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【第2話】異世界人との遭遇


 俺は無力感に打ちひしがれる。


 目の前には今にも息を引き取りそうな高校生くらいの少年。

 先ほどまで吹き出ていた血も、今は勢いが弱まり、脈拍がいよいよ弱くなっていることがうかがえる。

 持っていたハンカチとツル植物で出血点を圧迫止血するが、これまでに流した血の量が多すぎ、気休めにもならない。


 やはり成功の見込みは低いが一か八かの賭に出るべきかと考えていると、遠方からひずめの音が近づいてきた。

 中世の騎士風の集団である。



 5騎の騎兵は馬から下りると俺たちの方へ歩いてくる。

「二人いるな……。

 どっちが異世界の勇者だ」


 先頭を歩いてきたえらそうな口ひげ男が上から目線で話しかけてくる。


「勇者?

 何のことだ??

 そんなことより、あんた達、この少年を何とか助けることは出来ないのか」


「何だ、勇者も知らんのか。

 まあいい。

 この魔力判定の宝玉を使えばわかることだ」


 俺の問いを無視して髭男は俺に水晶玉のような直径15センチほどの球を押しつける。


 水晶玉は淡く青色に光った。


「ちっ、弱いな。

 お前じゃない」


 俺を無視して、髭男は倒れている少年へ球を押しつける。


 今度は強い白色光が発生する。

「間違いない。

 こいつが勇者だ。

 しかし、これはひどいな。

 これでは使い物にならん。

 今回は失敗だ。

 お前達、引き上げるぞ」


 髭男の号令一喝、騎士達はあっという間に馬にまたがる。


「おい、ちょっと待て。

 この状況で俺たちを放っておくのか!」


 髭男のあまりの対応に俺は怒りの声を上げる。


「チッ、面倒な……。

 ここを南に2キロほど行けば町がある。

 後はそこで何とかしてもらえ」


 髭男はそれだけ言うと馬に鞭を入れようとする。


「待て!

 この少年をどうするとつもりだ」

 俺は声を荒らげ髭男の背中へ怒鳴る。


「そいつはどうせ助からん。

 アンデッドにしたくなければこいつで燃やしてやるんだな」


 髭男はそう言うと馬上から俺に革袋を投げてくる。


 俺がその袋を受け取ると同時に、男達は元来た方へと馬を駆っていなくなった。






 革袋の中には赤く輝く小さな石が入っていた。


 あの男の言葉が正しいなら、この石は少年1人くらいを燃やし尽くすほどの火力を持つアイテムと言うことになる。


 奴らはもはや少年の死は確定事項と確信しているらしい。


 しかし俺はこのアイテムを少年に使うつもりはない。

 なぜなら彼はまだ生きているからだ。

 俺はまだ望みを捨てていない。



 確かに現状の俺では彼を治療する手段はない。

 しかし、ないなら作ればいい。


 今の俺に出来なくても、未来の俺になら出来るかも知れない。

 俺は魔力を持っており、その扱い方も知っている。

 俺の持つブルーの魔力を回復の力へと調整出来れば……、可能性はある。


 昔、ピンクの奴が言っていた言葉を思い出す。

「水には癒やしの力があるはずなのに、なんでブルーはヒーリングが出来ないのかしら」


 そう、俺のカラフルブルーとして力は水の力。

 ピンクの言葉が正しいのなら、俺には可能性があるはずなのだ。


 仮面ドライバーの能力には他者を回復させるようなものはない。しかし、戦隊ヒーローとしての俺には可能性がある。


 これは賭だ。


 上手く行くかどうかはわからないが、上手く行かなければこの少年が理不尽な異世界人の所行によって一命を落としてしまうことになる。


 是が非でも、この賭には勝たなければならない。


「絶対助ける……」

 俺は自分に言い聞かせるように言葉を発し、自分自身に気合いを入れる。


「チェンジ! カラフルメタモルフォーゼ! ブルー!」

 ブレスレットの宝玉を回転させながら言葉を紡ぐ。


 瞬間、青い閃光に包まれて、俺はカラフルブルーに変身した。



 まずは明後日の方向を向いている少年の手足を、正常な方向へ戻す。

 特に右足は大量出血の原因になった傷口もあるので慎重に扱う。


 関節が外れているであろうところは、引っ張りながら関節を入れ正常な位置に調整する。


 開放骨折にこそなっていないが、明らかに折れている手と足は、近くに生えていた木を添え木にして当て、ツル植物で固定する。


 意識があれば痛みのため悶絶必至であるが、少年はただ今、絶賛危篤中である。

 痛いのなんのと暴れる心配はない。


 少年の手足はどうにか本来あるべき方向を向いた。



「ブルーフォース」


 俺はブレスレッドを装着している左腕に魔力を集める。


 ブレスレットから先の俺の腕が青く光り、やがて人差し指へと集まっていく。


 指先に集中したおかげで、青い光はその輝きを増し強く輝いている。


 この輝きは純粋なブルーの魔力だ。


 いつもはこの魔力に氷弾へなるような指向性を持たせたり、全てを凍てつかせるようなイメージを持たせたりして放っている。


 しかし今日は違う。


 俺は細胞や神経、骨、血管など、人体の構造物が全て正常な状態になるように、昔習った生物の授業を思い出しながらイメージする。


 指先の光が心なしか優しい柔らかさを含んだような気がする。


 俺はその光を倒れている少年へと静かに落とす。



 青い光はゆっくりと少年の中へ入っていき、やがて少年の体全体が青い光に包まれる。




 光が納まってから再び少年の脈を確認すると、先ほどは早く弱かった拍動が正常な状態に近づいている。


 どうやら効果はあったようだ。


 しかし、少年の意識は戻らない。


 このまま、放置すれば危険な動物や、先ほどの騎士が存在をにおわせていた魔物の餌食となるだろう。


 俺は変身を解くと少年を背負って南へと歩き始めた。







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