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【第14話】ギルドマスターの決断


 戦いが終わった商業地区は焦げ跡などこそあるが、目立った建物の損壊はないようだ。

 辺りを確認していると、俺が戦闘ゴブリンや戦闘オークを倒した辺りに小さめの魔石が落ちていた。

 取りあえず収入の足しにと思い手早く回収しておく。


 戦闘ゴブリンより戦闘オークの方がやや大きな魔石を残している。

 カラフルレンジャーの敵よりZ3の敵の方が単体では強力だったことから、そいつらが召喚した雑魚戦闘員にも強さに差があるということだろう。


「うっ」

 怪我をした冒険者がきつそうな声を漏らす。

 俺は思考を中断し、重傷の冒険者を担ぎ直すと再び冒険者ギルドを目指した。






 俺が冒険者ギルドに辿り着いたのはちょうど職員が表戸を開けようとしているときだった。

 朝早くから夜遅くまで活動する冒険者に対応するため、ノースウインザーの冒険者ギルドはAM6:00から深夜25:00までの19時間営業である。


 酒場も併設しているため、酔いつぶれた冒険者用の簡易宿泊所まであるが、こちらは割高な料金設定だ。

 まあ、道ばたで野宿するよりは増しなので、一泊2000ドンでドミトリーの三段ベット1床の代金というぼったくりに近いお値段にもかかわらず、稼働率は80%を越えているという。

 どうしてもベッドが一杯のときは、床に毛布を引いて寝かされることもあるが、その場合でも1500ドンほど取られる。


 俺たちのツインルームですら一泊2000ドンだと言うことを考えると、やはり高い。


 この料金では、良識ある冒険者は流石に宿に帰る体力を残して飲食すると言うことだが、それでも酔いつぶれる強者つわもののために、夜勤の当番はかなりの割増しで報酬をもらえるらしい。もっとも、腕っ節の強い者に限るそうだが……。


 何にせよ、今日のオープンニングスタッフは受付のエリーさんとギルドマスターのカイシーさんだったようで、俺が二人の冒険者を引き摺るように担いでいるのを見て、すぐに手を貸してくれた。


「これはどうしたんだ、ワタル!」

 ギルドに運び込み、ドミトリーの空きベッドに寝かせた二人を前にカイシーギルド長が聞いてくる。


「詳しい話の前に、二人の治療をお願いしたい。

 俺も魔力切れ寸前で、十分な手当が出来ていない」


 俺の言葉を聞いてカイシーギルド長とエリーさんはすぐに意識が無い冒険者の方を確認する。

「確かにこいつは危険な状態だ。

 脈も呼吸も弱い。

 二人とも首を絞められたような痕があるな。

 エリー、頼む」

「わかりましたギルド長」


 受付嬢のエリーさんは30歳前のすらりとした美人で、光り魔法の貴重な使い手である。

 光の攻撃魔法だけでなく、癒やしの力も持っており、ユウの初心者講習の講師も務めている才女なのだ。


 初心者講習時にユウの麻痺を善意で治療しようとヒールをかけてくれたらしいが、こちらは残念ながら効果がほとんどなかったらしい。


 才色兼備で性格もいい彼女は引く手、数多あまただが、本人の眼鏡にかなう冒険者は未だに現れていないという。


 そんなエリーさんが両手に光の魔力を蓄え、左右のベッドにそれぞれ眠る二人の冒険者へ魔法を発動する。

「ダブルヒール」


 エリーさんの言葉と供に、両手からそれぞれ癒やしの力が広がり、二人の冒険者は優しい光に包まれる。


「すごいな。

 二人を同時に治療するとは……」


 俺が感心して呟くと、相づちを撃ちながらギルド長が続ける。

「ああ、ダブルスペルは高等技術だ。

 複数の魔法を同時に放つのは技術の面でも魔力の面でも難易度が高い。

 これを何なくこなすエリーは上級冒険者として現役で活躍出来る逸材だよ」


 なんと、エリーさんはとても優秀な職員だった。

「よしてください、ギルド長。

 私は、そんなにたいした人間ではありません。

 冒険者家業は3年前にすっぱり引退しました。

 今は冒険よりもこのギルドの職員として、国難とも言える現状に貢献することの方が重要だと考えています」


 ギルド長は謙遜するエリーさんを優しい眼差しで見ながら首を横にふる。

「君が優秀なことに疑問の余地はない。

 3年前の魔王戦でアルテーシア様の活躍を見て引退を決めたようだが、あの方達は別格だよ。

 まあ、君がギルドで頑張ってくれているからこそ、今のノースウインザー冒険者ギルドは成り立っているのだから、ここで現役復帰されてもうちのギルドが困るのだがな」


 カイシーギルド長は苦笑いしながら冗談っぽくいうと、目つきを元の鋭いものにもどし、今度は俺の方を向く。

「それで、何があった、ワタル」


 俺は昨晩あったことを簡単に説明した。

 俺の二つの変身能力には触れず、運と持てるスキルで何とか倒せたと言うことにして説明したが、俺の世界の怪人が魔王の力でこちらの世界に転生しているらしいことを告げるとギルド長からため息が漏れた。

 カメトロケットランチャーが残した魔石を確認すると更に深いため息が聞こえる。


「この魔石の大きさからすると、討伐難易度が最上級の魔物に匹敵するだろう。

 新しい魔王の存在が疑われる台詞せりふもあったと言うことだし……、

 これは冒険者ギルドだけでは解決出来ないな……

 悪いがワタル、唯一元気な当事者として、今日の夕方もう一度来てくれ。

 それまでに関係者を集めておく」


 俺は午後4時にもう一度ギルドに来るよう約束させられた。

 ちなみに、魔物や怪人が落とした魔石は、売る売らないは別にして、価格の査定をそれまでにしておいてもらえることになった。

 これは臨時収入を期待してもいいのだろうか。


 ちょっとだけ期待して、朝食を取るために宿へと帰ると、ちょうどユウが起きて来たところで、二人して朝食会場となる一階の食堂へ向かった。


 朝食を取りながら、俺は夕べのあらましをユウに説明する。


「ワタルさん、午後の話し合いに僕も参加していいでしょうか。

 今日で講習も終わりますので、機会があればワタルさんとクエストに出てみたいと思っていたんです。

 ワタルさんは正義のヒーローですから危険な状況に飛び込んでいくと思いますが、邪魔でなければ僕も連れて行って欲しいんです。

 いや、足の件があるので邪魔なことはわかっているんですが、この一週間の訓練でかなり魔法が使えるようになってきましたから、後方支援だけでもさせて欲しいんです。

 今後のワタルさんの活動方針にも大きく関わりそうなその話し合いに是非参加させてください」


 ユウは以前から、俺のお荷物になっていることを負担に感じていたようで、7日の講習を今日で終えると言うタイミングの今、俺の役に立てる機会を探していたようだ。

 ここで、不自由な足を理由に断ることは簡単だが、それではユウの心を大きく傷つけてしまいそうだ。


「わかった。

 参加していいかどうかギルド長に聞いておくよ」


 足が動かないと言っても、ユウは召喚された勇者だ。

 その魔法だけでもある程度の戦力になるだろう。

 危険があれば自分で対処することも出来る。

 それに、俺の変身能力を知っている同郷の人間が一緒にいれば、俺も何かと相談出来て心強い。

 もし危なくなれば、俺が何とかフォローすればいいだけだ。


 俺はユウも午後の話し合いに参加する方向で話を進めることにした。


 ユウは嬉しそうに最終日の初心者講習に向かい、俺は入れ違いに一眠りするため部屋へと続く階段をのぼった。







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