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死神美少女と童貞魔法遣いの俺  作者: ぢょほほん
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魔女裁判をぶっ飛ばせ! 美少女死神と美人魔女の間で揺れ動く童貞の俺!(プロローグ_10)

「俺は魔女ちゃうねん、魔法遣いや」



俺は魔力を込めたアゾットを水平に振り、異端審問官の首を刎はねた。



異端審問官の首は足元にごろりと転がり、身体は転がった首を追いかけるように倒れた。


終わってしまうと呆気(あっけ)ないものだ。


地面に転がる白目をむいた異端審問官の顔を見る。

生前と変わらず、やはり醜い。



魔力で強化されたアゾットは気持ち悪いほど手応えなく異端審問官の首と胴を切り離した。

こんな簡単に人を殺せるのか。


俺はとんでもない力を手に入れてしまった。

悪魔に兄弟(ブラザー)と言われるのも仕方がない。


これからは、悪魔の兄弟として生きていこう……

息を吸って吐く。

すぐに心が落ち着く。



ぐるりと見回す。

目に入るのは、異端審問官の屍体、血を流すローゼ、驚いた表情のミレイユ、腰を抜かして悲鳴を上げる異端審問官の手下たち。



さて、異端審問官の手下たちはどうしようか。

五人全員斬り捨てたほうがいいか、もう一人二人みせしめにするか、全員殺しはせず手脚を切り離して恐怖心を植え付けたほうが効果的なのか、それとも散々脅せばこれ以上は斬らなくても十分なのか……




俺が冷酷な考察をしていたのはほんの数秒だったが、その間にミレイユは血を流すローゼに駆け寄り、ハンカチを取り出して傷口を縛った。



「ローゼちゃん、すぐ病院に行きましょうね!」


「ミレイユさん…… ありがとう、でもわたしは、」



じゃらりと重い音。


ローゼは錆だらけの鎖を両手で持ち上げ、ミレイユに見せる。

鎖の先には両手両足を拘束された異端審問官。



「この人の魂を、連れて行かないと」


「えっ、魂? この人さっき死んだはずの……」


「こちらは、魂だけ(・ ・)なのですわ、身体はあそこにあるでしょう」



拘束具で身動きの取れない異端審問官の魂は、首と身体の斬り離された自分の屍体を凝視し、眼を()いて何事かを叫んだ。

もはや(わめ)いても叫んでも、何を言っているのかわからないほど取り乱している。


異端審問官の魂は、真っ赤な涙を流し、さらにまともな言葉にならない何かを、吠えるように叫んだ。



俺はローゼに近寄り、ミレイユが縛った手首を手に取る。

ハンカチは血まみれになり、いい匂い(・ ・ ・ ・)を放っている。



「ヴォルフさん、わたし、この人の魂を連れて行きますね」


「せやな、自分、死神やもんな」


「……本来は、ミレイユさんが魔女の疑いをかけられて、殺されるところでした。 でもヴォルフさんがんばった結果、運命は変わりミレイユさんは生き残りました」


「ほな、ミレイユの代わりに異端審問官の魂をあの世に連れて行くんやな」


「そうです」



俺とローゼの会話を聞いて、ミレイユは言葉を失う。



「どや? 傷はええんか?」


「はい、そこはお気になさらないでくださいませ」


「無理すんなや? けっこうな出血やったで?」


「あの、それよりも、その、わたしの血 ……って、どうでした?」


「どない? ああ、助かったで、ローゼの血のおかげや、ありがとな」



俺は血まみれのハンカチに鼻を近づけた。



「ローゼ、自分の血はええ匂いやな」


「え? ふぇっ?!」


「また ……(もろ)うても、ええか?」


「だめじゃない…… です、でも、どうしてもっていうときだけですよ?」



味をしめた俺は、薔薇のように真っ赤な顔のローゼに対して、次はなんとおねだりすればよいのだろうかと、誘い方をいろいろ考えた。


しかし、足元で気持ち悪いヤツが声にならぬ声でうるさく邪魔をする。



「なんやねん! (うるさ)いんじゃ自分(ワレ)!」



ヤツはぎゃあぎゃあと叫び続ける。



「どっ、どういうことですかっ! 聖職者たる、このワタクシが! こんなひどい目に遭うなどぉぉっ! ありえません、ありえませんぞぉおおおっ!!」


「どないもこないもあるか? 自分(ワレ)、いままでどれだけ無実の人間を苦しめてきたか忘れたんか? 地獄で償うんやな」


「き、貴様ら! やはり魔女! 魔女だったんだなぁあああっ!!」


「なんべん言わすねん! 俺は魔女ちゃうねん、魔法遣いや!」


「わたしも魔女ではありませんわ…… 死神です」


「魔法遣いと、死神ぃぃ?!」


「……では、ヴォルフさん、ミレイユさん、ごきげんよう」




ローゼは笑顔で手を振った。

そして鎖を引っ張り、(わめ)き続ける異端審問官の魂を引きずって闇の中に溶けるように消えた。




異端審問官の屍体、半殺しにしたヤツの手下、ぐちゃぐちゃになったミレイユの家の中。

このあとやるべきことは山ほどある。


だが、本当にやらなければならないことは一つ終わった。





数日後、俺とミレイユは白ワインを飲みながら語り合った。



「……ねえヴォルフさん、ローゼちゃんって、また帰ってくるんですよね?」


「せやな」


「いつ、帰ってくるんでしょう?」


「せやなあ……?」



グラスを傾けながら、ミレイユの問いについて考えた。


あの世に死人の魂を連れて行って、こっちにもう一度帰ってくるまで、どれくらい時間がかかるのか。

このことはローゼに聞いたことがなかった。


俺自身が一旦死んで生まれ変わったというのに、それにどれだけの時間がかかったのかは、全く把握していないことに、今更俺は気がついた。


プロローグに一区切りつきました。

2017年は、ローゼとヴォルフの出会いの続きを読めるようにします。

来年もよろしくお願いします。

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