プロローグ 君の人生、どうだった?
GMB企画
「……ふむ」
秋のある日。
朝夕の外出には、少し厚いコートが恋しくなるようなそういう季節だ。
夜闇にも映える青みがかった銀髪をベールに納めた黒い修道服。十字架の代わりに、三日月の両端を吊ったペンダントをした長身の女性。
情報屋としての仕事帰り。
住んでいる時乃市の海辺の公園。
そこの幸せの鐘と呼ばれるモニュメントの側の木の根元。
周りに芝生と生垣に遮られて、見通しは悪い。
其処に倒れていたのは、黒髪の痩せた子供。
病院服のような服の上にベージュのセータを着ている。年は十歳をそう大きく超えていない。
鼻と口に手をかざすと、生きてることを確認した。
彼を抱き上げながら、とある人へ電話する。
「ラディ、シリコン製の腕輪で「AL-294」とか表記する人体実験をこの近場で行うような馬鹿を調べろ。
多分、脱走者だ。奪還に動くなら潰す」
『あー、わかりましたわ、《リンデン》にも声掛けますわ。
……子ども拾いましたん?』
「そう。うふふふ、私の縄張り近くでそういうのするってねぇ?」
『命、要らんのやろな。
報告がてら、昼過ぎにそっち行くからなんか適当に食料と服買うてくわ。
どんぐらいの子なん?』
「十歳は大きく超えてない。大人サイズのMでとりあえず」
『ほいほい。……塵殺し?』
「うん、奪還に動くならこの子を逃がそうとした研究員以外は、末端まで塵殺しかな」
『了解ってな。
新町の方のマンション?』
「襲撃あっても困るし、昨日まで缶詰してたから、多少は食料あるし?
ネギと卵と冷凍ご飯あれば、雑炊ぐらいはできるからね」
「了解。じゃ、昼過ぎにな」
相手は、情報屋方面としては、唯一女性が敵わないと思う《L》。
そして、同じく友人の《リンデン》にも連絡が行くだろう。
子どもを抱いて、女性は近くのマンションへ向かう。
「さてね、どうするか」