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さァ、楽しい夜会の始まりだ―――

作者: 篠原

活気にあふれた街がそろそろ寝静まるころ・・・

例え普通の人々がちゃんと活動する時間でももともと人通りが少ない裏道は、静まり返った今となっては、さらに人気がない場所だった。

―――――――いつもなら・・・


そこには、二人の男が対峙するように立っていた。が、しばらくすると、片方の男はその場でみっともなく尻もちをつく。

もう片方の男はそれを見てクスクス笑っていた。しかし目はどうみたって笑っておらず、尻もちをついている男の恐怖心をさらに煽る。

男は、どうにかこの場を抜け出そうと必死に叫びたてる


「俺は知らなかったんだ!!嘘じゃねぇ!」

「へぇ?・・・でもさ、結局かかわったことには変わりないんだし、その結果”あの人”を傷つけたことにも変わりないしんだし?」

     

     そんなこと、俺にとっては関係ない。

      ただ、”あの人”を傷つけたという事実だけで十分。

    お前にとってはただのオアソビ、だけど、俺にとってはお前を仕留めるには十分すぎるほどのキッカケ・・・


「アイツを傷つけたことは謝る!・・・だから、頼む!見逃してくれ!!なんでもする!」

「・・・」

「金だって払う!!・・なぁ、頼むよ!俺達ダチ、だろ?カイ・・・」


この期に及んでまだ命乞いをする男の姿は、カイ、と呼ばれた男にとってはただただ不愉快なものには変わりなくて・・・

”あの人”を平気で傷つけたクセに、自分のこととなると『助けてくれ』と命乞いをみっともなくするこの男が腹立たしくて・・・


しばらく、懇願する男をどこか虫けらでも見るような目つきで見ていたカイだったが、すぐに思いは決まったらしく、ふっと笑みをこぼす。

その姿に、男も多少ひきつってはいるがつられて笑う。が、それは次の言葉によって地にたたき落とされることになる。


「ダチだからって許してもらえると?・・ハッ、笑わせんじゃねぇよ。そんな考え、”あの人”に手ェ出した時点で俺にとっては何の意味もなさない。たとえそれが俺の兄貴や弟だろうが、親だろうが、関係ない。ただ、俺は”あの人”を傷つけたやつをこの手で排除するだけだ」

「・・ぁ・・・・」

「まぁ、お前もあの時”あの人”に手を出した自分の人生を呪うんだな」

「・・・ヒィ!!!」


そう言うとカイは静かに尻もちをついた男の方へと歩み寄る。

男は、顔は笑っているが醸し出す雰囲気と、何よりまるで捕食者・・・狩るものの眼をしたカイに恐れをなして、とっさに立ち上がると何も考えずに走りだす。

カイはそれを何とも思わず、走って追いかけるようなこともせずにゆっくりゆっくり普段どおりの歩調で、逃げ出したエモノを追いかける。


その通り道は幾重にも分かれ道があり、一つでも間違えれば見当違いの場所に出てしまう。

それなのにもかかわらず、カイは確実に男を追い詰めていた。まるで、そんなことは計画の内で、目的の場所へと追い詰めているかのように―――


しばらくして、正にその通りだった。

男は行き止まりに直面してしまい、あわてて引き返そうとすれば、出口付近にはすでにカイが仁王立ちしていて。

その手にはどこで手に入れたのか、細めのパイプが握られていた。


男はその姿を見てさらにビビり、行き止まりだとわかっているはずなのだが、すこしでもカイから逃げたい一心でもと来た道を逆走する。

しかし、何度来ても壁は動いたりするわけもなく、ついに男は追いつめられた。

どうにか壁を登ろうとするが、取っ手になるものがほとんどない壁をひょいひょい登れるわけもなく、男はすこし登ったところで焦りのせいか無様に落ちる。

しばらく痛みに顔をゆがませていると、いきなり顔に影がかかった。それに驚き眼をあけると、そこには


「おいおい、人の顔見た瞬間まるで化け物でも見たように逃げるのやめてくれよ。傷つくじゃないか」


そう言いながらにっこりと微笑むカイがいた。

しかし、そんな笑顔も男にとってはただの恐怖の対象にしかならず、また声にならぬ悲鳴をあげながら壁まで後ずさりする。

その様子をつまらなそうに眺めたカイは、手に持っていたパイプを何度か手に鳴らすように振りながら男に近づく


「逃げるなっていってんだろ?まだコッチの用事も終わってねぇっつうのに」

「・・う・・・ぁ・・・・」

「それに、まだお楽しみは始まったばっかだ。そんなツレねぇ顔してんじゃねぇよ。・・・ついついやり過ぎちまうだろ?」

「・・・お、俺・・は・・・・」

「おっと、今さら何も聞く気はねぇぜ?もう幕は上がってんだ。今さら降りることはゆるさねぇ」


そう言うとカイは振り回していたパイプで肩をぽんぽんと2,3度軽くたたくと、ゆっくり地面に下ろす。

それが道路にあたり、カランと乾いた音をたてる。そんな音にもビクつく男をカイは楽しそうに見つめながら、フンッと鼻で笑うと、


「さぁ、夜会の始まりだ・・・」

   

   逃げることは許さない。

    これはお前の罪・・・

  大事な大事な”あの人”を、無情にも傷つけたお前の・・・

   俺は、誰が何と言おうと許す気はさらさらない。

 

         さぁ、もうすでに幕は上がったんだ。

             

            楽しい楽しい夜会と洒落こもうぜ?

                 なァ?             


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