【クールな勇者とやさしい魔王6】同盟の始め方
※単独でも読める物を目標に書いていますが、シリーズを通して読んで頂けたら嬉しいです。
シリーズURL⇒http://ncode.syosetu.com/s6551d/
ノリと勢いだけで、駄文を生産し続けている本シリーズ。
今回は、シリーズ完結へ向けてを意識しすぎたせいか、シリアスよりな内容となっております。
はてさて、作者の目論見通りに完結できるのでしょうか?
「あれ?そんなに急いでどうしたの?」
「おお!ここにおったか!
オヌシを探してたんじゃ!
実はな、厄介な話が出て来ての・・・」
「厄介な話?」
「そうじゃ。ほれ、人族至上主義の国があるじゃろ?」
「あ〜。あの狂信者たちか・・・
なんとなく先は見えたけど、とりあえず続けて」
「うむ。
魔族なぞすぐ滅ぶだろうと、捨て置かれてたのじゃが、急に魔族の国は認めん。
などと言い出したんじゃ」
「それくらいなら、キミだけで対処できるんじゃない?」
「たしかに、それはできるじゃろう。
じゃが、それではまた、戦争をせねばならなくなる。
ワシはまた、みなに死んでくれと言わねばならんのか?
あれ程惨い事を、またやらねばならんのか?
ワシはもう戦争はイヤじゃ・・・」
「落ち着きなよ」
「落ち着いていられるわけなかろう!
これはワシ個人の問題ではない。魔族全体の問題なのだぞ!
ここでワシが間違えたら、みなになんと言えば良い!」
「狼狽えるな!!」
「!?」
「いいかい?
割と無自覚だけど、キミは王なんだ。
王というのは、決して誰にも弱気を見せてはいけない。
なぜなら、王が弱気になると、重鎮が不安になる。
重鎮が不安になると、兵士が不安になる。
兵士が不安になると、民が不安になる。
そうして、不安が伝播した結果、国が滅びる。
そんな結末を望んでいる訳じゃないよね?」
「スマン。少々取り乱し過ぎた」
「構わないよ。
ボクとキミには主従の関係なんてないんだ。
どうしてもって時は言いにおいで。
っと、それはともかく、あの狂信たちをどうにかしないとね」
「うむ。それでオヌシを探しておったのじゃ。
なにか良い知恵はないか?」
「そうだなぁ・・・
一番避けなきゃいけないのは、周辺諸国を取り込まれる事かな」
「ん?どういう事じゃ?」
「国対国であるなら、今の国力でもなんとかなると思う。
でも、周辺諸国を纏めて連合軍を作られたら、手の打ちようがなくなる。
まぁ、喧嘩する時に一対一か、一対多かって考えるとわかりやすかな?」
「たしかに、それじゃと多勢に無勢で勝ち目がないな。
では、それを防ぐにはどうすればよい?」
「簡単な事だよ。
自分がされて嫌な事は、大抵、相手がされても嫌な事なんだ。
つまり、こっちが先に連合を作ってしまえばいい」
「なるほど!
じゃが、関係が改善されつつあるとは言え、話に乗る国はいるかの?」
「それは、大丈夫なんじゃないかな?
外交官を通じて、魔族は理解できない存在ではない。
むしろ、協調していける相手だというのは、広まっているはずなんだ。
そこに、ダメ押しでもう一手ほしい」
「というと?」
「同盟国を作らない?」
「人族の国とか?
それは、願ったりじゃが、相手が頷かんじゃろ」
「それが、そうでもないんだ」
「どういう事じゃ?」
「レアメタルは知ってるよね?」
「うむ。鉱山でしょっちゅう出て来るクズ鉄じゃな」
「その『クズ鉄』なんだけど、人族の間では高値で取引されてるんだ」
「らしいの。
外交官の報告にもあったんじゃが、なぜそうなのか首を捻っておった。
価値があるらしいが、理由が解らねば手札として使えん。
そう思って捨て置いたのじゃが、理由を知っておるのか?」
「じゃなかったら、今話題にあげないよ。
魔族にとって、魔力を帯びた鉱石なんて当たり前の物。
そうだよね?」
「うむ。じゃが、アレはそれ程魔力量がないんじゃ。
それこそ、グラスライトや緋緋色金の方がよっぽど貴重じゃな」
「だろうね。
けど、人族の間では魔力を帯びた鉱石は非常に珍しい物なんだ。
だから、それを大量に保有しているキミ達の価値が跳ね上がる。
それこそ、緋緋色金なんて存在を秘匿されてるぐらいさ。
たぶん、あの狂信者たちもそこに目を付けたんじゃないかな?」
「なんと!?そういう裏事情があってのか・・・
つまり、レアメタルをじゃんじゃん輸出すればよいのじゃな?
って、あいたぁ!?
いや、痛くはないんじゃが、頭をはたくでない!
ワシ、魔王じゃよ?偉いんじゃよ?
って、このやりとり、前にやった気がするんじゃが!?」
「うるさい」
「あ、ハイ。スミマセン・・・」
「安売りするなって、前言ったよね?
どうして、キミはすぐに結論を欲しがるんだい?
まぁ、それは今いいや。
要は、需要と供給の均衡なんだ」
「なんじゃ?また小難しい事を言いよって・・・」
「はいはい。ちゃんと説明するから拗ねない。
簡単に言ってしまうと、どれだけ欲しがってる人がいるか?
っていうのが、需要。
逆に、それがどれだけ出回ってるか?
っていうのが、供給。
ここまでは、いいかい?」
「うむ。商人と客という訳じゃな?」
「まぁそういうこと。
で、需要が高すぎると、値段が跳ね上がって、買える人が少なくなる。
そうなると最悪の場合、暴動にまで発展しかねない。
逆に供給が多すぎると、値崩れが激しくなってしまう。
それに、みんなが持ってるから、誰も買わなくなるんだ」
「なるほど。じゃから、均衡が大事なんじゃな。
希少価値という言葉もあるくらいじゃしな。
つまり、仲良くしてくれるなら、多少融通を利かせるよ。
それくらいの匙加減でよいという事か」
「そうだね。
けど、それだけだと、もし鉱脈が枯れた時が怖い。
だから、一番手っ取り早いのは、姻戚関係を結ぶ事なんだけど・・・」
「ならん!政略結婚など断じて認めんぞ!
そんな物を強制されるのは、ワシら王族だけで十分じゃ」
「けど、恋愛結婚なら、いいんだよね?」
「当然じゃ。
種族の違いという障害を超えて、より深まる二人の絆・・・
イイな。実にイイ・・・」
「はいはい。言質は取ったからね」
「ん?どういう事じゃ?」
「ほら、あのスライムの子がいたでしょ?
彼女から、最近相談を受けてたんだ。
外交に行った先で、気になる人を見つけたってね」
「ほほぅ?それはイイな!
何かを仕向けたりなどという野暮はせん。
が、二人の関係が上手く行くとよいのぉ」
「そうだね。
うまくいけば、魔族はもっと受け入れられるだろうからね。
って、どうしたんだい?
苦虫を噛み潰したみたいな顔をしたりして」
「オヌシはいつも打算ばかりじゃな・・・
気持ちの向くままという事はないのか?
「・・・・・・・」
「なんじゃ、そのジト目は?
ワシ、何も間違っとらんよな?」
「はぁ・・・。やっぱり、キミは残念だ」
「いきなり酷くないかの!?」
「酷くない。
それに、そんな事よりも同盟の話だよ」
「なんか釈然とせんが、良いじゃろう。
オヌシの言いたい事は大体わかった。
レアメタルを餌にして、守りを固めようという事じゃろ?」
「まぁ、そういう事だね。
たぶん、殲滅できる位の戦力は揃えれると思うけど、キミは望まないでしょ?」
「うむ。よく分かっておるではないか!
降りかかる火の粉を払いはするが、こちらから仕掛けるような事はせん。
そうできるまでの力は、オヌシのお陰で蓄えられた」
「過分な評価、恐縮です」
「クハ!オヌシも冗談を言えるではないか!
良いぞ!いつもの仏頂面のオヌシより、何倍もよい!」
「そこまで笑わなくても、いいじゃないか」
「なんじゃ?オヌシ、照れておるのか?
これはまた珍しい物が見れたわ!
ハッハッハ!オヌシのお陰で気分が晴れた。
ワシは早速、同盟を結ぶ国について協議してくる!
感謝するぞ!勇者よ!」
「いいから、早く行きなよ。魔王さま」
「うむ!吉報を待っておれよ!」
「・・・・・・ふぅ。
最近、何も言って来なくなったから、気が緩んでたかな?
けど大丈夫だ。まだ取り返しがつかない程じゃない。
事前に策をわた・・・
ガハッ!?ゴフッ!ゴホッ!ゴホッ!
はぁ・・・はぁ・・・。やっぱり、ボクの時間は残り少ないのかな?
けど、あと少しだけでいいんだ。あと少しで、キミの夢が叶うんだ。
せめて、それまでは気づかれないようにしないと・・・」
ここまでお読み頂き、まことにありがとうございます。
構想としては、あと二作程度で、本シリーズを完結とさせて頂く予定です。
などと言いながら、果たして、シリーズ全てを読んで下さった方はおられるのでしょうか?
私自身が気に入っている為、恥ずかしげもなく投稿を続けておりますが、拙作を気に入って頂けたのでしたら幸いです。