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死神美少女と童貞魔法遣いの俺  作者: ぢょほほん
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ようブラザー、準備はいいか? 丑三つ時に現れた魔女の涙を受け止めろ!(3)

関東の人…… 東北あたりもそうですが、「バカ」という言葉にそれほど違和感がないようです。


関西人は「アホ」は、よく言います。

アホの坂田などと言われていた方もいるほどで、アホにはある程度の親しみが込められていることもあり、アホと言われることは(もちろん良いことではないのですが)それほど悪いことではないようです。


一方で関西人は「バカ」とは滅多に言いません。

ものすごく怒ったときや、取り返しのつかないほど大変な失敗をしたときに「バカ」と言われます。


つまりヴォルフが「バカ」というときは、そういう意味なのです。


「死せる者よ、眠りから覚めよ。 灰のなかより立ち()で、万人の父の名のもとに行う我が問いに答えよ ……我、(なんじ)を待ち望む、あらわれよ、アメリー」



呼んだ途端にするりと目の前に一人の女性が現れた。

俺の予想とは全く異なり、落雷どころか風も吹かず音も立たずに。

あたかもはじめから、その場所に立っていたかのように。



あらわれた女性はアメリーに間違いないだろう。

空に浮かぶ月よりもなお青白い顔色は、なるほど死者のようである。


だが、本当に彼女がアメリーなのか、俺は知らない。

念のため確かめるべきだろう、思ったら……



「うおぉぉああああああ!! アメリーィィィィィ〜〜〜〜!!!」


「あっ、おい! こ、この、 ……バカ野郎っっ!!」




奇声を発し、ダニエルは撃ち出された弾丸のように魔法陣から飛び出した。

あっという間の出来事で、静止する間もない。


ダニエルを追いかけようとした俺の左腕に、ローゼが全力でしがみつく。



「離せローゼ! あのバカぶん殴って連れ戻すんや!」


「ダメです!」


「なんでやねん!!」


「いま魔法陣から出たらヴォルフさんも危険ですっ!」


「うっ! そ、それはそうかもしれへんけど、な、」


「ぜったいにダメですっ!!」




冷たい月明かりに照らされ、ダニエルは柔らかそうで豊かなアメリーの胸に顔を埋めたまま、アメリィ、アメリィィとほとんどわけがわからないほどの涙声で泣き続ける。


アメリーはダニエルの頭をそっと抱き、静かに涙を流す。

まるで一枚の絵のように美しい。



そしてダニエルを見つめる俺の左腕は、絡みつくローゼの控えめで薄い胸が押し当てられていたことにふと気がつき、


『ああ、あっちはあっちでものすごく羨ましいが、こっちはこっちでそんなに悪くもない』

と考えたら、急に目が覚めた。



なぜだろう。

我ながらくだらないことばかり思いつくものだが、きっと、違う部分(・・・・)に血が回る分、頭に上った血が減るのだろう。


決して大きくないサイズでも、頭に血が上った男をクールダウンさせ、現実に引き戻すことができるのだから、おっぱいは偉大だ。


まあ、おっぱいに目がくらみ、人生を失敗したり踏み外したりすることも多々あるのだろうが。

童貞の俺には、そんなリア()は痛い目に遭いやがれとしか思えない。


……あれ? その流れだと俺も痛い目に遭うのか?




「ローゼ、ごちそうさま」


「はい?」


「間違えた、ありがとうな」


「いえ?」


「細かいことは気にすんな、おかげさんで冷静になれたけど、 ……しかし、どうすんねん、アレ(・ ・)


「どうしようもありません」


「どないかならん?」


「なんども言いますが、どれほどダニエルさんを連れ戻したくても絶対に魔法陣から出てはいけません」


「それは前にも聞いたけど…… 実際、ダニエルは出てもうたやん、結局あいつどないなるん? 魔法陣から出たら何があかんのか、具体的には聞いてなかったよな」


「それは色々なケースがあります、呼び出した死者は必ず死者の国に送り返さなければならないことは、わかりますか?」


「そらそうやろ、死んだやつがそのまま現世に残ってもうたらえらいことや」


「呼び出した死者が素直に帰らないことがあります、攻撃してくることも、術者を道連れにしようとすることもあります」


「魔法陣の中に居れば、それは防げるっちゅうことか」


「そうです」


「ほな、ダニエルがどうなるかは、」


「アメリーさん次第です、もし彼女がダニエルさんと一緒にいたいと願えば、ダニエルさんは助かりません」


「そういうことか……」




普通に考えれば、アメリーがダニエルと一緒にいたいと考えるのは自然なことだ。

一人きりで死んだら寂しいに決まっている。



ダニエルはどうしても必要な、失いたくない手駒だ。



ローゼは死神で、制約はありながらも死者を呼び出したり転生させたりできる、人知を超えた能力を持っている。

人の知り得ない知識もあり、死神の手帳という不思議な道具も持っている。


俺は転生者で、こことは違うはるかに科学技術の進んだ世界の知識を持っている。

ちょっとしたアイテムも持ち込んだ。



この時代のこの土地では、罪のないものが魔女として断罪され、処刑される。

俺とローゼは、その魔女狩りを止めようとしている。


魔女狩りを止めることは、既成概念や社会の仕組みに逆らうことになる。

社会の仕組みには逆らうというのは大変困難なことであり、知識や能力が優れていてもそれだけで超えられるハードルではない。


だから、この場所・この時代での仲間が必要なのだ ……しかも短期間に、絶対に裏切らない仲間をつくらなければならない。



俺は酒場でおっさんと仲良くなったし、ローゼは持ち前の愛らしさで宿屋の女主人と仲良くなっているようだが、連中は命をかけて行動を共にしてくれるわけではない。


魔女が無残に処刑されても、別段困っていない、いつか自分自身や身内が魔女として告発された時には真剣考えるかもしれないが、それまでは他人事でしかない。



だがダニエルは違う、現に愛妻を奪われ、魔女狩りの仕組みに疑問を抱き始めている。

魔女狩りが理不尽で何の正当性もないことが理解できれば必ず味方になる。


ダニエルがどれだけアメリーを愛しているか、あの痴態を見ればわかる。

客観的には大爆笑必至の面白おかしい表情だが、俺には全く笑えない。


それだけアメリーを愛しているのだと伝わるから。


ダニエルはアメリーを奪った魔女狩りが憎いだろう、ダニエルなら魔女狩り潰しに命をかけられる、教会側と刺し違えてもいい、そんな狂信的な戦士にだってなる可能性が高い。


……だからここで失うことはできない。




「ローゼ、ダニエルがどうなるかは、あのアメリー次第やな?」


「そうです」


「ほなダニエルが生き残れるように、俺がしたる」


「え?」


「魔法遣いの本領発揮や」


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