【第10話】ノースウインザー冒険者ギルド
【R15展開】
注1:今回の話でLGBTのキャラクターが出てきます。
LGBT自体はR指定かわかりませんが、苦手な方はご注意ください。
注2:性的な会話が、お話しに出てきます。
苦手な方はご注意ください。
ユウを背負って冒険者ギルドへ移動しようとすると、ランバーさんが車いすを貸してくれた。
兵士が怪我をしたときなどに使う緊急用の簡易車いすだが、背負う自分も負ぶわれるユウも、車いすの方が圧倒的に楽なのは言うまでもない。
何から何までお世話になり恐縮である。
冒険者ギルドの入り口は3段ほどの段差があったので、車いすでの入館に少し手こずったが、俺たちは無事に冒険者ギルドの受付窓口に辿り着くことが出来た。
時間は昼時であり、併設されているフードコートは賑わいを見せているが、受付には誰も並んでいない。
今稼働している窓口は厳つい中年の男性の担当している1カ所だけである。
「こういうのは、美少女か美女が鉄板テンプレだと思ってました……」
ユウがおっさんの窓口しかないことに気がつきぼそりと言う。
「おい、聞こえるぞ」
俺が小声で注意するとユウは慌てて口を押さえたが、どうやら手遅れだったようだ。
「色気のないおっさんで悪かったな、若いの。
見ない顔だが……、取りあえず……、
ウインザー侯国冒険者ギルドへようこそ」
「あっ、連れが失礼した。
俺はワタルという。
昨日召喚されて来たばかりだが、俺たちを召喚した連中に北の平原で捨てられた。
何とかこの街に辿り着いたところだ。
途中で珍しい子狐を従魔に出来たので、冒険者登録と従魔の届けをお願いしたい」
俺の言葉に続いてユウも自己紹介する。
「ユウと言います。
先ほどは失礼しました。
よろしくお願いします」
受付のおっさんは気にしていないとばかりに手をひらひらさせ、
「なに、正直な感想に悪意は持たないさ。
俺はこのノースウインザー支部のギルド長をしているカイシー・デンだ」と言った。
なんと受付のおっさんはギルド長だった。
「ギルド長だったのか。
これは重ね重ね失礼した」
俺は、軽く詫びを入れておく。
「何、受付嬢が昼休みに入ったときはよく俺も窓口に立つのさ。
それで、登録だったな。
召喚者と言うことだから、この魔道具の紙に情報を書いてくれ。
お前達の母国の言葉でかまわん。
魔道具の力で自動翻訳されるからな」
「ああ、わかった。
それで何を書けばいいんだ」
「上から順に、名前、性別、年齢、戦闘スタイルだな。
あと、使う武器も書いてくれ。
使える魔法やスキルは任意記入だが、書いておいた方が指名依頼を受けやすい場合もある。そんなところだ」
「了解した」
「……」
俺はすぐにペンを受け取り記入しようとするが、ユウは突然黙り込んでしまう。
心配になって表情を見ると、何か困っているようだ。
しばらくしてユウは口を開いた。
「あの、性別は絶対必要ですか?」
「ああ、護衛以来などでは依頼主から指定がある場合も多いからな。
普通この世界では必須記入事項だ」
カイシーギルド長は普通に説明する。
「やはり肉体的な性別ですよね……」
この質問で、俺はハッとした。
そういえばユウは慎重の割に、負ぶったときの体重が軽く、線も細い。
つまりはそういうことのようだと気がついてしまう。
「??
性別と言えば肉体的だが、他にあるのか?」
ギルド長のカイシー氏は意味がわかっていないようだ。
どうやらこの世界にはない概念らしい。
「はあ、わかりました」
そう言って車いすの前の机でユウが書いた性別は『女』だった。
カイシーギルド長は魔法紙を受け取ると待つように言い残し一旦奥の方へ消える。
「ばれちゃいましたね……」
ユウがポツリと俺に行った。
「ああ、まあ、俺は気にしないから大丈夫だが、部屋は分けた方がいいかな」
俺の答えに、ユウは言葉を続ける。
「僕は実のところLGBT、性的マイノリティーってやつなんです。
肉体の性別は女として生まれてきましたが、高校を出ても男性に興味が持てず、好きになるのは女の子ばかりだったんです。
心療内科を受診して、性同一性障害だと言われました……
LGBTのT、トランスジェンダーらしいんです……」
「そうか、すまんが俺は詳しくなくてな。
基本的なところを聞きたいんだが、女が女を好きになったらLGBTなのか?」
「そうですね。そうとも単純には言えないと思いますが、僕の場合は男子も好きになれませんでしたし……、
それに整理整頓が苦手で誰かのために掃除やご飯を作るとかピンと来なくて……」
「整理整頓?
それって別に、男女は関係ないんじゃないか。
俺だってこれまで異性にも同性にも恋愛感情を持つに至った人はいない。
男女ともに友人はいるが恋人はいない。
まだ好きになれるような異性に巡り会えていないだけじゃないのか?」
まあ、俺の場合は記憶喪失によるところも大きいが、戦いの中に身を置いている時間が長かったから、恋愛している暇がなかっただけとも言えるが、この際置いておこう。
「そうかも知れませんし、そうじゃないかも知れません。
それに医者から告知されて、あらためて自分は精神的に男性なんだと納得してしまった部分もあり、今の服装は男に見えるようなものをわざと選んで着ています。
僕の大学は、女子でもスラックスの制服が選択出来るんで好都合だったんです」
「そうか、俺としてはあまり気にしないが、ユウが気になるなら言ってくれ。
配慮出来るところは配慮する」
「それでは、出来ればこれまで通り、女扱いせずに接していただけますか」
「ああ、わかった。
でも、部屋はどうする」
「一緒でもかまいません。
もし僕に性的な興味を持たれるようでしたら、肉体は女ですのでこれまでのお礼がわりに好きに使っていただいても問題ありません。
ただ、心は男なんで気持ち悪いかも知れませんが……」
「ああ、その心配は無用だ。
これでも正義の味方の一員だ。
性欲がないわけじゃないが、理性の強さには自信がある。
そういったことはお互いの同意で、そうしたくなればすればいい。
人を物のように扱うことはしないし、してはいけないと思っている。
ユウさえよければ経費節約のためにも同室にしておこう」
「ありがとうございます」
俺たちがそんなことを話しているとギルド長は金属製と思われるカードを二枚もってやってきた。銀色の美しい金属光沢を持っており、この世界の文字が書かれている。
角に2カ所穴が空いており、そこにチェーンがついている。
「待たせたな。
こっちがワタルので、こっちがユウのだ。
髪の毛を一本抜いて、プレートの上に置いてくれ」
ギルド長の言葉に従い、髪を一本抜いて金属プレートに置く。
ギルド長はプレートを受け取ると黒い光沢のある箱に入れ、その箱ごと電子レンジのようなボックスに入れてスイッチを押した。
「後は、1分待てばできあがりだ」
一分後、チーンという音と供に装置が止まる。
ますます旧式電子レンジである。
電子レンジから取り出した箱の中では金属プレートの色が変化していた。
「こいつは驚いた。
二人とも色々な魔法に適性があるみたいだな。
魔力の強さはこれから鍛えていけば増えていくだろうから、使える魔法も増えるだろう」
「そんなことがわかるのか?」
俺の問いにカイシーギルド長は答える。
「ああ、一つ一つの魔法の強さはわからないが、このギルド証プレートはその人の一部を取り込んで、現状で適性のある魔法に対応した色になる。
見たところユウは白銀色が一番多いから、光魔法の適性が強いが、他の色も少しずつあるからな。鍛えれば別の系統の魔法ものびる。
ワタルは赤銅色と青銀色が大きいがこれもまた見たこともないほど多色だ。
火魔法と水魔法の適性が大きく出ているが、こちらも鍛え方しだいで他の色も成長するだろう。
何にしても1ヶ月おきくらいに更新してくれれば、そのとき一番強い魔力がわかるってもんだ。
これからが楽しみだよ」
やはりユウは勇者だけあって光り魔法を中心に多くの魔法が使用可能なようだ。
俺はカラフルブルーの能力とZ3で戦うときに多用した火炎系の技の影響が出ているのだろう。
ただし、Z3は他の魔法もかなり使える。
それ故の多色だろう。
「それにしても、これほど多彩なお前達を、現状の魔力の大きさだけで放逐する公爵家の奴らはアホウとしか言いようがないな。
奴らが使っている魔力測定の球は魔力の大きさと最大適性種にしか対応していないからな……
この世界では能力値の成長があまりないと言われてきたが、ウインザー侯爵家の実践で鍛えれば魔力やその他の能力も大きく変化することが判明したというのに……、
理解出来ていないんだろうな」
カイシーギルド長の話から、俺たちをこんな目に合わせた公爵家の程度のほどが窺えた。
「何にしても、最近また、強力な魔物が増えてきているからな。
強い冒険者は大歓迎だ。
ユウは足が悪いようだから戦い方が限られるだろうが、光り魔法には強力なものも多いから、後衛としてならある程度活躍出来るだろう。
がんばれよ」
「はい」
カイシーギルド長の激励に、足が不自由でも出来ることがあるとわかったユウは嬉しそうに返事をした。
勇者のユウはトランスジェンダーという設定でした。
体は女性、心は男性だと本人は思っています。




