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【第29話】キュウちゃんに乗ってみよう!


 昼食後は雑談をしながらクマの解体である。

 なんと言ってもサイズのでかい奴が多かったので、かなり手こずりそうだ。

 特にグレイとベアの方はワンボックスカー並みのサイズなので最上部までなかなか手が届かない。

 飛び乗って解体出来る部分はいいが、やはり横から包丁を入れないと解体しにくい部分も多いのだ。


 さて困ったと思っていると足下にキュウちゃんが依ってきた。

 いや、足下と言うのはいささか語弊がある。

 腰よりかなり高いところにキュウちゃんの頭が来ている。


「キュウちゃん、もしかしてまたでかくなったか?」

「キュウ!」

 俺が尋ねると、昼飯を食って元気を取り戻したキュウちゃんが返事をした。


 犬で言えばセントバーナードやピレネー犬のサイズだろうか。

 昔懐かしいヨーゼフやジョリィに変化へんげしてもらいたいなどと考えてしまう。

 それにしてもこのサイズなら乗れるのではなかろうか。

 実際セントバーナードは山岳救助犬として人を背中に乗せて運ぶこともあると言う。


 そのとき一つのひらめきが俺の脳裏をかすめる。

「キュウちゃん、ユウを乗せて移動出来るか」

 キュウちゃんの瞳を見ながらゆっくりと話す。


「きゅうー」

 どうやら伝わったようだ。

 キュウちゃんはふせの体勢を取ると、ユウの方へ顔を向けて自分の背中の方に首を振る。


「僕に乗れってことなの?」

「きゅうー!」

 ユウが問いかけると、そうだというようにキュウちゃんがなく。


「ユウ乗ってみてくれ」

「分かりました」

 ユウはキュウちゃんの横まで移動するとキュウちゃんの背に横のりする。

 下半身が動かないユウにとって、キュウちゃんの背を跨ぐとい言う動作は難しいためだ。

 俺がユウから松葉杖を預かると、キュウちゃんはゆっくりと立ち上がった。

「どうだユウ、バランスは取れそうか?」

「下半身が言うことを聞かないのでちょっと不安定ですね。

 でも、何とかなりそうです」

「そうか。

 キュウちゃん、ゆっくり歩いてみてくれ」

「きゅうー!」


 一声ひとこえないてキュウちゃんがゆっくりと歩き出す。

 出来るだけ揺らさないようにしてくれている。

「大丈夫か、ユウ?」

「ハッハイ、何とか大丈夫です」

 ちょっと揺れて危なっかしいが、上手くバランスを取っている。

 少し練習すれば、松葉杖で移動するよりかなり速く移動出来そうだ。


 そう考えていると突然キュウちゃんがブルーライトアースに変化へんげした。

 ユウはそのまま運転席に収まっている。


 体が成長したことで変化したときのサイズも大きくなり、今やキュウちゃんのブルーライトアースは実物の二分の一を越える大きさとなっている。

 本来二人がけのシートがちょうど一人用のサイズとなり、オープンカースタイルでユウの上半身は車から出ているような形だ。

 小さな子供の乗るおもちゃの車を大きくしたような様子はほほえましい。


 などと考えているとユウを乗せたキュウちゃんは高速で辺りを走りまわり始めた。

「ワタルさん、すごいです!

 このスピードでも安定していて、背中に乗るより安心です」

「きゅきゅーー!」


 ユウの嬉しそうな声にキュウちゃんも絶好調だ。

 しかしこの状態だと、ユウを乗せたままドリルで突撃は出来ない。


 そのとき俺はひらめいた。

「キュウちゃん、トルネードスカイハイに変化してみてくれ」

「きゅきゅうー!!」

 俺はキュウちゃんに俺のもう一つの愛車、Z3の専用マシンであるトルネードスカイハイへ変化するよう頼む。


 トルネードスカイハイは車としてだけではなく、車体の横に収納されたカッターウイングを展開することで空飛ぶマシンとなることが出来る。

 コンコルドを彷彿とさせる羽の両端は研ぎ澄まされた刃となり、並み居る雑魚戦闘員を上下に両断することが出来る優れものだ。


 トルネードスカイハイへと変化したキュウちゃんに更に指示を出す。

「キュウちゃん、カッターウイング展開だ!」

「きゅう!」


 車体から羽を出したキュウちゃんが大空へと滑空していく。

「きゅゅううーーー」

「うわあぁ!

 すごい!!

 ジェットコースターみたいです」


 どうやらユウもキュウちゃんも喜んでいるようだ。


「キュウちゃん、あまりとびまわると魔力切れを起こすぞ。

 基本は地上を走行してくれ」


 俺の指示で着陸し、キュウちゃんは一旦変化を解く。

 変化が解けた状態では、ユウはキュウちゃんの背中に乗っていた。


 優の表情は少し青ざめて少し硬くなっている。

 さっきまであれほど喜んでいるように見えたのに、乗り物酔いだろうか。


「大丈夫かユウ?

 これでユウの移動が随分楽になるな」

「はい、助かります。

 それよりさっき着陸する前、遠くに複数の人影のようなものが見えたんですが、そちらが気になります」


 さっきまでの興奮が嘘のように、ユウが緊張した表情をしていたのはそういう理由だったのかと納得した。

「何だと思う」

 俺の問いにユウが静かに答えた。


「誰もが討伐依頼を避けるようなクマの魔物が徘徊していたこの辺りに、あの数の人がいるとは思えません。

 可能性としては、人型のモンスターではないでしょうか」


 俺は静かに頷くと、いつでも変身できるように腕のブレスレットに手をかけた。







ついにキュウちゃん乗り物化計画が完了しました。

次回は久々に戦闘です。


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