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【第17話】 名前は弱体化しているような気がするのだが、気のせいだろうか?


「モーーーニターーーーーー!

 情けないぞ、激レア純金冠仮面」


 かろうじて怪光線をかわした俺の前に現れたのは、やはり俺の知っている怪人だった。

 奴の名は液晶モニターバエ。

 Z3が倒したハエの怪人だ。


 ハエの両目の部分が32型のテレビモニターになっており、そのモニターから怪光線を発射してくる強敵だ。

 しかも、今現れた奴の目は、どう見ても32型より大きく、下手をすると50型モニターかも知れないという巨大サイズだ。

 あんな大きなテレビモニターを両目に一つずつつけていたら、頭が重くて大変そうだ。


「すまない、ご助力感謝する。ターバエの!」

「そんな名で、俺様を呼ぶのではない。

 今のパワーアップした俺様は薄型液晶プラズマテレビモニターアスワンツエツエバエ様だ」


 なんと、こいつも名前が長くなっている。しかも極端に……。

 このペースでは、落語の寿限無も真っ青な怪人が登場するのも、もはや時間の問題かも知れない。


 しかし、アスワンツエツエバエと言えば、エジプトナイル地方にしかいないという小バエのなかまで、日本のショウジョウバエ程度の大きさしかなかったような気がする。

 普通のハエより遙かに小さく、能力も低いのではなかろうか。


 俺が「名前は弱体化しているぞ」と指摘するべきか考えていると、ハエ怪人はこちらに視線を向けてきた。

 もうこいつのことはハエ怪人と脳内で呼ぶことにしよう。


「モーーーニターーー!

 俺様の雄姿を見て真っ青になっているようだな!

 ふははっ!!」

 失礼な奴だ。俺は早速訂正してやる。


「俺は、カラフルブルー!

 全色戦隊カラフルレンジャーのカラフルブルーだ。

 俺のパワードスーツは元々青い!」


「なっ、紛らわしい奴め!

 これでも食らえ!!!」


 ハエ怪人は間違いを指摘された恥ずかしさを隠すかのごとく、モニターの目から怪光線を発射してくる。


「トウッ!」

 ジャンプしてかわすと俺の背後の低木が一瞬にして消滅する。


 前は、光線に当たっても燃え上がってやけどする程度だったはずだが、こちらもパワーアップしているようだ。


「ちっ、すばしっこい奴め。

 こうなったら動けないように数で攻めさせてもらう。

 激レア純金冠仮面、貴様も戦闘員を招聘しろ!!」

「はっ、了解しました。薄型液晶プラズマテレビモニターアスワンツエツエバエ様」

 完全に部下扱いになってしまった激レア純金冠仮面はすぐに左腕をグルグル回し始めると、地面に巨大な魔方陣が出現する。


 同時にハエ怪人も右腕をモニターに当たらないように注意しながらグルグル回し、激レア純金冠仮面より一回り大きな魔方陣を描く。


 激レア純金冠仮面の魔方陣から、5体の戦闘ゴブリンが、ハエ怪人の魔方陣から10体の戦闘オークが出現した。


「おい、激レア純金冠仮面!

 何故5体した召喚しない。お前も10体まで呼び出せるだろ」

 ハエ怪人が叫ぶ。


「申し訳ありません、薄型液晶プラズマテレビモニターアスワンツエツエバエ様。

 先ほどそこに倒れている冒険者のパーティーを襲撃した際、戦闘員を5体倒されてしまい、今はこれだけしか呼べません」


「ちっ、使えん奴め。

 仕方ない、いるだけ全員奴に向かって攻撃せよ」


 ハエ怪人の命令で、15体の雑魚戦闘員が一斉に俺へ向かってくる。


「ふははははっ、お前達、その青い奴を押さえつけろ!

 動けなくなったところで、まとめて焼き払ってくれるわ!!!」

「ギーッ!??」

 返事をした雑魚戦闘員から、今の命令に一瞬の戸惑いが感じられた。


 ハエ怪人は、俺を押さえつけた戦闘員もろとも、怪光線で焼き払うと言っている。

 さすがの雑魚戦闘員も、巻き込まれて死亡確定の攻撃は躊躇するということだろう。


こちらへ殺到した戦闘員達は、俺を円形に包囲したが。それ以上突っ込んではこない。


「お前達、何をしている。

 早くそいつを倒すのだ」


 それはそうだろう。

 雑魚戦闘員も、俺と一緒に焼かれたくはないのだ。


 俺は哀れむような視線で敵を見つめる。


「おのれーーーー!

 早くしなければ、後ろからうつぞー!」

 激高するハエ怪人。


「いや、薄型液晶プラズマテレビモニターアスワンツエツエバエ様。

 いくら何でも、カラフルブルーもろとも焼き払われるとわかっていれば……、

 戦闘員も死にたくないでしょう」

「やかましいわ!!」


 激レア純金冠仮面が正論を吐くも、ハエ怪人は聞く耳持たない。

 どうやら脳みそも昆虫類並みのようだ。


 奴らがもめているこの隙に、俺は武器を持ち帰る。

「ブルーガトリングレーザー」

 弓と矢の代わりに連射出来る重火器を装着する。


「ブルージャンプ」

 ガトリングレーザーを抱えたままジャンプし、上空から敵を狙う。


「レーザー連続照射!」


 俺が引き金を引くと、断続的に青い光線が飛び出し、上空から敵に降り注ぐ。

 

 ブルーガトリングレーザーは破壊力こそそこまで大きくないためボスキャラには通用しないが、雑魚敵を一掃するにはうってつけの武器なのだ。


「ぐあーー」「ぐやーーーー」「ぎゃあぁぁーーー」「ぴゃーーー」「みょろーーー」

 なんだかわからない悲鳴も混じりつつ、戦闘オークと戦闘ゴブリンはレーザーに穿たれて魔石を残し消滅した。


 そしてよく見ると、この武器では通用しないと思っていた激レア純金冠仮面も、脇腹をレーザー光に射貫かれ、地面に膝をついている。


「くっ、まさかお前もこれほど強化されていたとは……」

 苦しそうに激レア純金冠仮面が呟くが、ハエ怪人はそんな激レア純金冠仮面にも容赦しない。


「なっ、貴様、よくもやってくれたな!

 こうなったら最大出力の破壊光線を食らわせてやる。

 激レア純金冠仮面!

 貴様も最後の意地を見せろーーーー!」

 ハエ怪人の叫びに答えるように、激レア純金冠仮面はこれまでで最大の大きな金冠を出現させる。


「これがワシの最後の力だ!

 喰らえ! カラフルブルー」

 巨大金冠(推定直径1メートル)を全力で投げた激レア純金冠仮面は、そのまま倒れて動かなくなる。

 どうやら力を使い果たしたようだ。


 俺は猛烈な勢いで飛んでくる巨大金冠に右手をかざし、触れると同時に能力を発動する。

「アイテムボックス」


 このときの俺は激レア純金冠仮面の最後の攻撃に完全に集中してしまっていた。

 

 金冠がアイテムボックスの中へ取り込まれて消滅すると同時に、俺を衝撃が襲う。


「モーーニターー!

 バカめーー、激レア純金冠仮面などという雑魚にかまっているからそうなるのだーー!」


 ハエ怪人の怪光線をまともに浴びた俺は、パワードスーツを焼かれながら吹き飛ばされた。







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