1話
「ずっと待っていたよ・・・。」
そんな声とともに俺の意識は覚醒していく。
「こ、ここは・・・?」
「ここは神界だよ!!」
俺は声のする方を警戒しつつ見ると・・・。
そこにはなにもないただ白い空間が広がっていた。
「あれ?おかしいな・・・確かに声は聞こえたはずだけど・・・?」
「・・・もうちょっと下を見て。」
下を見ると涙目でぷるぷる震えてる少年がいた。
涙目なだけで決して泣いてはいない。あっ・・・。
「ごめんごめん、泣くなよ男の子だろ?ってここが神界って言ったか?どういうこと?」
「な、ない゛てないもん゛!それに僕の名前はイデアだし・・・神様だから君よりもずっとずっと!!年上なんだからね!!子供扱いしないでよ!!」
「・・・お父さん落ち着いて。」
別の声が聞こえてきて視線向けると・・・。思わず見惚れてしまいそうになる。
そこには桃色の髪を腰まで伸ばした少女がいた。
大きな瞳は綺麗な緋色で意匠が魂を込めて作った人形ですら敵わないだろうと思える美しい容姿。
スレンダーだけどがりがりというわけではなく程よく肉がついた美しい四肢にくびれそしてひんにっ!?謎の威圧を感じた。
とりあえずとんでもない美少女がそこにいた。
ただ見惚れてしまいそうなだけで見惚れなかったのはその表情佇まいがすごく無機質に感じるためだ。
「お、お父さん?」
ちなみに見た目はだが少年ことイデアは8歳前後、少女は俺よりほんの少し下くらいだろう。
「・・・はい。」
「え?・・・・・・嘘でしょ?」
イデアと少女を見比べる・・・。
「ま、またそうやって子供扱いするんだね・・・ぐす」
「いやまあ仕方ないだろ・・・」
「・・・お父さんお話しないの?」
「そ、そうだったね!一応先に説明しとくと僕はとある事情で力が弱まっていてこの姿なだけで本来は君より見た目的にも大人だし、年齢も神様だから君よりずっと長生きなんだからね!!」
「あ、ああ。わかったよ・・・。」
「・・・・・・。」
ものすごい勢いで詰め寄られ引いてしまう。少女もわかりづらいが呆れている。
「んんっ。じゃあ気を取り直して今の現状について説明するね!」
「ああ、頼む。」
「ここは信じられないかもしれないけど神界にある僕の空間だよ!まあ家みたいなものだと思ってくれればいいよ!」
「確かにそう簡単には信じられないけど感覚がはっきりとしすぎてて夢じゃないのだけはわかるが俺を呼んだのはお前か?」
「そうだよ!僕が呼んだ。頼みごとがあるんだ。」
「俺に?」
イデアは頷いて話を続ける。
「君には僕が管理してる世界・・・。イストリアに行ってもらいたい。」
「は?いきなりだな。なんの為に?」
「彼女は僕の娘でフィリアと言うんだけど。まだ幼い神だから色んなことを知識としてしか知らないし喜怒哀楽そういったものの経験も少ないんだ。だから一緒に世界を観て回ってもらって色々と学んでもらいたいんだよ!」
少女・・・フィリアがお辞儀する。
「俺なんかに任せて良いのか?」
「うん。僕は君を信頼してる。事情は言えないんだけどね・・・」
イデアははっきりと告げた後に哀しみを秘めた表情で言う。
「それにこれもまた秘密の事情なんだけど僕はやらなければならないことがあってフィリアを見ていてあげれないんだ・・・だから君にフィリアをお願いしたい。」
「・・・嫌だと言ったら?」
「うん・・・。そうなったらそうなったで仕方がないね・・・。さすがにここに来た記憶は消させてもらうけどちゃんと君がいた世界に返してあげるよ・・・。ただね!」
俯いていたイデアが顔を上げた。
「君は君の世界でなにか違和感を感じなかったかい?」
心臓がドクンと跳ねた気がする。
「君はどこかでこう感じていなかったかい?『生まれる世界を間違えた』って。」
鼓動が早くなる。
「僕の頼みを聞いてくれればいつかきっとその理由がわかるよ。それになぜ君なのか。君という人間がどういう存在なのかがわかる。」
「は?どういう・・・。」
「ごめんそれは答えられない・・・。」
「またそれか・・・。でそのイストリアってのはどんなとこなんだよ?」
正直わけがわからないただ何故か行かないといけない気がした。
イデアは神剣な表情を少し崩し微笑みながら語る。
「そうだね・・・。ファンタジーな世界かな!魔物や迷宮といった危険なとこもあるけど魔法があったり聖霊にエルフや獣人とかもいるんだよ!」
「魔法か・・・俺でも使えるのか?」
「うんまあ練習は必要だけどね!」
「あとは・・・俺は戦ったことなんかない。」
「うん!そこらへんも大丈夫かな!夢じゃないから無茶すれば死んじゃうから気をつけてほしいけど。君には僕から力を与えるつもりだよ!それに多くは上げれないけどある程度の持ち物は渡すつもりだよ!具体的には武器防具と生活用品に衣服と通貨だね!」
無一文で過ごさなくて良いのはありがたい。それに今は寝る前だったためパジャマだったのだ衣服も地味にありがたい・・・。
「ちなみに行ったらもう戻れないのか?」
「それは君次第かな?」
「戻る方法もあるってことか?」
「そうだね!簡単ではないけどあるにはある。」
戻る方法はあるか・・・。美月翼悪い今度はだいぶ先延ばしになるかも・・・。
でも先からいや先よりも行かないといけないそう感じる。
だから俺は・・・。
「分かった行くよ。で向こうで具体的にはどうすればいい?」
「やったー!ありがとう!君ならそう言ってくれると思ったよ!!君が君の思うままに生きてくれていい・・・ただフィリアを見守ってほしいできれば守ってあげてほしい・・・。それだけだよ!」
「・・・善処する。」
「うん!ありがと・・・。」
「であとはどうすればいい?」
「あとは僕が君を転移させるだけなんだけどその前に少しフィリアと話をさせてもらえないかい?」
「ああ・・・。それくらい構わない。」
「ありがとう・・・。」
イデアはそう言ってフィリアと共にお辞儀をする。そして2人それって姿を消した。
「っはは・・・。まじで神なのか・・・」
ちょっと半信半疑だったのだ。
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「お待たせ!」
イデアとフィリアが戻ってきた。
イデアは笑顔でフィリアは少し俯いていた・・・。
「もう良いのか・・・?」
「うん!時間もあんまないからね・・・。それじゃ始めるよ!」
イデアが言い終えると同時に俺とフィリアの足元に父の書斎で見た魔法陣が浮かぶ。
「っ!?またこれか?」
「ははは、まあ身体に害はないから安心してくれていいよ!」
イデアは笑いながら言う。そして光がまた視界を覆い尽くそうとしてた。
「・・・お父さん行ってきます。」
「ああ、フィリア行ってらっしゃい。」
その言葉と同時にフィリアは光の粒子になった。
そしてフィリアへと向いていたイデアの視線がこちらに向く。
「ごめん最後に一個だけ。僕が与えたいものがあるんだ。」
「なんだ?」
「君の名前・・・。塔也だと浮いちゃうからね新しい名前をあげたい。『ルーク』と名乗ってもらえないかい?」
亡き両親にもらった名前を変えろか・・・。普段なら怒っていたかもしれないそれでもイデアの真摯な眼を見てすぐに受け入れることができた。
「ルーク・・・。ああわかったそう名乗るよ。」
「ありがとう。」
そう答えるイデアの目尻には光るものがあった。
光が更に強くなる。
「時間だね。フィリアのことを任せたよ!」
俺はしっかりと「任せろ」と伝えるために頷く。そしてまた視界が光で埋め尽くされる。
「約束は果たしたよ・・・。」