めてきた魔物たちはきれいに消滅した。
「こ、これは……
ワタルさんがやったんですか?」
「ああ、ギリギリで新しい能力に目覚めることができたようだ」
「す、すごい……」「きゅう」
今まで戦っていた敵が突然爆散したため、冒険者や兵士のみんなも茫然自失となり、辺りは静寂に包まれた。
そして、1分ほどったったころ、ぽつりぽつりとざわめきが広がり、自分たちが助かったと確信したころ、辺りは歓声に包まれた。
「やったー」
「勝った」
「俺たちは助かったぞー」
戦場となった平原のあちこちで人々の喜びが叫びとなってとどろいた。
後はエピローグ的な部分を残すのみとなりました。
いつ書き終わるか分かりませんが気長にお待ちください。




