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死神美少女と童貞魔法遣いの俺  作者: ぢょほほん
12/75

祝! 童貞三十周年! バースデープレゼントは、美少女との出会い?!

私はお酒が大好きです。

仲のいい友達と飲みに行くのはとても楽しいことですし、飲みすぎた翌日はそれなりに反省したりもします。


ただし、本作の主人公は「それなりの反省」ではすまないほど飲んでしまったようで……



※プロローグの続きがすごく気になる、先に読みたいという感想をいただきましたので、割り込み投稿しています。ご注意ください。

(2016/12/03)


無実の少女に魔女の疑いがかけられ、童貞のまま三十歳を迎えて魔法遣いになった俺が、少女の無実を勝ち取るために命をかけるまでには、訳ありで波乱万丈な物語がある。


寒い日はお気に入りの芋焼酎でも片手に、暑い日は上面発酵の濃いビールを飲みながら。

暑くも寒くもない平和な日は無濾過の純米吟醸酒を口に含み。

職場や学校でつらいくて嫌な嫌なことがあった日は濃厚なダークラムで嫌な思い出とストレスを酒とともに喉の奥に流し込んで。

家族に嬉しいことや祝い事があった日はとっておきのウイスキーを透き通った大きな氷でのんびり溶かしつつ。


一日の最後に酒のつまみとして、俺の話を聞いてもらえれば、嬉しい。


----------------------------------------



「……んあああ? どこや、ここ?」



薄暗い、周りがよく見えない。


目が覚めたら見覚えのない場所にいた、ということは、まあ、たまにはある。

呑み過ぎて電車を乗り過ごしたときだ。


二十九年も人間を人間やっていれば、一度や二度あるというものだ。

………一年の間に。


特別なことではない、誰だって身に覚えがあるに違いない。

俺ほど頻繁ではないかもしれないが。


首をぐるりと回し、もう一度周りを見渡す。

マジでどこだここ? そもそも俺は、どこで飲んでたんだっけ。


目が覚めた場所がわからないほど飲んでしまった、イコール今日は一日中二日酔い確定だ。


そして頭だけではなく、首と肩と背中が痛い。

これは飲んだまま、居間の床で転がって寝てしまったからである。

なあに、いつものことだ問題ない。



………あれ? 居間?

俺、居間で寝ていたのではなかったか?



目をつぶり、昨夜のことをゆっくりと思い出す。

ええと、昨日は俺の三十歳の誕生日だった…… うん、そうだ。




高校と大学の、学生時代からのオタク仲間(男ばっかり)、会社のマニアックな同僚(全員男)。

コミケで知り合ったやつに、聖地巡礼先で仲良くなった奴ら(しつこいが、いうまでもなく全て男)。

オタク同士はすぐ仲良くなる、こいつらが俺の誕生日飲み会を開いてくれるというので、心斎橋の飲み屋に向かった。



……座敷に向かうとクラッカーが鳴り、



「彼女いない歴=年齢三十歳、おめでとう〜! 今日から魔法遣いだなっ!」



満面の笑みを浮かべた、脂ギッシュなキモメンたちが、揃いも揃って超さわやかな笑顔で俺をお出迎え。



「誰が童貞やねん!」



……俺だ。 紛うことなき童貞、それが俺だ。



「童貞三十周年記念のプレゼントもあるでぇ〜!」

高校からの、十年来の大親友がヲの字一同を代表して、俺に箱を手渡した。



「何の記念やねん!? 普通に誕生日プレゼントって言えや! ツッコミどころが多すぎや!」


「まーまー、ええから袋から箱出してみてみ」



………俺の嫁。


あのアニメの、あのサブヒロインの、あのシーンの、フィギュアだった。

丈の短いサマードレスから覗く太ももが神々しい。


大人気で即完売し、再生産の予定もない。

ネットでプレミアがつくほどの入手困難な逸品、だったはずだ。


やばい、めちゃくちゃ嬉しい、泣きそう。

いや、泣いたらあかん、エンディングまで泣くんじゃあない、 ……昔のゲームのキャッチコピーだったか、タイトルが思い出せないが。


俺のエンディングが何なのかはよくわからなかったが、とにかく、



「お前ら! 俺の(アニメとか漫画とかゲームとかに出てくるキャラの)オンナの好み、理解しすぎやで!」



受け取ったフィギュアをじっと見る。


箱に入った状態では、神々しい太もものさらに奥の、真っ白な下着の部分はよく見えない。

そのデリケートな部分が猛烈に気になったが、それは自宅に帰ってじっくり視姦………いや、観察すればいいことだ。



「よっしゃ! 今日はガッツリ飲むで〜!」




先ずはビール、最初の一杯はヱビスビールだった。

さすが日本のプレミアム、百年を超える歴史を誇るどっしりとした重厚な味わいは、俺の彼女いない歴三十年の重みにふさわしい。


ヱビスビールのテレビコマーシャルはハーフの女子アナだとか、職場のアイドルオタがにやにや言っているが、あいにく俺はオンナは二次元専門で、三次元の、ましてや女子アナとかは全く興味ない。


さらにその隣の、コミケで知り合いのサークルで売り子した時に隣のサークルにいて、新刊交換して仲良くなった某上場企業に勤める人生勝ち組オタが、ロシアではヱビスビールは売りだせなくて、それはロシア語でヱビスとは女性器のことだからだとうんちくをたれ、キモメンたちが大いに笑う。



俺もつられて笑いすぎ、のどが渇いたので、ドリンクメニューを手に取る。

よく見ると、埼玉の川越で作られているコエドビールがラインナップにある。

伽羅(キャラ)瑠璃(ルリ)の二種類。



「おい、今夜はお前の童貞三十周年記念やで? キャラ名、瑠璃(ルリ)ちゃん! これは飲まなあかんやろ!」



名前が萌えるからという、死ぬほど頭の悪い理由で勝手にオーダーされた。

ほどなく俺の目の前にグラスいっぱいに注がれた瑠璃(ルリ)ちゃんが現れた。


ゆっくり口に含む、泡が細かい、味も濃厚で繊細。

最高にうまい、なんだこれ、これはすごい美酒(びしょうじょ)だ。

コエドブルワリー万歳、川越に幸あれ。


じっくり瑠璃ちゃんを飲み干したあと、メニューをさらにめっくたら、日本酒も驚くほど充実したラインナップであった。



「おおっ、神亀あるやん!」



埼玉、蓮田の銘酒、神亀(しんかめ)

神亀酒造は純米酒しか作らないというこだわりの酒蔵。

埼玉に住んでいたときは、こればかり飲んでいた。


俺のためにあるラインナップと言っても過言ではない、早速一合オーダする。


無理にオタどもに酌などしてもらう必要はない ……そもそも女性に酌をしてもらうような店には入ったこともないが、気を使うのも使われるのも好きではないので、手酌で注いで、舌の上で銘酒を転がす。


……風が語りかける、うまい、うますぎる。

埼玉銘菓十万石饅頭ならぬ、酒造好適米五百万石の味だ。



「お前、ホンマ亀好っきやねんな〜!」



俺が神亀を心ゆくまで味わっていると、電車と幼女をこよなく愛する撮り鉄が、俺の股間を指差して笑った。


俺は電車はよくわからないが、カメラは好きだ。

カメラ本体はニコン、レンズはマニュアルフォーカスのカールツァイスというマニアックぶりがこの鉄道オタのナイスガイと俺との共通点だ。



「亀の頭の話ちゃうねん! ドアホ!」



だめだこいつら心底アホだ。

うますぎる酒と楽しすぎる時間に、身も心も酔って痺れた。




神亀のあとは、神奈川県海老名産の限定品「えびなの里」、奈良県産の秋津穂を使った無濾過無加水の微発泡性生酒「風の森」と、うますぎる日本酒が次々と卓上に躍り出た。


終盤、総理大臣がアメリカ大統領に手土産として持って行ったという逸話のある、入手困難な山口の「獺祭(だっさい)」をオーダーして大喜びしたあたりから記憶は曖昧になっていく。




宴会が終わった時のことは全く思いだせない。


そして、どうにか終電には乗ったはずだが、最寄駅で降りた記憶はなく、終点で目が覚めてタクシーに乗った覚えもない。


だが、なぜか自宅には無事たどり着き、マンションの鍵を開けて玄関に転がり込んだ。



それにしても、どんなに記憶が曖昧でも、キャバクラやフーゾクには絶対行かないあたりが実に俺らしい。

真面目で節度のある生活この上ない、自画自賛していい。


匍匐前進で居間にたどり着く、何というか、身体じゅうがしんどい。



「なんてこった、パンナコッタ」



無意識に吉本新喜劇のギャグが口につくあたり、まだ余裕あるやんかと自分で自分にツッコミを入れる。



今日は最高に楽しい日だ。

そして、今日という日はまだ終わっていない、終わらせない。

最後のお楽しみが残っている。


……そう、俺の嫁に、はじめましてのご挨拶だ。




箱からフィギュアを取り出し、じっくりと眺める。


素晴らしい造形美。

なめらかな曲線のお尻のライン、汚れのない真っ白なパンツ、最高すぎる。


オンナは二次元に限るが、フィギュアと3DのVRは例外だとしみじみ実感する。



ふと、このフィギュアをちゃぶ台の端に置き、真下から眺めたらどうなんだろうと思いつく。


ふらふらの頭でちゃぶ台の真下からフィギュアを見上げる。



天井から吊り下げたLEDライトが眩しい。

ライトが眼に入ってスカートの中がよくみえなくなるが、それはそれで(おもむき)がある。

なんだか実際に盗撮しているような、普段の日常生活は決して得られない背徳感と高揚感が胸いっぱいに広がる。



夢にまで見た、二次創作のエロ同人誌を買い漁った憧れの美少女キャラのおみ足を拝みながら、俺は明日のことを考えていた。



三十歳になった翌日は何をしようか。



明日は絶対二日酔いだから、朝いちばんに気合を入れて回復アイテムを胃の中に流し込もう。


二日酔いにはウコンがいいという話も聞く。

源実朝は茶で二日酔いを治したと現代に伝わる。


だが俺の経験上、二日酔いの朝は牛乳だ。

そして辛い汁物、こういうときのために激辛インスタントラーメンを最低三つは常備している用意周到さ。


さすが俺、できる男は違うぜ、本当にできる男は二日酔いなんかならないけどなと、再び一人ツッコミ。



辛い汁物の次は、少し時間をおいて動物性のタンパク質で決まりだ。

昼は胡椒の効いたステーキにしよう、経験上目が回るほどの二日酔いでもガツンと肉を食べると急激に良くなったりする。

肉が効くのか、香辛料が効くのか、どちらなのかまではよくわからない。


さしあたっては、牛乳買いに行く…… 明日は日曜日、会社は行かなくていい、安心して眠れる……





「やっと目が覚めましたか? 酔っ払いさん」


「うおおお!」



不意に首筋のあたりから声がして、死ぬほど驚いた。

全く気配がなかった、敵は忍者か暗殺者か。



「う…… お、おっっ☆」



目覚めた俺の目の前には、白くてすらりとした、長い脚。

ここまではいい、俺は嫁=美少女フィギュアのスカートの中を覗きながら眠ったのだから。


だが、よく見ると、色が違う。


ピカピカに磨かれた低いヒールの黒い靴、ふわふわで膝上までの丈の短い黒いスカート。

そして薄い桜色の、可憐に咲き誇る薔薇のような、ワインでいうとロゼ色の、



「パンツの色が(ちゃ)うやんけ?」


「きゃああっ!」



嬌声をあげ、スカートの裾を抑えて飛びのく少女。


起き上がって少女の全身を見る。

真っ黒な上着は、袖が長く、手の甲あたりまで。

頭の左右で結んだ髪が、しなやかな尻尾のようにふわりと揺れる。



「あれ? おっかしいな、パンツの色は白やったはずやけど」


「変態! おかしいのはあなたの頭です! なんて恥知らずな酔っ払いなのかしら?!」


「変態?! はあ? なんでやねん!? 酔っ払いはともかく、俺のどこが変態や! ちょっと居間で横になって……」



ちょっと居間で、泥酔して美少女フィギュアのスカートの中を覗きながら惰眠をむさぼっとっただけやないか、と反論しかけたものの、己の痴態を振り返ると史上稀に見る超弩級の変態なのではないかと思えてきた。


確かに客観的に考えたら、俺が悪い、全面的に。




「………いや、せやな、すまん、俺があかんかったわ。 そら嫌やな、いくらフィギュアでも、そんなパンツばっかり見られたら ……あれ?」



俺の背筋に電流が走る。


目の前の、フィギュアがそのまま飛び出してきたような可憐な少女。

だが、彼女はどう見ても俺の嫁ではない。



下着の色だけではない、髪型も、靴も、ゆったりとした黒づくめの服装も、俺の嫁のそれではない。


それ以前に、そもそもこの少女は二次元ではない。

いつか二次元の世界に入り込みたいと心から願っていた俺だが、さすがに二次元とリアルを間違えたりはしない。



少女の化粧気のない血色の良い頬が紅潮し、つぶらな瞳に涙が溜まる。



こいつ、誰だっけ?

必死で思い出そうとするが、全然思い出せない。


俺の部屋にいるということは、家族か親戚…… 違う、俺は一人暮らしだ。

同居しているのは、招いてもいないのにやってくる蚊とゴキブリと、炊事場の三角コーナーに勝手に湧くコバエだけだ。


コバエに関しては、見かけるたびに食品添加物として使えるアルコールの消毒液か、キッチン用の泡タイプの塩素洗浄液を片手に『汚物は消毒だ~!』と一人聖帝サウザーの部下ごっこをするのが俺のお気に入りの遊びでもある。



昨日一緒に飲んでたツレが、俺の部屋までついてきた、 ……わけがない。


飲み会のメンツはキモメン・ブサメン八割、残り二割かろうじて普通の顔の男。

飲み会に来たやつも、来なかったやつも含めて、友人知人は100%男のみ。

ラノベ風に言うなら、俺の飲み仲間にこんな可愛い娘がいるわけがない。



……マジで誰だこいつ?



「自分、俺と会ったこと、あるんかな?」


「いえあの、 ……お会いするのは初めてです」


「せやろ? むっちゃ驚いたで」


「驚くのも無理はありません、わたしは、」


「あ、ちょっとまて! 自分が何もんか、当ててみせるわ!」


「えっ?」



設定…… 状況はよくわからないが、これは夢だ。


生まれてこのかた30年間、ひとの羨むような美女美少女は言うに及ばず、これといって特徴のない普通の女子、お笑い系も、残念系のちょっと遠慮した方がよさそうな感じの女子にすら、一切縁がなかった。


女子とデートに行ったこともないし、手を繋いだこともないどころか、セーラー服のスカートの端っこの方をちょこっと触る程度の触れ合いもなかったのだ。

ここから先、あと何年生きるのかわからないが、棺桶に入って火葬場で焼かれるまで、一生ない気がする。



だから、これは夢、夢に違いない。

……どうせ夢なら。


俺は開き直って、目の前の美少女と楽しく会話をしようと決めた。



「ええっと、せやな…… 外国人っぽいから留学生かなんか?」


「え? 違います、けど……?」


「でも、見た目日本人離れしとるで? あ~、あれや、最近なんばにようけ来とる観光客か?」


「あのう、観光でもなくて……」



オロオロする様子を見ると、日本人離れした顔つきではあっても、「外国人」ではないのか?


留学生でも観光客でもないなら、ビジネス目的か?


だが見た目は中学生くらい ……良くて高校生か? どちらにしても未成年っぽいのでビジネスの線はなさそうだ。

観光でもビジネスでもないのなら、日本で生まれて育ったハーフ、の学生、とか……?


しまった、それなら「日本人じゃない」という言い方はマズかったと反省する。



オタク仲間にはアメリカ人も韓国人も中国人もいるが、みんないい奴ばっかりだ。

フランス人とはコミケで知り合ったし、タイ人と仲良くしているオタク仲間もいる……… 確か絵心のあるタイ人にノベルゲームの背景素材を発注して、その紹介料を搾取…… いや、相応の手数料を手ごろな価格で請け負っているのだったか。

ともかく。


マンガ、アニメ、ゲーム、ラノベ、フィギュア、同人誌、プラモ、クルマ、カメラ、オーディオ、PC、携帯電話機、鉄道、ミリタリー。

多少ジャンルは違っても、オタクは人類皆兄弟、きっと魂の底の底では理解し合える。


それはシャアが絶望し、アムロが信じたこと。

俺たちオタクこそが人類を次のステージに押し上げる、俺たちオタクこそがニュータイプ。


そう、だから、ルーツが外国人でも大歓迎、人種なんて関係ない、みんな楽しくやろうぜというのが俺のポリシーだ。

目の前の少女の国籍が何であれ、どんとこいだ。



もう一度よく見る、そうだ、彼女もオタクかもしれない。


ピカピカに磨かれた低いヒールの黒い靴、ふわふわで膝上までの丈の短い黒いスカート。

元ネタがなんなのかはすぐに思い出せなかったが、なにかのコスプレに違いない。


ならば、彼女は俺と魂の兄弟…… いや、兄妹、か?

なにしろ、彼女は、俺たちの兄妹ということだ。



……ここまで、彼女の正体について、現実的にありそうなことばかり考えてしまった。


しかしここは筋金、いや鉄筋入りのガチオタの俺の夢の中の世界。

現実的にありそうでないことも、ありうるんじゃあないか?


アニメかラノベの世界っぽい、心の底から『そうだったらいいな』と思える理由を自由に考えたほうがいいかも、と思いついた。



「わかったで、『覚醒した童貞魔法遣い』の俺が無意識に呼び出した『異世界の魔法少女』……やろ?」


「えっ? いえ、あのその、ど、どおてい(・ ・ ・ ・)ってなんですか?」



しまったああああ!

盛大に誤爆した、なんてこったパンナコッタ! いまどきダジャレやで! ナンテコッタパンナコッタアアアっっ!


思いついたことを口に出してから、しまったと思った。

そうだったらいいなという理由を妄想するのはいいが、幾ら何でも魔法少女はアホ丸出し過ぎる。

そして、俺が童貞であることをうっかり宣言してしまった。


そもそも、童貞のまま三十歳を迎えたら魔法遣いになれるって、誰が言い出したんだ?


絶対呆れられたし、キモいと思われた ……はずだ。



元気の出る梅干しを、食べたい。



「それと、わたしは魔法少女? ……魔法遣いではありません」


「留学生でもない、観光客でもない、魔法少女は論外、あと思いつくのは ……芸人?」


「違います! この格好のどこが芸人なんですか?!」


「確かにけったいな格好やな、北新地の飲み屋のお姐さん……ちゃうよな?」



上目遣いでじろりと睨まれた、全然怖くない。


まあでも、たしかにそっちの線はなさそうだ。

そういう店には全く立ち入らないから憶測ではあるが、こんな化粧っ気のない純朴そうなホステス、まずいないだろう。



「うーん、あかん、自分の正体、わからんわ。 降参や…… アホなことばっかり言ってもうて、すまん、自分が誰なんか教えてくれるか?」



面白可笑しなことを言いすぎてしまったので、彼女は怒っているかもしれないと心配した。

だが彼女は俺の予想に反して、悲しそうな顔をしたあと、実に申し訳なさそうに正体を明かした。




「私は死神です、亡くなったあなたの魂を、迎えに来ました」


このお話は実質的な第一話なので、長めの分量になっています。

次話以降は、短めの文章になります。



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