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【第23話】キューちゃんの変化魔法


 あれから7日、朝夕と夜の見回りではこれといった異常もなく、取りあえず警備の仕事は一旦終了となった。


 ユウは中級魔法の講座も受講しているのだが、一通り区切りがつき、光魔法の回復系と簡単なレーザー光線系攻撃魔法を使えるようになった。ユウは、冒険者としての簡単な依頼をこなすことにしたようだ。


 驚いたのは、ユウと一緒に講座を聴いていたキューちゃんが火魔法を発動したことだ。

 ダブルテイルフォックスやその上位種であるナインステイルフォックスは元々火魔法が得意な魔獣である。

 狐火というファイヤーボールのような魔法を自然に覚えることも多い。

 キューちゃんが発動したのは将に小さな火球だった。

 成長して魔力が大きくなればそれにつれて大きな火球が出せるだろうと、先生役の魔道師が言っていたそうだ。

 キューちゃんが戦力となる日が来るかも知れない。


 ナインステイルフォックスには変化へんげ魔法というオリジナル魔法も種固有の魔法として存在し、こちらもその内覚えてくれるかも知れない。


「ちょっと見ておくかな」

 俺は、現在のキューちゃんのステータスが気になり、両目に力を入れて抱き上げた状態でキューちゃんを見つめる。


 名前  リトルナインスステイルフォックス

 レベル 3

 力   9

 魔力  33

 速さ  8

 素材 皮:防具、素材になる

    肉:食用可能 

 状態 テイム状態(テイム者:結城ワタル)

 スキル 狐火 変化へんげ


 なんと、既に変化を覚えているようだ。


「キューちゃん、何かに化けることは出来るかい?」

「キューー?」

 俺がキューちゃんの目を見ながら語りかけると、キューちゃんは意味がわからないというように首を傾け可愛く啼いた。


「かわいい!」

 その仕草に、横で見ていたユウがやられた。

「貸してください」

 俺からキューちゃんを取り上げると撫で繰り回している。


「きゅゅきゅっきゅーーー」

 キューちゃんは悲鳴とも喜びとも判別出来ないような鳴き声をあげるが、じたばたしているところを見るといささか迷惑しているようだ。


 一通り撫で倒されてぐったりしているキューちゃんをテーブルにのせ、俺は手持ち無沙汰に何となく紙ナプキンに落書きをする。

 たまたま持っていた鉛筆で、カラフルブルーの愛車であるブルーアースライトとZ3のマシン、トルネードスカイハイを描く。


 我ながらよく書けたと思っていると、それを見たキューちゃんの魔力が大きく膨らんだように感じた。

 瞬間、そこには真っ白いブルーアースライトの模型があった。

 前方に付属した二つの巨大ドリルもしっかりと再現されている。


「なっ!?」

 何で、突然ミニチュアのブルーアースライトが塗装前の状態で出現したのか……

 俺は驚き戸惑うが、そのとき、さっきまでテーブルにいたキューちゃんがいなくなっていることに気がつく。


 まさかキューちゃんなのだろうか?

「キューちゃん?」

 俺が問いかけると真っ白い模型が「きゅー」と鳴いた。


 すぐに両目に力を入れ、キューちゃんを鑑定する。


 名前  リトルナインスステイルフォックス

 レベル 3

 力   9

 魔力  33

 速さ  8

 素材 皮:防具、素材になる

    肉:食用可能 

 状態 テイム状態(テイム者:結城ワタル)

 スキル 狐火 変化へんげ発動中


 他のパラメーターは変化していないが、スキルの欄の変化が発動中になっている。


 やはり、このミニチュアはキューちゃんの変化した姿だった。


「キューちゃん、造形は完璧だが、色調が違う。

 ブルーライトアースの車体はメタリックブルーだ」

 俺がミニチュア模型に語りかけた瞬間、色が青く変化する。

 キューちゃんは色も変えることが出来るようだ。


 俺はそのまま配色を細かく指示していくと、10分後には原寸10分の1ほどの完璧なブルーライトアースが誕生していた。


「キューちゃん。ブルーアースライトはこの部分のタイヤが回転し、高速で走行出来たんだ。

 こっちのドリルで、地中を掘って進むことも出来る」


 俺は懐かしくなってブルーアースライトの性能を説明する。

 この頃には、公爵家別邸の食堂にいた他のメイドさんや話を聞きつけた使用人もキューちゃんの変化が珍しいためか見物に集まっていた。


「キュー!」

 模型のキューちゃんが一声高く鳴くと、タイヤが高速回転し、テーブルの上を縦横無尽に走りまわる。

 朝食用の食器を際際のコーナリングで器用に回避している。

 教えてもいないのにドリフトでターンしたり、カウンターを当てて高速コーナリングを繰り返す。

 すごいドライビングテクニックだ。俺より上手いかも知れない。


「「「おーーー」」」

 集まっていた観衆から思わず声が漏れる。


 注目されて嬉しいのかキュウちゃんはますます調子よく走りまわり、ついには前部のドリルを勢いよく回転させたかと思うと空中にジャンプし、斜め30度の角度でテーブルに突っ込む。


 もちろん、本物のブルーアースライトは平地でジャンプして空中に飛び出す機能はないが、キューちゃんはタイヤを弾ませ高く跳躍して見せた。


 ウイィィーーーン!

 ガリガリガリ…… ベキッ……


 次の瞬間、木製のテーブルに大穴が空き、キューちゃんの変化したブルーアースライトは床に突き刺さっていた。


 この後、俺はメイド長さんに平謝りに謝り、穴の空いたテーブルとキューちゃんが突き刺さった床を修理することとなった。


 材料を買い集め、テーブルと床の応急修理が終わったのはもう日が傾いた頃だった。流石に、すぐに新しい物を弁償する余裕はないため、板をはめ込み、おがくずと接着剤を混ぜた物で継ぎ目を埋めて、乾いてからはテーブルクロスで隠す。

 冒険者生活が軌道にのり、蓄えが出来たら何とか新しい物を購入して弁償したいが、侯爵家のダイニングテーブルがどれくらいのお値段なのか考えると頭痛がしてくる。

 キューちゃんは自分がしでかしたことに責任を感じたのか、材料運びを手伝った後はおとなしく傍らで様子を見ている。


 ユウとの魔物狩りが一日延期になったのは言うまでもない。







ブックマーク、評価いただいた方ありがとうございます。

次回は来週土曜日の更新予定です。

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