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【第26話】害獣を駆除しよう

今年最後の更新です。

今回は切りがいいところまで話しを進めたかったため、いつもより長めとなっています。


 キューちゃんが大活躍した翌日も俺たちはギルドで依頼を受けることにした。

 昨日と同じく、早朝からギルドは大賑わいだ。


「まだありますね、あの依頼……」

 ユウは昨日受けようかどうしようか悩んだ『フォレストベアー緊急討伐』の依頼票を見ながら呟く。


「ああ、ベテラン3人で何とか互角という化け物が3体だからな。

 なかなか引き受ける冒険者がいないんだろう」

 俺は、別の依頼票を確認しながら返事をする。


「あっ、これなんかどうですか」

 ユウが依頼票のうちの一枚を指指ゆびさしてこちらを見る。


「どれだ……」

 ユウが示しているのは、鹿の魔獣、トリプルホーンディールの討伐依頼だった。


「これなら素材としても売れるかも知れませんし、鹿なら食べられるかも知れません」

「なるほど、となると後は討伐の難易度だな。

 聞いてみよう」

 俺は依頼票を掲示板から剥がすと、受付へ並ぶ。

 今日はちょうど冒険者が集まる時間帯と言うこともあり、窓口は3つ空いており、

一列に並んだ冒険者が、順番に開いた窓口へと歩を進めている。


 俺はたまたま一番左で業務をしていたエリーさんの窓口になった。

「エリーさん、おはよう。

 早速だが、このトリプルホーンディールの討伐依頼を受けようと思うのだが、難易度はどの程度の魔物なんだか教えてくれ」


「おはようございます。ワタルさん。

 トリプルホーンディールは体長1メートル半ほどの魔獣で、頭の角で突き刺す攻撃の他、蹴飛ばす攻撃なども強力で、逃げ足も速いので討伐が難しい魔物に分類されています。

 畑の農作物を食い荒らす害獣で、魔物の一種であるためその食欲は普通の鹿より遙かに大きい厄介者です。

 見た目は凶悪そうな赤い目をした可愛げのない鹿ですね。

 攻撃性よりも逃げ足に注意が必要です。

 追い詰められなければまず逃げを選択する魔獣なので、危険性は少ないのですが、失敗した場合報酬額の1割に相当する違約金が発生します。

 スライムやゴブリンの魔石を昨日あれだけ一度に持ってこられたお二人なら、きっと大丈夫と思いますが……

 遭遇したらまず逃げられないようにご注意ください。それと追い詰めたときの反撃には気をつける必要があります」

 エリーさんは流れるように説明してくれた。


「分かった。

 それではこの討伐依頼を受けたいと思う」

 俺は簡潔に依頼の受諾を伝える。


「わかりました。

 この依頼では東の草原と森の境界で7から8頭のトリプルホーンディールが目撃されているとあります。実際の数は誤差があるかも知れません。

 畑の農作物被害が拡大する前に少なくとも半数以上を討伐し、群れ自体を付近ふきんから追い出して欲しいと言うことですので、4頭以上の討伐が出来れば依頼完了となります。群れが予想より大きかったときは、討伐数に応じて追加報酬が出ます。

 魔物の魔石、皮、肉や角などの素材は討伐者に所有権がありますので、ギルドで売却してもかまいませんし、商業ギルドに販売してもかまいません。

 依頼達成期日は受諾後7日間までとなりますので、8日目以降になった場合は違約金が発生します。

 なお、近くの東の森ではフォレストベアーの目撃情報がありますので、森に入り込まないようにご注意ください。

 以上です」

「ありがとう」「ありがとうございます」

 受付完了の印を押してもらった依頼票を受け取ると、俺とユウは礼を言ってきびすを返す。

 すると、次の冒険者パーティーとすれ違った。


「邪魔だ、邪魔だ」

 10人組の大パーティーが我が物顔で俺たちと入れ違いにエリーさんの窓口へ進む。


「あっ」

 よけたはずみに、ユウが松葉杖を片方落としてしまい、バランスを崩してこけそうになった。

 俺は咄嗟にユウを支え、床に落ちた松葉杖を拾う。

「大丈夫か?」

「ええ、僕は大丈夫です。ありがとうございます」


「ちっ、足が動かねえような奴はここに来るな。邪魔だ」

 乱暴な一行のうちの依頼票を持っているクマのような厳つい奴がユウを睨みながら言い放つ。

 むかっとしたのでちょっと注意しようとすると、エリーさんが先んじて冒険者達を叱責した。


「ドノバンさん。冒険者同士のもめ事は禁止ですよ。

 守れないなら冒険者カードを無効にしますがよろしいですか」

「ちっ、仕方ねえ。

 それより仕事だ。

 俺たちがこの焦げ付きかけてるクマ退治の依頼を受けてやるからありがたく思うんだな」

 ドノバンと呼ばれたパーティーリーダーらしき男の手には、先ほど俺たちも見たフォレストベアーの依頼票が握られていた。


 俺は、もめ事になる前に対処してくれたエリーさんに目礼すると、これ以上のやっかいごとが発生する前に退散することにする。


「ドノバンさん。いくら人数を集めても、あなたたちの実力ではあまりお勧め出来ない依頼なのですが……」

「うるせぇ!こうして10人集めてきたんだから、とっととはんこを押しやがれ」

 カウンターから出口へ向かう途中に、ドノバンがエリーさんともめているらしい声が聞こえてきた。

 それにしても、熊のような男がクマ退治とは、間違えられて味方にやられてしまえばいいのになどと正義の味方らしからぬことを考えながら、冒険者ギルドを後にした。






 今日の目的地の東の草原と森の境界付近は、町の南東にある門から出た方が近いという情報をギルドで仕入れた俺たちは、南東の門まで舗装された道を移動する。

 ユウが車いすで移動出来た分、昨日よりも早い時間で東の草原に到達出来た。

 未舗装路にかかったところで車いすは俺のアイテムボックスに収納している。


 草原をユウの松葉杖にあわせてゆっくりと移動しながら、スライムやゴブリンを片付けていく。


 今日もキューちゃんのブルーライトアースは絶好調で、スライムもゴブリンも次々に屠っていく。

 昨日かなりレベルアップしたため、この辺りの弱小モンスターではレベルが上がりにくくなっているようで、本日は昨日のように急成長はしていない。


 草原を進むことおよそ1時間半、俺たちは森と草原の境界エリアまで到達していた。

 後は目的のトリプルホーンディアを探して4頭以上を駆除するだけだ。

 と言っても、このエリアもなかなか広い。

 適当にさまよっていても見つかるかどうか分からない。

 こんなとき索敵魔法が使えると便利なのだが、素の状態では俺もユウもそのような魔法は使えない。


「ちっ、仕方ない。

 魔力の無駄遣いだが見つからないよりはマシだ」


 俺は覚悟を決めて魔力燃費効率最悪のZ3に変身することにする。


「変身して索敵系の能力を使う」

「そんな便利な能力があるんですか?」「きゅう?」

 ユウとキュウちゃんが目を輝かせて俺を見る。


「ああ、上空から監視出来る端末を打ち上げる。

 しかし、魔力燃費効率は最悪だから、出来るだけ短時間ですませる。

 ユウ、キュウちゃん、変身するときに周囲の魔力を吸収してしまうから少し離れていてくれ。

 お前達の魔力も吸収してしまう可能性がある」


 俺はそう言うと丹田の前で両手を合わせて印を結ぶ。


「レディー、変身!セット!!」


 ユウとキュウちゃんが俺から少し距離を取る。


「変身!Z3(ズィースリー)!!!」


 周囲の魔力がベルトへ集まり、俺はZ3へと姿を変える。

「ホントだ!僕の中から何かが吸い出された感覚がある」「きゅ、きゅぅー」

 ユウとキュウちゃんとが自身から魔力を吸われるという初めての感覚に驚きの声を上げる。


 俺は変身するやいなや、ベルトの左側に装着されている端末を取り外しスイッチを押して射出する。

「Z3ディテクター!

 シュート!!」


 ペンシル型ロケットが真上へと打ち上がり、視界から消えたところでパラシュートが開いてゆっくりと降下してくる。


「監視モード起動!」

 草原と森の境界付近を半径500mほどの範囲で索敵し、情報がZ3マスクに送られてくるが、可視光線のカメラにそれらしき鹿の群れは見当たらない。

 森の木の陰に入られると、このモードでは発見困難だ。


「シフトインナーレッドモード」

 可視光線から赤外線索敵モードへ切り替える。

 こうしている間にも、ごりごりと魔力を消費している感覚がある。

 時間との勝負だ。


 今もし敵に襲われて戦闘になり、魔力切れで変身が解けたら、周囲の魔力が回復していない状態では再び変身することは困難だ。

 もちろん自分自身に内包している魔力も空になるから、カラフルブルーへの変身も叶わない。

 Z3は将に短期決戦型のフォームと言える。


「見つけた。たぶんあれだ。

 四足歩行の動物と思われる熱源が10体ほど、ここから北へ300メートルほど移動した、森の入り口付近に集まっている」


 Z3ディテクター回収後、俺はすぐに変身をとき、ユウとキュウちゃんを連れて移動を始める。

 今回の討伐対象は、自分たちが不利と見るとすぐに高速で逃走する性質を持つ。

 俺が変身して戦えば瞬殺出来るだろうが、あくまでもユウとキュウちゃんのレベリングが目的だ。俺が倒してしまっては意味が無い。


「ユウ、こちら側からゆっくり出来るだけ音を立てないように移動してくれ」

「分かりました」

「俺はキュウちゃんと草原側から回り込む。

 俺たちが仕掛けたら、お前も遠距離から攻撃してくれ」

「了解です」


 俺たちは簡単に作戦を立てて早速行動に移す。挟み撃ちだ。

 ギルドの情報より2体ほど多いので半数以上の依頼達成条件を満たすには5頭以上のトリプルホーンディアを仕留める必要がある。

 まあ、律儀に10頭いたことを報告すればなのだが、その辺りは正義の味方として誤魔化したくないところだ。


 俺とキュウちゃんはユウが待機している草むらと鹿を挟んでちょうど反対の位置へ注意深く移動する。


「キュウちゃん、出来るだけ静かに近づいて、一気に飛び出し出来る範囲で仕留めるんだ。

 こちら側から攻撃すれば、鹿は習性で真っ直ぐユウの方向へ逃げるはずだ。

 火魔法は素材の毛皮と肉が傷むから使わないでくれ。

 やれるか?」

「きゅう!!」

 まかせろと言っているようだ。


 俺が視線で合図すると、キュウちゃんは小型化の変化へんげを解いて秋田犬サイズにもどり、姿勢を低くして無音で鹿の群れに接近を図る。


 辺りは無風であることもあり、遠くに森の小鳥のさえずりやせせらぎの音が聞こえるくらいで至って静寂な状態だ。


 キュウちゃんはそのまま鹿の群れが一カ所に固まっている空き地に一番近い草むらまで移動している。

 まだ鹿達はこちらに気づいていない。


 一瞬こちらを振り返ったキュウちゃんに身振りでゴーサインを出す。


 キュウちゃんは四本の足に力をためて、一気にジャンプし鹿達の視界にその姿を現す。

 同時に変化へんげの魔法を発動し、ブルーライトアースへと変身して先端のドリルから突撃を敢行する。


 鹿達は一瞬びくっとなり制止したが、次の瞬間にはキュウちゃんが突撃してきた方向と反対方向へ一斉に踵を返し逃げようとする。

 しかし、キュウちゃんの方が一瞬早い。


 キュイィィーーーーン


 高速回転するドリルの音を響かせて、最も大きい群れのボスとおぼしき雄鹿にキュウちゃんが突撃した。

 ちょうど体を反転させている途中にキュウちゃんのドリル攻撃を食らった大鹿は、左後方から腹部を貫かれて即死する。

 着地したキュウちゃんは、鹿の群れがトップスピードに乗る前に後ろから追撃し、更に一頭を仕留める。こちらは右斜め後方から腹部を貫かれている。

 背中の毛皮に傷がないように配慮しているとしたらキュウちゃんはたいしたものだ。


 残る八頭は、得体の知れないブルーライトアース号の突撃にパニックとなり、一気にユウが待機している草むらの方へと加速していく。


「ブライトスプリトショット」

 ユウの詠唱が聞こえた瞬間、正面からユウの放った三本の光線が先頭を逃げていた鹿3体の眉間を打ち抜く。

 ユウの光魔法も昨日のゴブリン狩りで成長したのだろう。威力を増しているようだ。


 これで半分の5体。ノルマ達成だ。


 鹿達は前後から挟み撃ちされ、ここで直角に方向転換して草原の方へと逃げ出す。


 ユウの魔法の追撃は詠唱時間の関係で間に合わないかも知れないと思っていると、9本のシッポをはやした状態のブルーライトアースがドリフトターンを決めて鹿達を追う。

 シッポの先端に魔力が収束していく。


「まずい、キュウちゃん。

 大規模な火魔法は素材もダメになるし、枯れ草に燃え移って火事になるぞ」

 俺は大声で警告する。


 しかし、いらない心配だったようだ。

 キュウちゃんが狐火の魔法を使うとき、シッポの先端には集まった魔力が赤く発光するのだが、今は青白く発光している。

「火魔法じゃないのか……」


 俺が事態を見守っているとキュウちゃんの魔法が発動した。

 その瞬間、辺りを冷気が包む。


 青白い光球が鹿達の走る地面へと接触し、あっという間に地面を凍てつかせた。

 鹿達は足が地面にくっつき、走れなくなってその場でもがいている。


 力ずくで地面の氷から足を離しても、次に接地したところでまた凍り付く。


 そうこうしているうちにキュウちゃんが追いつき、鹿達の横から突撃した。

 流石に自分で放った魔法で凍り付くことはないようだ。

 3体の鹿をキュウちゃんが仕留めたところでユウの魔法の第二射が残りの二頭を仕留めた。







一年間お世話になりました。

次回更新は年明けです。

皆さん、良いお年をお迎えください。

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